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色々な意味で、危険です。

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『呼び出すために、指の一本でも送ってやるか?』


ひええ。
指は合計20本しかないから、一本も無くしたくないよ!

どうやらミルコは自分の手は汚さず、部下にやらせるつもりなようだ。

追及されても、部下が勝手にしたことだって言い逃れるつもりなんだな。
その根性が汚い。


『愛しい恋人の姿を送信した方が、より動揺させることができるかと』
「!?」

ミルコの部下の提案に。
それは面白い、とミルコが納得してしまった。

何も面白いことなんてないよ!?


*****


『そういえばお前は、に髪と肌の色が似ているな』

顔を写さないようにの写真を撮って。
ヴィットーリオ総帥は子供に手を出した犯罪者だった、という醜聞をばら撒いてやるもの一興か、などと言い出した。


冗談じゃない。
そんなことに利用されるなんて。

ヴィットーリオは、僕を人質にされたら何でも差し出してしまうだろう、と言っていた。

こんなゲスな奴にまで?
そんなことさせるくらいなら、死んだほうがマシだ。

でも、舌を噛んだところで、死ねないし。
ムカつかせて、銃を撃たせるか? そう上手くいくかな……。


『ところで、ちゃんとんだろうな?』
ミルコが部下に訊いた。

『アッハ、小さくて可愛らしいですからね。軍隊の屈強な野郎共と一発、と言われるよりよほど実現可能な作戦です』

あ、勃起するのかって話か。しなくていいです!


ミルコの部下が、僕のところに近寄って来て。
僕のスラックスに手を掛けた。

このまま、見知らぬ男に犯されてしまうのか。
気をつけろって、あんなに言われてたのに。

まさか、城内で堂々と攫われるとは思わなかった。

だから言っただろう、と。
眉間に皺を寄せたヴィットーリオの顔が目に浮かぶようだ。


『そういえば、傭兵だと言ったな。お前、名は?』
『ジョー・南郷。アメリカとメキシコでの勤務を経験してます。こんなに乗せていただくのは初めてでね、これでも緊張してるんですよ。目の覚めるような青と新品みたいな白が地中海の紺碧に映えますね』

『無駄話はいい。とっととやれ』
Sì,イエ Signoreッサー

ん? ナンゴー?
どこかで聞いたような……。どこだったか……。


*****


南郷と名乗った男は。
ミルコに見えないように、僕にウインクをしてみせた。

クルーザー。船に乗ってる、って言った。

ああ、だからさっきから何だかゆらゆら揺れてる感じがするんだ。
気絶している間に、船で島の外まで連れ出されてたんだろう。

多分、この人はヴィットーリオの味方なんだと思う。
首輪についている盗聴器のことを知ってて、わざと僕達の居場所と船の特徴を教えたような感じだった。


ヴィットーリオ、攫われる時も、盗聴器で聞いてたはずじゃないの? 間に合わなかったのかな。
それほど素早い犯行だったとか?

それとも。
何か、すぐに来られないような妨害に遭った……?


日本語で、大袈裟に嫌がってみせてください、と囁かれて。

首の辺りで。
ちゅっ、と音がした。

「ひ、……いや、やだ、」

うわ、気持ち悪い。
本当にされた訳じゃないのに。

でも。気持ち悪いものは気持ち悪いんだ。
演技でなく、本気でぞっとした。

本能からの拒絶反応だ。


「やぁ、やだあ、」
思わず首を仰け反らせて、逃げようとする。


……ミルコのおっさん、何で鼻息荒くしてこっちに身を乗り出してるんだよ。

デジタルカメラっぽいのを構えてるのに。シャッターを押してる気配がないんだけど。
ミルコのおっさん、あんたも変態か!?


「や、やだ、やめて、」

スラックスを脱がされて。
抱え上げられた太股を撫でられている。

『すべすべだ。役得役得』
何言ってんの!?


『いいから早く突っ込め!』

さすがにこれ以上の時間稼ぎは無理か、と。
日本語で南郷さんが呟いた時。


*****


『そこまでだ、手を挙げろアルツァ・ラ・マノ。そのまま両手を頭の後ろに回せ』

声を荒げたわけでも、大声でもないのに。
場の空気が一瞬で氷点下まで下がったような、厳しい声。

銃を構えたヴィットーリオが立っていた。


弱冠二十歳とは思えない、現役マフィアの首領の恫喝に。
老練なマフィアのミルコと、味方なはずの南郷さんまで思わず両手を挙げてしまっただけでなく。
僕まで硬直したほどの迫力だった。


「はい、お疲れ様~」
と、笑顔になった南郷さんに両手の拘束を外されて。

脱がされたスラックスを手渡された、と思ったら。
南郷さんはすぐにミルコの背後に駆け寄って、その両腕に手錠を掛けた。

素早い。これがプロか、って感じの動きだった。


『貴様……、寝返ったか!?』
ミルコは、南郷さんを殺さんばかりの怒りを向けて、恐ろしい顔で睨んだ。

『アッハ、俺はなんですよね~。はじめまして、クリスティアーニ警備会社、イタリア本部特殊警備隊所属、ジョー・南郷です』
涼しい顔をして、警察みたいな敬礼をした。


あ。思い出した。
この人、母さんの葬式とか、手続きに走り回ってくれてた人じゃないか。

何度か見たのに、すっかり忘れてた。
励ましの言葉も掛けてくれてたのに。我ながら恩知らずだな……。


『それはどうかな。であることは確かなようだが……』
ヴィットーリオは怖い顔で南郷さんを睨んでいる。

『ボス、殺気を向けないでください! 演技ですから。何もしてませんから!』
手のひらをこちらに見せて、降参のポーズをしてる。

メキシコ帰りの傭兵をも怯えさせるとは。
さすがイタリアマフィアの首領と言うべきか……。


*****


『会話は全て録音させてもらった。言い逃れは出来ない。今から一族を召集する。血の掟オメルタを破った者がどうなるか、知っているな?』

ヴィットーリオは僕の首から首輪を外して。
中に仕込んでいたという、盗聴器を取り出した。

『それと、彼の年齢は21歳で、未成年ではない。合意の上の自由恋愛だ。残念だったな』


合意の上の自由恋愛? そうだったっけ……? と思ったけど。
今の所は黙っておこう。
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