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媚薬に溺れる
急展開
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「っ、……く、」
どうしたことだ。
何だか、体調がおかしい。
「具合が悪そうだ……、急がないと」
私の体調不良に気付いたようだ。
「失礼、」
パトリシオは、私の身体を向かい合わせにさせ、布で固定させた。
まるで、正面から抱き合うような格好である。
「な、」
下着をつけてないので、パトリシオの股間についている装甲のふくらみにぺったりとくっつく形になってしまう。
パトリシオの片手は、私の腰に回されている。
しっかりと抱きかかえられ。
「……急ぎます。しっかり掴まっていて、」
*****
馬の足が速歩から襲歩に変わり。揺れが酷くなる。
片手で私を抱え、手綱を繰り、中腰で馬を走らせるとは。並みの腕ではない。
馬の胴を挟む脚も揺るぎないのだが。
「ん、」
反応してしまった性器が、パトリシオの甲冑に擦れるのにすら、感じてしまう。
何故私は、揺れと共に密着している男の身体に感じているのか。
力強い腕にも。
身体が、若返ったせいか?
単純な刺激で感じるようになってしまったのだろうか?
しかし。
こんな状況で、粗相するわけにはいかない。
天井の染み……などないな。素数でも数えるべきか。それとも円周率か。
「もうじき、城に、着きます」
苦痛を押し殺したような声で言われ、顔を上げると。
真剣な表情で。
前を向いている、精悍な顔。
私の体調を心配し、急いでくれているというのに。淫らな反応をしていたなど。恥ずかしい限りだ。
だが、その羞恥のおかげで。少し、落ち着いたかもしれない。
城に着いたら、腹を壊していたのだと言って、お手洗いを借りねばならない。
それまでは、どうにか。我慢しなくては。
*****
馬は、襲歩のまま城門を潜り抜け。
お帰りなさいませ、という守衛らしき者の声が背後から聞こえた。
前庭を駆け抜け、扉の前で停止。
「リ、リッキー様……!?」
扉の前には、白いヒゲをもつ壮年の、侍従のような服装の男が待ち構えていた。
リッキー様?
城の人から、愛称で呼ばれているのか……。ずいぶんと気安い伯爵だ。
「ジェスロウ、馬を頼む。褒美に砂糖でもやってくれ」
「はっ、直ちに」
パトリシオは私を抱えたまま、馬から降りて。
開かれていた扉から城の中に飛び込むと、正面にあった大きな螺旋階段を駆け上がった。
居並ぶ兵士や使用人たちに、驚いたような顔をして見送られる。
「あ、あの、」
お手洗いを借りたい、と言おうとしたのだが。
「わかってる」
笑みを浮かべたように、口の端が上がった。
パトリシオの汗が、頬を伝っている。
……わかってる?
何を?
廊下の奥にある部屋の扉を開けると。
そこには、天蓋付きの大きなベッドがあった。
ベッドの上に降ろされ。
パトリシオは甲冑を外しながら、苦笑した顔で私を見た。
「貴方が服にしている、その葉。アポロディシャクといって、媚薬の原料になるんです」
「……え?」
媚薬など、ほぼ偽薬で。
現実には存在しないのでは……。と思ったが。
ここは異世界。ファンタジーな世界で。ある意味、何でもアリだともいえる。
*****
曰く。
葉の匂いを嗅いだくらいでは何ともないが。すり潰すと、媚薬成分が出るという。
……葉を柔らかくするために、くしゃくしゃにした。
それで、その媚薬成分とやらが出てしまったのか。
異世界の植物には注意が必要だった。
だが、夢だとばかり思っていたし。
そんな厄介なシロモノだとは知らなかったのだから仕方ないだろう。
「さすがに原液はきついので。一回出したくらいでは、抜けないかと」
そう言いながら。
何故、服を脱いでいるのだろうか?
パトリシオは心なしか、頬が紅潮しているようだ。
息も荒かった。汗もかいていて。暑いのか?
まさか。
……ハグされた。
それに、馬を相乗りもした。
私のすぐ傍にいたせいで。
彼も、媚薬を嗅いでしまったのか……!?
「なるべく、優しくするつもりですが。当分治まりそうにないので、覚悟しておいてください」
肌着だけの姿になったパトリシオが、ベッドに乗り上げてきた。
甲冑の下にあったのは、鍛え上げられた肉体だったというのが、肌着の上からでもわかった。
布を押し上げる、立派な筋肉。
私も、ここまでは立派な身体ではなかった。男として、少々悔しく思う。
いや待て。
優しくする、とは。
まさか、この私に、いかがわしい真似をしようとでも?
その上、当分収まりそうにないから覚悟しろ、だと?
正気か?
いや、媚薬とやらのせいで、正気ではないのか。
*****
「ちょ、ま、待ってくれ。私は、国王の番ではないのか? 手を出したらまずいのでは?」
わざわざ異世界から探し出し、召喚したほどだ。
臣下が先に手を出すのは、謀反同然な行いではないのか?
首をはねられてもおかしくない罪になるのでは?
「女ではないのですから。黙っていればわかりませんよ」
「はあ?」
男には、処女膜のようにわかりやすい印はない。
確かにそうかもしれないが。
何という悪い男だ。
これは、主君への裏切り行為に当たらないのか? 異世界の倫理観が狂っているのか?
それとも、忠誠心よりも欲望が凌駕し、理性を抑えられないほど、媚薬が効いている状態なのか?
どうしたことだ。
何だか、体調がおかしい。
「具合が悪そうだ……、急がないと」
私の体調不良に気付いたようだ。
「失礼、」
パトリシオは、私の身体を向かい合わせにさせ、布で固定させた。
まるで、正面から抱き合うような格好である。
「な、」
下着をつけてないので、パトリシオの股間についている装甲のふくらみにぺったりとくっつく形になってしまう。
パトリシオの片手は、私の腰に回されている。
しっかりと抱きかかえられ。
「……急ぎます。しっかり掴まっていて、」
*****
馬の足が速歩から襲歩に変わり。揺れが酷くなる。
片手で私を抱え、手綱を繰り、中腰で馬を走らせるとは。並みの腕ではない。
馬の胴を挟む脚も揺るぎないのだが。
「ん、」
反応してしまった性器が、パトリシオの甲冑に擦れるのにすら、感じてしまう。
何故私は、揺れと共に密着している男の身体に感じているのか。
力強い腕にも。
身体が、若返ったせいか?
単純な刺激で感じるようになってしまったのだろうか?
しかし。
こんな状況で、粗相するわけにはいかない。
天井の染み……などないな。素数でも数えるべきか。それとも円周率か。
「もうじき、城に、着きます」
苦痛を押し殺したような声で言われ、顔を上げると。
真剣な表情で。
前を向いている、精悍な顔。
私の体調を心配し、急いでくれているというのに。淫らな反応をしていたなど。恥ずかしい限りだ。
だが、その羞恥のおかげで。少し、落ち着いたかもしれない。
城に着いたら、腹を壊していたのだと言って、お手洗いを借りねばならない。
それまでは、どうにか。我慢しなくては。
*****
馬は、襲歩のまま城門を潜り抜け。
お帰りなさいませ、という守衛らしき者の声が背後から聞こえた。
前庭を駆け抜け、扉の前で停止。
「リ、リッキー様……!?」
扉の前には、白いヒゲをもつ壮年の、侍従のような服装の男が待ち構えていた。
リッキー様?
城の人から、愛称で呼ばれているのか……。ずいぶんと気安い伯爵だ。
「ジェスロウ、馬を頼む。褒美に砂糖でもやってくれ」
「はっ、直ちに」
パトリシオは私を抱えたまま、馬から降りて。
開かれていた扉から城の中に飛び込むと、正面にあった大きな螺旋階段を駆け上がった。
居並ぶ兵士や使用人たちに、驚いたような顔をして見送られる。
「あ、あの、」
お手洗いを借りたい、と言おうとしたのだが。
「わかってる」
笑みを浮かべたように、口の端が上がった。
パトリシオの汗が、頬を伝っている。
……わかってる?
何を?
廊下の奥にある部屋の扉を開けると。
そこには、天蓋付きの大きなベッドがあった。
ベッドの上に降ろされ。
パトリシオは甲冑を外しながら、苦笑した顔で私を見た。
「貴方が服にしている、その葉。アポロディシャクといって、媚薬の原料になるんです」
「……え?」
媚薬など、ほぼ偽薬で。
現実には存在しないのでは……。と思ったが。
ここは異世界。ファンタジーな世界で。ある意味、何でもアリだともいえる。
*****
曰く。
葉の匂いを嗅いだくらいでは何ともないが。すり潰すと、媚薬成分が出るという。
……葉を柔らかくするために、くしゃくしゃにした。
それで、その媚薬成分とやらが出てしまったのか。
異世界の植物には注意が必要だった。
だが、夢だとばかり思っていたし。
そんな厄介なシロモノだとは知らなかったのだから仕方ないだろう。
「さすがに原液はきついので。一回出したくらいでは、抜けないかと」
そう言いながら。
何故、服を脱いでいるのだろうか?
パトリシオは心なしか、頬が紅潮しているようだ。
息も荒かった。汗もかいていて。暑いのか?
まさか。
……ハグされた。
それに、馬を相乗りもした。
私のすぐ傍にいたせいで。
彼も、媚薬を嗅いでしまったのか……!?
「なるべく、優しくするつもりですが。当分治まりそうにないので、覚悟しておいてください」
肌着だけの姿になったパトリシオが、ベッドに乗り上げてきた。
甲冑の下にあったのは、鍛え上げられた肉体だったというのが、肌着の上からでもわかった。
布を押し上げる、立派な筋肉。
私も、ここまでは立派な身体ではなかった。男として、少々悔しく思う。
いや待て。
優しくする、とは。
まさか、この私に、いかがわしい真似をしようとでも?
その上、当分収まりそうにないから覚悟しろ、だと?
正気か?
いや、媚薬とやらのせいで、正気ではないのか。
*****
「ちょ、ま、待ってくれ。私は、国王の番ではないのか? 手を出したらまずいのでは?」
わざわざ異世界から探し出し、召喚したほどだ。
臣下が先に手を出すのは、謀反同然な行いではないのか?
首をはねられてもおかしくない罪になるのでは?
「女ではないのですから。黙っていればわかりませんよ」
「はあ?」
男には、処女膜のようにわかりやすい印はない。
確かにそうかもしれないが。
何という悪い男だ。
これは、主君への裏切り行為に当たらないのか? 異世界の倫理観が狂っているのか?
それとも、忠誠心よりも欲望が凌駕し、理性を抑えられないほど、媚薬が効いている状態なのか?
応援ありがとうございます!
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