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おまけ
初夜の儀式
披露宴で。
昭和後期から平成まで日本の経済界を牛耳っていた、”御前”こと近衛 徳正おじいさまの、遺言という名のお祝いメッセージを読み上げられて。
久世の者と結婚しないと会社の経営権を取り上げる、というのが嘘だったことを知らされた。
近衛のおじいさまが、男のぼくを顕正さんの婚約者にと指定したのは。
人を心から信じず、仕事一辺倒だった顕正さんを心配した近衛のおじいさまが仕組んだイタズラらみたいなもので。
ぼくが男だということも知った上で、婚約者に仕立て上げたのだった。
なかなかお茶目なおじいさまだったようだ。
お逢いしてみたかった。
全ての種明かしをされて。
顕正さんは苦笑しながらも、そのお陰でぼくと出逢えたことを喜んでくれた。
*****
近衛のおじいさまは、ぼくが生まれた頃にはすでに久世家の行方を突き止めていたようで。
近衛家の隠密……という名称の探偵が、ぼくの幼稚園、小学校、中学校の入学卒業と、事あるごとに様子を報告していたという。
お祝いのメッセージと共に渡された、当時の報告書と写真を見ながら。
顕正さんははあ、と溜息を吐いた。
「この頃から周のことを知っていたのなら、もっと早く教えて貰いたかった……」
心底残念そうな顕正さんを、喬任はちらりと見て。
「まさか引き取って、紫の上よろしく手元で育てたかった、などとは仰いませんね?」
「え、駄目か?」
どうやらそのつもりだったらしい顕正さんは、喬任から冷たい視線を向けられた。
「子供に手を出すのは、児童虐待ですよ?」
「誤解だ。私は決して少年趣味ではない。あれは、結婚式に向けてのレッスンで……」
もし、おじいさま、おばあさまがご存命だったら。
この結婚は、赦されていたかな?
……無理だろうな。
バラエティ番組すら観ないくらい、固い人だったし。
男同士で結婚なんて。婚約の時点で絶対許可してくれなかったと思う。
指輪は、普通にお返しするつもりだったのだろう。
天涯孤独の身になって、土地家屋を手放す寸前で。
ある意味、一番いいタイミングで迎えに来てくれたような気がする。
顕正さんは生まれながらの大金持ちだけあって、少しずれてはいるけど。
ぼくのことを幸せにしたい、というのは本当みたいで。色々思いやってくれているのはわかる。
さすがに毎日のようにお花や高価なものを贈るのはやめてもらった。
洋服なんて、もうクローゼットいっぱいあるから。
……ただ、傍にいてくれるだけで、幸せなんだけどな。
*****
披露宴を終えた後。
近衛の実家に行って初夜を過ごし、翌朝には”検めの儀”がある。
本来、花嫁が処女であるという証を検める行事だという。
もっと昔には、入れる穴を間違えないよう、挿入まで見届けられていたそうだ。
今は途絶えた儀式だったのを、ぼくが近衛家の立派な花嫁になりたいと言ったため、これも復活することになった。
男同士なので破瓜の血は出ないから、鳥の血で代用するらしい。
それに、顕正さんとはもう、何度も身体を繋げてしまったから、初めてではないのだけれど。
顕正さんは美男子で体つきも立派で。女性からかなりもてるというのに。
ぼくのこんな薄い身体に欲情して。結婚式の日まで我慢できず、耐えきれなくなって手を出してしまった、という。
平均よりもかなり大きいという顕正さんの性器を受け入れるのは怖かったけど。
顕正さんから激しく求められて、嬉しかった。
会社の取締役であり、責任のある立場で理性的なはずの顕正さんが、我を忘れるほどまで、ぼくのことを欲しいと思ってくれたのが。
顕正さんとぼくの乗る白いリムジンと、数台のリムジンを走らせて。
郊外にある近衛の実家へ向かった。
実家にも、ぼく用の部屋を作ってくれたので、着替えるためにそこへ向かう。
教育係兼世話役の岩倉がついてきて。
白無垢に着替えるのを手伝ってくれた。といっても、結婚式の時のようなフル装備ではないけど。
大学を卒業したら、綾小路君が世話役になるので。
それまでは岩倉が務めてくれるという。
「若奥様、大変お美しゅうございます」
感極まって、涙が出そうなのを堪えている。
物心ついた頃には久世のおじいさましか祖父はいなかった。父さまは早くに親族を亡くしていたので。
なので、もう、ぼくにとって岩倉はもう一人のおじいさまのような存在だ。
岩倉もそうなんだと思う。
可愛い孫がお嫁に行くような気分だと言っていた。
「ありがとう、岩倉……いえ、ぼくのもう一人のおじいさま」
そう言ったら、泣かれてしまった。
*****
着替えてから案内されたのは、襖に囲まれた和室だった。
布団と、物入れと。
行燈と屏風があるだけの部屋。
「こちらで若……いえ、御当主様をお待ちください」
お辞儀をして、岩倉が下がった。
ドキドキしながら、布団の上で顕正さんを待った。
襖は、白地に金で鶴と亀が描かれている。慶事に使う部屋だから、おめでたい絵なのかな?
欄間の模様も凝ってるな、などと関係ないことを考えて、緊張を誤魔化す。
顕正さんとするのは、初めてではないのに。
こうして準備されると、緊張してしまうものなのかも。
昭和後期から平成まで日本の経済界を牛耳っていた、”御前”こと近衛 徳正おじいさまの、遺言という名のお祝いメッセージを読み上げられて。
久世の者と結婚しないと会社の経営権を取り上げる、というのが嘘だったことを知らされた。
近衛のおじいさまが、男のぼくを顕正さんの婚約者にと指定したのは。
人を心から信じず、仕事一辺倒だった顕正さんを心配した近衛のおじいさまが仕組んだイタズラらみたいなもので。
ぼくが男だということも知った上で、婚約者に仕立て上げたのだった。
なかなかお茶目なおじいさまだったようだ。
お逢いしてみたかった。
全ての種明かしをされて。
顕正さんは苦笑しながらも、そのお陰でぼくと出逢えたことを喜んでくれた。
*****
近衛のおじいさまは、ぼくが生まれた頃にはすでに久世家の行方を突き止めていたようで。
近衛家の隠密……という名称の探偵が、ぼくの幼稚園、小学校、中学校の入学卒業と、事あるごとに様子を報告していたという。
お祝いのメッセージと共に渡された、当時の報告書と写真を見ながら。
顕正さんははあ、と溜息を吐いた。
「この頃から周のことを知っていたのなら、もっと早く教えて貰いたかった……」
心底残念そうな顕正さんを、喬任はちらりと見て。
「まさか引き取って、紫の上よろしく手元で育てたかった、などとは仰いませんね?」
「え、駄目か?」
どうやらそのつもりだったらしい顕正さんは、喬任から冷たい視線を向けられた。
「子供に手を出すのは、児童虐待ですよ?」
「誤解だ。私は決して少年趣味ではない。あれは、結婚式に向けてのレッスンで……」
もし、おじいさま、おばあさまがご存命だったら。
この結婚は、赦されていたかな?
……無理だろうな。
バラエティ番組すら観ないくらい、固い人だったし。
男同士で結婚なんて。婚約の時点で絶対許可してくれなかったと思う。
指輪は、普通にお返しするつもりだったのだろう。
天涯孤独の身になって、土地家屋を手放す寸前で。
ある意味、一番いいタイミングで迎えに来てくれたような気がする。
顕正さんは生まれながらの大金持ちだけあって、少しずれてはいるけど。
ぼくのことを幸せにしたい、というのは本当みたいで。色々思いやってくれているのはわかる。
さすがに毎日のようにお花や高価なものを贈るのはやめてもらった。
洋服なんて、もうクローゼットいっぱいあるから。
……ただ、傍にいてくれるだけで、幸せなんだけどな。
*****
披露宴を終えた後。
近衛の実家に行って初夜を過ごし、翌朝には”検めの儀”がある。
本来、花嫁が処女であるという証を検める行事だという。
もっと昔には、入れる穴を間違えないよう、挿入まで見届けられていたそうだ。
今は途絶えた儀式だったのを、ぼくが近衛家の立派な花嫁になりたいと言ったため、これも復活することになった。
男同士なので破瓜の血は出ないから、鳥の血で代用するらしい。
それに、顕正さんとはもう、何度も身体を繋げてしまったから、初めてではないのだけれど。
顕正さんは美男子で体つきも立派で。女性からかなりもてるというのに。
ぼくのこんな薄い身体に欲情して。結婚式の日まで我慢できず、耐えきれなくなって手を出してしまった、という。
平均よりもかなり大きいという顕正さんの性器を受け入れるのは怖かったけど。
顕正さんから激しく求められて、嬉しかった。
会社の取締役であり、責任のある立場で理性的なはずの顕正さんが、我を忘れるほどまで、ぼくのことを欲しいと思ってくれたのが。
顕正さんとぼくの乗る白いリムジンと、数台のリムジンを走らせて。
郊外にある近衛の実家へ向かった。
実家にも、ぼく用の部屋を作ってくれたので、着替えるためにそこへ向かう。
教育係兼世話役の岩倉がついてきて。
白無垢に着替えるのを手伝ってくれた。といっても、結婚式の時のようなフル装備ではないけど。
大学を卒業したら、綾小路君が世話役になるので。
それまでは岩倉が務めてくれるという。
「若奥様、大変お美しゅうございます」
感極まって、涙が出そうなのを堪えている。
物心ついた頃には久世のおじいさましか祖父はいなかった。父さまは早くに親族を亡くしていたので。
なので、もう、ぼくにとって岩倉はもう一人のおじいさまのような存在だ。
岩倉もそうなんだと思う。
可愛い孫がお嫁に行くような気分だと言っていた。
「ありがとう、岩倉……いえ、ぼくのもう一人のおじいさま」
そう言ったら、泣かれてしまった。
*****
着替えてから案内されたのは、襖に囲まれた和室だった。
布団と、物入れと。
行燈と屏風があるだけの部屋。
「こちらで若……いえ、御当主様をお待ちください」
お辞儀をして、岩倉が下がった。
ドキドキしながら、布団の上で顕正さんを待った。
襖は、白地に金で鶴と亀が描かれている。慶事に使う部屋だから、おめでたい絵なのかな?
欄間の模様も凝ってるな、などと関係ないことを考えて、緊張を誤魔化す。
顕正さんとするのは、初めてではないのに。
こうして準備されると、緊張してしまうものなのかも。
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