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マフィアの島で披露宴をしました。

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今度はマルチェッロにエスコートされて会場に戻ると。


ヴィットーリオも着替えていて、白いスーツだった。
銀糸で刺繍が入っている。

これもまた凄く似合っていて。
思わず感嘆の溜め息が出るほど格好いい。

撮影隊がカメラを構えて、フラッシュが焚かれる。


「綺麗だよ。とても似合っている」

君だけに似合うようにデザインしたのだから当然かな、とか囁かれて。
口元に砂糖菓子を運ばれた。

あ、美味しい。

ついそのまま食べてしまったら、囃されてしまった。
お幸せにコールがあちこちから聞こえてくる。

うう、恥ずかしい……。


ヴィットーリオが恥をかかないように、って。
テーブルマナーとか頑張って特訓したんだけど。

こうやって食べさせようとしてくるんじゃ、覚えた意味無いじゃん!


*****


マルチェッロがドレスの説明をして。

やはりこれもヴィットーリオのデザインで、ティアラだけでも日本円で億は行ってるような金額が聞こえたけど。
僕には何も聞こえなかった。

僕個人に使ったのではなく、広告費だと考えよう。

ひええ、全て総帥が個人資産から出したとか。
怖いこと言わないでお兄ちゃん!


……今、ヴィットーリオがつけてるインカムから、武装した強盗団が現れたが、ホテルに入る前に鎮圧した、とか漏れ聞こえたんだけど。

マフィアの結婚式に乗り込もうとするなんて。
勇気のある強盗団だ……。蛮勇か。

もしかして、のかな?


披露宴開始から、3時間ほど経った頃。
ヴィットーリオは席を立って、マイクを持った。

この後、余興も用意してあり、この会場は朝まで開けているので、どうぞお楽しみください、と告げた。
招待客を置いて、主役が帰っちゃうんだ?

まあ、島でも披露宴をやるからなんだけど。


あと数時間も我慢できないのか、みたいに囃す声が聞こえて。

ヴィットーリオに、ぐい、と腰を引き寄せられた。
『このように愛らしい花嫁を前にして、獣にならない男がいるとでも?』

挑戦的な笑みもかっこいいな、と見惚れてしまっていたら。

ひょい、とお姫様抱っこされた状態で。
盛大な拍手を受けながら退場した。


素顔出さなくて良かった、と心から思った。
恥ずかしくて死ねる。


*****


再びウエディングドレスに着替えた。

「口紅、あんまり落ちてないけど。ご飯食べれなかった? コルセットのせいかな? ちょい緩めようか?」
マルチェッロにメイクを直される。相変わらずネイティブすぎる日本語だ。

「なんか、緊張しちゃって……」

一応、ヴィットーリオがお菓子を食べさせてくれた、とは伝える。

「そうだよねー。知らない人ばっかだし、慣れてないとキツイね。もうちょい我慢してねー」
はいとりあえずカロリー補給、と。小さいトリュフチョコを口に放り込まれた。

ああ、甘さが五臓六腑に染みわたる……。


「親父がドアの前でうろうろしてるって。宗ちゃんをエスコートするの、楽しみにしてるみたい」
マルチェッロがインカムに耳を傾けて、うんざりした顔で言った。

いつの間にか宗ちゃんとか呼ばれている。
まあいいか。

坊やよりはずっとマシだし。


ルイジパパは結婚式の後、マフィアの客を迎えるために、一足先に島に戻っていたようだ。

それが、どうやら披露宴会場のホールまで、ルイジパパが再びエスコートしてくれるらしい。
わざわざこっちまで、迎えに来てくれたのか……。


「パパもお兄ちゃんも優しくて嬉しい」
「俺も可愛い弟が出来て嬉しいよ~! ……って、何でパパって言ってるの?」

「お義父さんじゃなく、パパって呼んで欲しいって」


「あのアホ親父……」
マルチェッロは蔑んだ眼差しをドアの方へ向けた。


*****


『準備できたよー』

『ではN-1班、そちらに向かいます』
ドアの前で待機していた南郷さんがインカムで会場に連絡してる。


『では、行こうか』
出されたルイジパパの腕に掴まって。

ベールは無いけど。
長いスカートを引き摺らないように、マルチェッロが後ろでスカートの裾を持ってくれている。

エスコートされながら、会場へ向かう。


こっちの披露宴にはアルテ・クリスティアーニ撮影隊は来ないようだ。
さすがに、表には出せない招待客ばかりだもんな。

100%マフィアと、その関係者だし。


会場への距離はそれほどないけど、僕たちの前後を南郷さんたち武装ボディガードが固めている、という物々しい状況だ。
反ヴィットーリオ派のほとんどは排除されたものの、油断は禁物だって。

おめでたい席くらいは、物騒なのは遠慮して欲しいね。


僕たちが会場に入ると、途端にざわついた。
男だという話だが、女ではないのか? とかいう声が聞こえる。

海千山千のマフィアも騙されるとか。
化粧ってすごい。


ざわつく人達を、ルイジパパがひと睨みで黙らせた。
自分の養子である、それが信じられないのか、ってことかな。


*****


『絶世の美姫に見えるだろうが、彼は間違いなく男性だ。私の我儘で、ドレスを身にまとっているだけで』
ヴィットーリオの声が響く。


雛壇で。
堂々とした立ち姿で待っていたヴィットーリオは、さっきとは雰囲気がまるで違うように思える。

大企業の総帥としての顔と、マフィアの首領の顔の違いかな?
会社ではまだ、猫被ってるようなものだったのかも。


La ringrazioりがとう
ルイジパパとエスコート役を交代して。

ヴィットーリオの手を取る。

È la miaエ ラ ミア  personaペルソナ amata アマータ

肩を抱かれて。
私の最愛の人だと、紹介される。


割れんばかりの拍手の音が響いて。

ヴィットーリオがすっ、と手を上げると。
音はぴたりと止んだ。


『これより、正式に血の掟オメルタの誓いを交わし、彼を我がクリスティアーニの血族とする』
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