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東の国の王
休戦協定の提案
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……どうしたらいいんだろう。
怒った大人なんて、親父か母ちゃんくらいしか知らない。
それでも、ここまで怒ってるのは見たことないし。だいたい、素直に謝れば許してくれた。
兄ちゃんも姉ちゃんも俺には優しかった。
中条家は末っ子には甘いのだ。俺だけ平凡顔なのを哀れんでのことかもだけど。
学校は私立だったからか、先生もおっとりしてたし。怒鳴られたこともない。
そもそもぼっち属性だ。
クラスメイトからは距離を置かれてたし、まともに友人と付き合ったこともない。
だから喧嘩のやりかたも、仲直りのしかたすら知らない。
……俺って、とんでもなく箱入り息子だったんだな……。
今になって、やっと気付いた。
俺みたいな甘ちゃんが、この先やってけるのかなあ?
こんな、戦争とかある世界で。
不安だ。
†††
「……そんな顔をしないで、黒き小さな神の子」
「うわっ、」
アレクにぎゅっと抱き締められた。
そんな顔、って。
どんな顔してたんだよ、俺。
「すみません。あなたに不敬な真似をしているのを見て、嫉妬のあまり精神が真っ白に染まり、我を忘れるところでした。怯えさせてしまいましたか……?」
心配そうに俺を見つめる、キラキラ輝く美貌が至近距離にあった。
……っておい。アンタはいいのかよ!?
手を握るどころか、めっちゃ抱擁されてるんですけど! それは不敬じゃないのか?
「神の次の次に偉いのは王なので、神使に触れても許されるはず」
俺の非難の視線を真っ直ぐ受け止めて。
アレクはきっぱりと言い切った。
さすが王様。堂々としてる。
しなくてもいい場面だと思うけど。
一番偉いのが神様で。その次に偉いのが神使らしい。あと僅差で神馬。で、越えられない壁を挟んで王様、以下略ってヒエラルキーになるらしい。
へえ、王より偉いんだ? 黒ポメが。
そりゃ兵士達も「ははー」って崇めちゃうよな。
「王以外、御身に触れることまかりならぬ、ということです。……ナーサル」
ひれ伏しているナーサルに。
ちゃっかり自分を除外して、アレクは言った。
「私のレイトが悲しむ顔は見たくない。故に、今回だけは特別に恩赦を与えよう。以後、己の立場を考えた行いをせよ。慈悲深き神使に感謝するがよい」
……いや、アンタのものでもないからな!?
いつの間にか、俺のことを名前で呼んでるし。
っていうか、抱き締めたままそういうこと言うのやめてほんとマジで。
「ああ、小さき神使様の黒き御心に、心より感謝を捧げます……」
ナーサルは、地に伏せるように礼をした。
だから、褒めてるように聞こえないんだってば!
†††
アレクにも、他の国と休戦して物々交換をしてみたらどうか、という話をしたら。
めちゃくちゃ称賛された。……アレクなりに、なんだろうけど。
この国では、「黒い」とか「小さい」は、最上級の褒め言葉に当たるらしい。小さいだけでも、愛らしい生き物に見えるようだ。
そういやこの国の人たち、みんな俺よりも背が高くて大きかった。
初めて小っちゃいことで得したよ! やったね。少しも得した気分にならないけどな!
でもってた、だでさえ小さい上に”双黒”である俺は、この世界では誰からの好感度もMAX間違いなしの、世界一愛される生き物らしい。逆ハーも夢じゃない。ヤッター、異世界バンザーイ。
……正直泣きたい。
そんなの全く全然一ミリも嬉しくないんだけど!!
「私の肌も、もう少し黒ければ……貴方と並んでも、遜色がなかっただろうに……」
世にも美しい顔に憂いを浮かべているアレクが、ちらちらと俺の顔を見ながら、拗ねている。
……黒いのが褒め言葉、ってことは。
俺に言って欲しい言葉が、うっすら理解できてきたけど。
正直あんまり言いたくない。
だって。言ったら喜んで、絶対ぎゅってされるのわかってるし。
だから、そんな切なそうな目で見るなってば。
……仕方ないな。
「アレクは充分、黒いと思う、よ……? ……腹とか」
あ、うっかり本音が。
「……!?」
アレクがバッ、と顔を上げて俺のことを見た、と思ったら。目の前が真っ黒に。
苦しい。
そんな嬉しそうに、涙目で飛びついてこないで欲しい。
おいおい、”腹が黒い”ってのは、こっちじゃ褒め言葉だったの!?
†††
抱き締められて、ついドキドキしてしまうのが悔しい。
少々、いやかなり残念なイケメンなのに。
細身に見えるのに、胸板とかしっかりしてて。いい身体してるっぽいのも何か悔しい。
……くっそ、いい匂いさせるなっての。
相手は男なのに。ぎゅっと抱き締められても嫌じゃないってのがもうヤバイ。
俺の常識がピンチです、お母様。
「嬉しい。それはもはや、求婚の言葉と考えても良いのでは……?」
耳元で囁かれた。
何故だかハアハア興奮してる。
ちょっとヘンタイっぽくても、こんなイケメンならうっかり許してしまいそう。イケメン無罪。美形こわい。異世界ヤバい。
「それはない! 求婚の言葉じゃないです!」
うっかり流されてしまわないように、しっかり気をもたなくては。
……いや、そんながっかりした顔して見せてもダメだから!
怒った大人なんて、親父か母ちゃんくらいしか知らない。
それでも、ここまで怒ってるのは見たことないし。だいたい、素直に謝れば許してくれた。
兄ちゃんも姉ちゃんも俺には優しかった。
中条家は末っ子には甘いのだ。俺だけ平凡顔なのを哀れんでのことかもだけど。
学校は私立だったからか、先生もおっとりしてたし。怒鳴られたこともない。
そもそもぼっち属性だ。
クラスメイトからは距離を置かれてたし、まともに友人と付き合ったこともない。
だから喧嘩のやりかたも、仲直りのしかたすら知らない。
……俺って、とんでもなく箱入り息子だったんだな……。
今になって、やっと気付いた。
俺みたいな甘ちゃんが、この先やってけるのかなあ?
こんな、戦争とかある世界で。
不安だ。
†††
「……そんな顔をしないで、黒き小さな神の子」
「うわっ、」
アレクにぎゅっと抱き締められた。
そんな顔、って。
どんな顔してたんだよ、俺。
「すみません。あなたに不敬な真似をしているのを見て、嫉妬のあまり精神が真っ白に染まり、我を忘れるところでした。怯えさせてしまいましたか……?」
心配そうに俺を見つめる、キラキラ輝く美貌が至近距離にあった。
……っておい。アンタはいいのかよ!?
手を握るどころか、めっちゃ抱擁されてるんですけど! それは不敬じゃないのか?
「神の次の次に偉いのは王なので、神使に触れても許されるはず」
俺の非難の視線を真っ直ぐ受け止めて。
アレクはきっぱりと言い切った。
さすが王様。堂々としてる。
しなくてもいい場面だと思うけど。
一番偉いのが神様で。その次に偉いのが神使らしい。あと僅差で神馬。で、越えられない壁を挟んで王様、以下略ってヒエラルキーになるらしい。
へえ、王より偉いんだ? 黒ポメが。
そりゃ兵士達も「ははー」って崇めちゃうよな。
「王以外、御身に触れることまかりならぬ、ということです。……ナーサル」
ひれ伏しているナーサルに。
ちゃっかり自分を除外して、アレクは言った。
「私のレイトが悲しむ顔は見たくない。故に、今回だけは特別に恩赦を与えよう。以後、己の立場を考えた行いをせよ。慈悲深き神使に感謝するがよい」
……いや、アンタのものでもないからな!?
いつの間にか、俺のことを名前で呼んでるし。
っていうか、抱き締めたままそういうこと言うのやめてほんとマジで。
「ああ、小さき神使様の黒き御心に、心より感謝を捧げます……」
ナーサルは、地に伏せるように礼をした。
だから、褒めてるように聞こえないんだってば!
†††
アレクにも、他の国と休戦して物々交換をしてみたらどうか、という話をしたら。
めちゃくちゃ称賛された。……アレクなりに、なんだろうけど。
この国では、「黒い」とか「小さい」は、最上級の褒め言葉に当たるらしい。小さいだけでも、愛らしい生き物に見えるようだ。
そういやこの国の人たち、みんな俺よりも背が高くて大きかった。
初めて小っちゃいことで得したよ! やったね。少しも得した気分にならないけどな!
でもってた、だでさえ小さい上に”双黒”である俺は、この世界では誰からの好感度もMAX間違いなしの、世界一愛される生き物らしい。逆ハーも夢じゃない。ヤッター、異世界バンザーイ。
……正直泣きたい。
そんなの全く全然一ミリも嬉しくないんだけど!!
「私の肌も、もう少し黒ければ……貴方と並んでも、遜色がなかっただろうに……」
世にも美しい顔に憂いを浮かべているアレクが、ちらちらと俺の顔を見ながら、拗ねている。
……黒いのが褒め言葉、ってことは。
俺に言って欲しい言葉が、うっすら理解できてきたけど。
正直あんまり言いたくない。
だって。言ったら喜んで、絶対ぎゅってされるのわかってるし。
だから、そんな切なそうな目で見るなってば。
……仕方ないな。
「アレクは充分、黒いと思う、よ……? ……腹とか」
あ、うっかり本音が。
「……!?」
アレクがバッ、と顔を上げて俺のことを見た、と思ったら。目の前が真っ黒に。
苦しい。
そんな嬉しそうに、涙目で飛びついてこないで欲しい。
おいおい、”腹が黒い”ってのは、こっちじゃ褒め言葉だったの!?
†††
抱き締められて、ついドキドキしてしまうのが悔しい。
少々、いやかなり残念なイケメンなのに。
細身に見えるのに、胸板とかしっかりしてて。いい身体してるっぽいのも何か悔しい。
……くっそ、いい匂いさせるなっての。
相手は男なのに。ぎゅっと抱き締められても嫌じゃないってのがもうヤバイ。
俺の常識がピンチです、お母様。
「嬉しい。それはもはや、求婚の言葉と考えても良いのでは……?」
耳元で囁かれた。
何故だかハアハア興奮してる。
ちょっとヘンタイっぽくても、こんなイケメンならうっかり許してしまいそう。イケメン無罪。美形こわい。異世界ヤバい。
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うっかり流されてしまわないように、しっかり気をもたなくては。
……いや、そんながっかりした顔して見せてもダメだから!
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