兄弟愛~俺の弟がスパダリすぎる

篠崎笙

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亜樹Ⅱ

夜空のような

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 20年も前の約束だというのに、今でも鮮明に覚えている。

 あれは、奈津がイタリアに連れて行かれる日の前日だった。
 奈津はいつものように、僕のベッドにもぐりこんで。遠いところに行くなんて嫌だ、と泣いていた。
 子供は体温が高い。
 泣いているせいか、更に熱く感じた。


「あきちゃん、いますぐ、ケッコンして。そうしたら、ずっといっしょにいられるんでしょ?」

 どこで聞いたのか、「シがふたりをわかつまで、いっしょにいたい」なんて言葉まで。さすがに”死”の意味は知らなかったようだけど。

 9歳も年の離れた弟。仕事で忙しい両親の代わりに面倒を見ていた。赤ん坊の頃は、髪の色も薄かったので、母の浮気を疑われ、鑑定騒ぎになった間も。
 親よりも、一緒にいた。そのせいか、奈津は僕になついた。僕だけに。

 僕とずっと一緒にいたいと思ってくれて、離れたくないから結婚しよう、という。
 そんな奈津が、いじらしくて可愛いと思ったけど。

 ”普通”と違う異質な考えや行動は、後ろ指をさされてしまう。奈津のためにも、おかしなことを口にするのはやめさせなければ、とも思っていた。

 今ではパートナーシップ制度が認められ、ドラマでもおおっぴらに男同士のラブを取り上げているけど。当時はまだ日本では法的にも男同士での結婚は無理だったし、同性愛は秘されるものだった。
 たとえ法改正して同性婚が認められた後でも、実の兄弟間での結婚なんて認められないだろう。

 男同士で、ましてや血の繋がった兄弟でなんて、結婚はできないんだよ。世の中の決まりで、そうなってるんだと何度言っても。
 奈津は絶対ケッコンするんだ、と言って。きかなかった。

 涙で潤む榛色はしばみいろの瞳に、とうとう根負けした。


「20年経っても。相変わらず僕のことが好きだったら、いいよ」
 20年後、結婚しよう、と約束して、指きりげんまんしたのだった。

 奈津は僕に針を千本飲ませるのではなく、あのお星さまに誓って、と言って天井を見上げた。


 離れ離れになって。外国で、色々な経験をしたら。20年も必要ない、どうせ1年もしないうちに、こんな僕の事なんて、すぐに忘れてしまうだろうと思っていた。
 実際、奈津はイタリアに行った後、手紙もメールの返事もくれなかったし。母とスカイプで会話してた時に声を掛けても逃げちゃったって言うし。
 嫌われたか、成長して、実の兄にプロポーズした思い出が黒歴史になってしまったのかと思っていた。下手したら、イタリアに永住して、このまま一生会えないかもしれないとも。

 だけど。そんな、子供の他愛もない約束を。
 20年もの間。

 奈津は、今まで、ずっと、本気にして。覚えていて。

 ちょうど20年経ったこの日。この時。約束のときが来たから。
 それで、日本に帰ってきたのか……?


 僕と、”結婚”するために……?


 ◆◇◆


 奈津は、ベッドに横たわる僕を見下ろして。
 舌なめずりをしていた。

 それは、まるで獲物を前にした肉食獣のように見えた。

 しなやかな肉食獣を思わせる、無駄の無い筋肉に覆われた逞しい身体。
 獲物を捕らえるのに適した、長く、力強い腕。


 僕に抵抗などできないことは、もうわかっている。
 さっき、思い知らされた。

 ナカでナマ出ししたいからと言われて。
 とんでもない場所を洗われた。

 必死で逃げようとしたのに。
 動けなかった。


 考え直せ、と言っても。
 聞いてはくれないだろう。

 だって、奈津は20年もの間、気持ちを変えなかったのだから。


 イタリアでは、とてもモテていたと聞いた。
 この容姿だ。イタリアだけじゃなく、日本でだって確実にモテるだろう。それこそ老若男女問わず。

 それなのに。
 こんな、ぽっちゃりで冴えない、35歳のオッサンを。どうして抱こうとなんて思えるのだろうか。理解できない。


「亜樹……」
 奈津は、愛おしそうに僕の名を呼ぶ。


 そういえば。
 今は呼び捨てになっているけど。

 いつからだろう?

 奈津が、僕を『おにいちゃん』と呼ばなくなったのは。

 気が付いたら、呼び方が『あきちゃん』になっていた。
 今は、『亜樹』で。


 僕の記憶の中の奈津は。
 いつでも僕だけを、ずっと見ていた。


 ◆◇◆


 ラブローションとかかれたボトルから、とろっとした液体を出して。

 手であたためてから、僕の胸に、マッサージをするように塗りつけた。
 体温であたためられたそれは、ぬるついていて、変な感触だった。子供の頃に遊んだスライムみたいな感じ。


 ベッドには、あらかじめ大きめのタオルが敷かれていた。
 汚れても、洗えるようにだろう。

 準備万端だ。
 服を脱いで、無防備な姿になった状態の僕を襲おうと、計画していたのだ。


「っ、」
 胸の先は、風呂でのいたずらで少し腫れていた。

 そこをまた、ぐりぐりと弄られる。
 ローションでぬるぬるするのが何だか変な感じだ。

 女の子じゃあるまいし、そんなところを弄られても気持ち良くなるわけがないのに。


 ぬるついた指は、そのまま下に降りて行き、僕の性器を弄り、擦った。

 認めたくはないが。
 自分でするよりもずっと気持ちよかった。

 奈津はローションを足して。睾丸も愛撫された。
 むき出しの内臓ともいわれる弱点であるそこを、やわやわと触れられるのが気持ちいいということを、初めて知った。


 そして、いやらしく動く指は、お尻に狙いを定めた。
 さきほど丹念に洗われてしまったせいか、ぬるついているせいか、簡単に侵入を許してしまう。

 最初は、人差し指。
 慣らす指を増やしていって。

 自分のものが入るほど、ここを慣らしたら。
 入れるつもりなのだ。

 風呂場で目にした、奈津のあの、凶悪に大きいものを。


 あんなの、入る訳ないのに。
 きっと裂けてしまう。


 ◆◇◆


 ぐちゅぐちゅと、聞くに堪えない水音をさせて。
 を拡げられていく。

 奈津の性器を受け入れられるように。

 男同士で。
 いや、実の兄弟なのに。

 どうしてこんなことをするのか。
 何度訊いても、答えは返ってこない。

 聞こえるのは、興奮しきった男の呼吸音と、ナカを弄る水音だけ。


 ずるり、と三本の指が引き抜かれて。
 奈津は僕の両脚を抱え上げ、そそり立ったものをあてがおうとした。

 実の弟に抱かれるのを。
 明るい照明の下、見ているのはつらい。


「……電気、消して……」

 断られるかと思ったが。
 奈津は素直に頷いて、壁のスイッチに手を伸ばした。


 天井に、ぼんやりと星が浮かぶ。蓄光シールの星空。
 色褪せていなかったのだろうか?

 奈津の想いが変わらなかったように。
 20年前の、あの夜のように。
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