砂漠の鳥籠

篠崎笙

文字の大きさ
7 / 25
イズミⅡ

終わらない悪夢

しおりを挟む
「……もうそろそろ、いいかな?」

 ぬぷん、と指が引き抜かれて。
 代わりに、熱いものがそこにぴたりと当てられた。

 アッシュの、男のあかしだ。

「や、だめ、」
 両手で、お尻を左右に広げるように、ぐいっ、と開かれて。

 無理矢理、熱いものをねじ込まれる。


「いや、やだあっ!! ひ、やあぁっ、」
 ぐっ、ぐっ、と。
 腰を打ち付けるようにされて。

「いや、おねがい、助けて、……やだぁ、痛い、い……っ、いっ、」

 に力を入れて、拒もうとしても。
 固くて熱いものが、メリメリと、無理矢理抉じ開けるように入ってくる。

「……わたしの、全てを、受け入れなさい。力を抜いて、」
  アッシュは命じるように言った。

 ……こわい。

 そんなことをされたら、裂けてしまう。

 だって。

 アッシュの、あんなに大きかった。


 †††


「……っ、」
 一番太い部分が入った、と感じたかと思ったら。


「ひ、……っ、やあっ、あああっ!!!」
 激痛に、意識が飛びそうになった。


 アッシュのを、一気に突き入れられたのだ。

 目の前を、火花が散った。
 身体が、そこから引き裂かれるような痛み。

 苦しい。
 呼吸を忘れるくらいに。

 お腹の中が、熱くて大きいのでいっぱいにされてる。


 苦しくて、痛くて、熱くて。
 気が遠くなりそうだ。

 どうして、こんなことをするの?
 痛いのに。

 これが、アッシュのものになるってこと? 意味がわからない。

 男女の睦み合いなら、習った。
 これは、それに似た行為であると推測できる。

 でも、わたしは男で。
 男には、妊娠できるような臓器なんて無いのに。お尻の中にアッシュの精液を出されたら、どうしてアッシュのものになるのか。
 この行為に、何の意味があるのか。

 わからない。
 わからないよ、アッシュ。


「……っ、はぁ、……入ったよ、」
 満足そうな声が聞こえる。

「イズミ。これでもう、きみは、わたしのものになったのだ……」


 宣言するかのように、アッシュは告げた。

 それは。
 わたしに、そう言い聞かせているのだろうか?

 それとも、自分に?


 †††


 悪い夢を見ているようだった。
 でも、この夢はいつまでも覚めなかった。

「もっと締め付けて。ここで、わたしのかたちを覚えなさい。……わたしのペニスを受け入れながらでしか、達けない身体にしてあげようね」
 囁きながら、容赦なく腰を突き上げられる。


 声は、いつもみたいに優しいのに。
 どうしてこんな、痛いことをするんだろう。

 わたしが嫌いになったのだろうか?


 後ろから抱き締められて。
 アッシュの大きいのを根元まで挿入されたまま、膝に乗せられている状態で。内臓を圧迫されて苦しいし、気が遠くなるほど痛い。

 胸も、痛い。
 しつこく弄られたせいで、乳首が赤く腫れてしまった。

「ふふ、イズミのナカ、健気にわたしを、呑み込んでいるよ。……ああ、赤く色づいて、食べて欲しそうだね? ……ここ、こうすると、気持ち良い?」
 乳首をくにくにと、こねるように弄られて。

 そこを摘まれる度に、きゅうきゅうとアッシュの男のあかしを締め付けているようだった。それが彼には、たまらなく気持ち良いらしい。
 わたしは痛いだけなのに。気持ち良くなんてないのに。

 わたしの男のあかしは力を失い、しおれてしまっている。それなのに、何故かぽたぽたと精液を漏らしている。
 わたしのここは、壊れてしまったのだろうか?

「ご覧、悦びの涙を流しているよ」

 彼はをすくい取っては、舐めてみせた。
 うっとりとした顔で。


「あぐっ、ぅあ、あ、」
 逃げようと、腰を上げるために足に力を込めるたびに、お腹の中の、アッシュの男のあかしを感じてしまって。

 力が抜けて。
 もっと奥まで、ずぶずぶと受け入れてしまう。

 中から内臓を圧迫されて、苦しい。

 アッシュのもので、串刺しにされている気分だ。
 このまま突き刺されたら、死んでしまう。


 誰か。
 たすけて。

 お願いだから。
 悪い夢だった、こわかったねって言って。


 †††


「ひっ、や、やぁ、も、もう、抜いてぇ、これ、やだぁ、」
 わたしが泣いても、かまわずに揺さぶられて。

「まだだよ。わたしが、どれだけ、この日を、待って、いたことか。……っ、全部、きみの中に、吐き出すまで、終わらない、からね、……くっ、」
 残酷に告げながら、腰を突き上げてくる。

 ひときわ強い突き上げと共に、中に精液を吐き出されたらしい。
 その衝撃で、わたしも達してしまい、余韻にひたる間もなく引き抜かれる。


 やっと終わったのかと思ったら。

 今度は仰向けで。
 足を大きく開かされた状態で、正面から貫かれた。

 アッシュのものが突き刺さっているのが、よく見えてしまう。
 大きくて赤黒いものが。めり込むように、入ってくる。

「ああ、襞が無くなるくらい、頬張ってくれてるね」
 アッシュの指が、愛おしそうにわたしのお尻のふちを撫でている。

 傷は無いようだ。痛かったし、血だらけになってると思ったのに。切れてないのが不思議なくらいだ。ぬるぬるした液体のせいだろうか?


「……どうされるのが気持ちいい? 奥、突かれるの? 挿れた状態で揺すられるの? 引き抜くとき?」

 試すように、そうされて。
 反応を見られて。

「ああ、引き抜かれて、えらが縁に引っ掛かるのが好きなんだね?」
 何度もを繰り返される。


 好きじゃない。
 こわくて、ぞくぞくするから、声を上げたのに。

 いくら泣いても、お願いしても、やめてくれない。

 泣き叫んでも。
 誰も助けに来てはくれない。


「ひぃっ、いや、あ、あっ、ああっ、……やめ、も、……いやあ、」
「……っ、ああ、イズミ、わたしの、わたしだけのかわいい小鳥、もっと鳴いておくれ、」


 わたしが泣き、喘ぐ声。
 アッシュの、獣みたいな荒い息。

 アッシュのもので、ぐちゅぐちゅと中を掻き回される音。
 お腹の中を突き上げられて。じゅぽじゅぽと出し入れされる音。

 耳を塞ぎたくなるそれが、部屋中に響いていた。


 それは、意識を失うまで、続いた。


 †††


 中から身体を揺すられて、目が覚めた。


「……気がついた?」

 ぬちゅぬちゅと、肉を打つ音。
 わたしが意識を失っていても、彼は行為を止めなかったようだ。

「ナカ、熟れて。こなれてきたね。……わたしのペニスに吸い付いてきて、放したくない、っていってるよ?」

 嘘。
 そんなの。

「ふふ、……やはり、意識があるほうがいい。イズミも、気持ち良いよね?」
 アッシュは目を眇めて言った。

「もっと、可愛い声で鳴いて。わたしを、感じなさい」


「ひぃ……っ!?」
 お尻にアッシュの腰骨が当たったのがわかる。

 乱暴に腰を打ち付けられるたびに、ぱちゅん、ぱちゅん、と音がする。
 もう、下半身にほとんど感覚がない。


 悪い夢を見ている。

 ……これは、夢に違いない。
 だって。

 あの優しいアッシュが、わたしに、こんなひどいことをするなんて。
 信じられない。


 お願いだから。
 こんな悪い夢。早く、覚めて。


 優しいアッシュに戻って。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...