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美しき伯爵とヤンデレ伯爵

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「抱く度に、愛おしさが増して。際限なく、あんたのことが欲しくなる。……どうしたらいい?」

いや、そんな深刻そうな顔をして、どうしたらいい? とか訊かれましても。
俺も返答に困る。どうもこうもない。

……性欲減退するお薬でも処方してもらおうか?


ロロが言うには。
ここ数年で急激に身体が大人になったせいか、俺に抱いていた淡い初恋だった気持ちが、触れたい、抱きたいという肉欲になってきて。

その気持ちは年々エスカレートしていって。何もかも、すべてが欲しくなったという。
欲望は膨れ上がり。ロロがプロポーズに来た時にはもう我慢も限界、いつ襲い掛かってもおかしくないような精神状態だったらしい。


半ば脅すような形で結婚の承諾を得て。
冷静に考える余裕を与えない内に、自分の城に連れ込んで、強引に抱いたけど。

一度抱いて、その喜びと快楽を知ってしまったら。もう手放せなくなってしまった、と言う。


*****


「反応は初々しいのに、色っぽくて可愛くて。もっと反応が見たくて、滅茶苦茶にしたくて。脳が沸騰するかと思った」

心の内を吐き出しながら、ガツガツ腰を突き上げられる。
チャージ完了って感じにずっしりとした睾丸が、お尻に当たってる。つっても睾丸に精子が溜まってるわけじゃないが。


「あ、や、ああっ、揺するな、やぁ、」

「普段は、氷で作った人形みたいなのに。ナカ、とろとろで熱いし。俺に抱かれると、気持ち良さそうな顔するし、可愛い声で鳴くし、……っ」
一際強く、叩きつけられて。

腹の奥に感じる、熱い飛沫。


放出した余韻か、荒い息を吐いている。

「あんたは、俺じゃなくてもなるのか? 誰がこうしても、こんな反応をするのか? そう思ったら、あんたを見る男を、片っ端からぶち殺したくなる。あんたのこと、滅茶苦茶にしたくなる。あんたが俺のすべてで。大切にしたいのに」
そう言って。

お互いの胸が、ぴったりと合わされた。
熱い肌から感じる、早鐘のような鼓動。それにつられてか、俺の鼓動も早まる。

「誰の目にも触れさせたくない。いっそ手足に鎖をつけて、寝台に繋いで、塔に閉じ込めて俺だけのものにして。あんたが気を失うまで犯して。一日中、この腕に抱いていたい」
両手でそっと頬を包み込まれる。

とんでもないヤンデレ発言だが。
ロロの表情は、溺れている人が藁にもすがるような。必死なものだった。

「初めは、身体だけでもいいから俺のものにしようと思った。したと思った。それだけでも嬉しかった。……だが。欲深くも俺は。あんたの心も身体も、全て、欲しくてたまらない……!」
今にも泣きそうに顔を歪めている。


愛している、と何度も言われた。
それは、やっぱり不安からで。

ロロは、俺にも同じ言葉を返して欲しかったんだ。

俺が交換条件で仕方なく、結婚を受け入れただけだと思っていたから。
自分じゃなくても受け入れるのかと悩んでた。


毎晩、執拗に求められるのも。
身体だけでも繋ぎ止めていないと不安だったからか?

俺のものだって。何度も宣言するように言ってたのは。そうやって、自分に言い聞かせていたのかもしれない。


*****


「……馬鹿なやつだ」
ロロの額を、容赦なくデコピンしてやる。


「痛っ、……?」

額を押さえて。
え? 今のはナニ? みたいな顔をした。こっちには、デコピンなんてないからな。


そういう表情をしてると、年齢相応に見える。

まだ、17歳だもんな。
前世だったら、俺のほうが未成年に対する淫行で犯罪者になっちゃう。

でもこっちじゃ16で成人だから、21歳にあたるのか? まだ学生か、社会に出たばかりのひよっこだと思えば。
年齢でこそもう成人という扱いでも、大人になりきれてない頃なのもわかる。


まあ前世の俺だったら、これほどまで惚れられたりなんてしないだろうけど。
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