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総帥も初めてでした。

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「好きでもなければ、ああ何度も勃起しないだろう? そうは思わなかったのか?」


何度も。
勃起したのを、抜き差しされた。

あの、爛れた一週間を思い出してしまって。
お尻がむずむずしてきた。


見ず知らずの外国人じゃなくて。
幼馴染みの鷹ちゃんに、あんなに情熱的に抱かれてただなんて、信じられないけど。

夢でもなんでもないんだよな。
身体が覚えている。


「……でも。男は、征服欲でも勃つだろ。だから、理由がわかんなくて悩んでたんだってば!」

「征服欲か、ふむ。確かに、宗ちゃんに命令するプレイは燃えたな……」
何を納得してるかな。


あれは、プレイじゃないよ。
脅しだよ!?

こっちは、いつも僕の後ろに隠れてた引っ込み思案のはにかみやさんに押し倒されて乗っかられるとは予想外だったよ!


*****


言葉も生活習慣も知らない異国に来た、たった5歳の子供が。
15年後にイタリアのマフィアの首領兼、大企業の総帥になってるなんて。

どれほど努力をすれば、そんな途方もない夢が叶うんだろう。


しかも、鷹ちゃんがそんな不可能とも思えることを成し遂げた理由は、僕に会いたかったから、だというし。
誰もが認める立派な大人になって、堂々と迎えに行きたいと思って、頑張ったんだって。
そんな話を聞いたら、ちょっと病んでしまっても仕方ないかな……、と思わなくはないかもしれない。

ちょっとどころじゃなく病んでる気がするけど。


マフィアになるための試練とか。
想像もつかないけど。大変だったんだろうことはわかる

でも、さすがに輸血で一体化はかっ飛びすぎだと思う。
そこはどうにか改善して欲しい部分だ。


色々びっくりすることがなだれ込み過ぎて、頭が麻痺してるのかもしれない。

でも。
ここに攫われてから、だいぶ気持ちが落ち着いたような気がする。

今まで母さんに楽をさせようと今まで頑張ってきたのに、人生の目標がなくなってしまって。
呆然としていたんだ。


なのに。
この一週間、喪に服したり、将来のことを考えるどころじゃなかったというか。

すっかり快楽に溺れてしまっていた。


てっきり鷹ちゃんだと思ってたジョルジョが、別人だってわかっても。
そんなにショックじゃなかったのも。


……全部、鷹ちゃんのせいだ。


*****


「……何で、僕に枷とか首輪をつけたりしたんだよ……」

「せっかく捕まえたから。ここに閉じ込めて、逃がしたくなかった」
真顔で言われた。


やっぱり発想がおかしい。

せっかく捕まえたから逃がしたくないって。
昆虫採集とかじゃないんだから。

羽根とか生えてないし。
この島から飛んで逃げたり出来ないぞ。


正面から時に、僕の目を閉じさせたのは。

泣き顔を見るのはつらいし。
自分のことを、まるで知らない人を見るような目を向けられたくなかったからだとか。

そんな繊細ぶられても。

だったら脅迫して抱こうとするな。
とっとと名乗れよ! 名乗れば秒で解決した話だっての。

全くもう。


自分のことを気付かれなかったのが悔しくて、僕が気付くまで黙っているつもりだったけど。

早く自分だって気付いて欲しくて。
せめて、目一杯の愛情を込めて抱いた、って言われても。


そんなの、言われなくちゃわからないって……。


*****


「そもそも、通常はどんな感じなのか、違いがわかんないよ。他に経験もない、初心者なんだから」

キスですら、鷹ちゃんが初めてで。
まさか、二番目も鷹ちゃんだったとは……。


「お互いだが。私は、宗ちゃんが最初から感じていたのも、日に日に感度が良くなっていくのもわかったが?」

それは。
そっちは経験豊富っぽいし、上手いのがいけな……えっ?

って言った!?


「嘘。鷹ちゃんってば今まで童貞だったの!? マジで!?」

「何故驚く。遊んでいる暇も惜しんで、クリスティアーニの首領と総帥の座を得ようとした、と言っただろうに」

それどころじゃなかったって。
ああ、確かにそうか。


他人と性交渉なんかしたら、血の交換も出来ないし、するはずがないって言われても。
同じ理由で大怪我しても輸血しなかった?

その考えが怖いよ!!


多分、人生で一番驚いた。
いや、鷹ちゃんも初めてだったからって、別に。嬉しくはないから。

むしろ初めてでって……。
末恐ろしいんだけど。


想像の中で何万回も抱いてシミュレーションした?
したいプレイが山ほどあるって言われても。

嫌だよ。
全部実現しようとしないでね。お願い。


「食事も、さりげなく宗ちゃんの好物を出していたのだが。全く気付かれなかった……」

ああ、デザートのオレンジとかイチゴとか、自分の分もくれたっけ。


むしろ好物なんてよく覚えてたよ。15年も前なのに。
恐るべき、5歳児の記憶力。

美味しかったです。


*****


「……名前、何て呼んだらいい?」
まだ、本当にあの鷹ちゃんだっていう実感はわかないけど。

「私の名は、ヴィットーリオ・デル・テスタだ。昔の名は、君の心の中だけにしまっておいて欲しい」
どこか寂しげにそう言った。

他の人に「鷹ちゃん」って呼ばれるのを聞かれたら、何か問題があるのかな?


改めて名前を呼ぶの、何だか緊張してしまうな。
「ヴィットーリオ……、」

「ヴィックでいい。親しい者はそう呼ぶ」

そんな、優しく見つめないで欲しい。
ここに無理矢理連れて来られたことも、脅されてことだって。

まだ、怒ってるんだからな?

それなのに。
怒りの気持ちが保てなくなりそうだ。


「じゃ、親しくなったらそう呼ぼうかな?」

冗談めかして言ったら。
ヴィットーリオは、片眉だけ器用に上げて。

「これ以上なく親しいだろう? 身体を重ね合ったのだし」


「順番逆! 普通、逆だよ!」
思わず吹き出して。

一緒に、笑った。


こんな笑ったの、どれくらいぶりだろう。
記憶にあるのは、バイト先でしていた愛想笑いくらいで。

心から笑えたのは、いつだったっけ?
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