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Ⅳ
異世界で、事情を聞く
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「母さんが大ファンで。俺が小さい頃、リューセーのマイフェイバリットテープ作って、テープがべろんべろんになるまで鬼リピで聞いてたし。写真集もあったよ。水着とかシャツの前を開けてるやつ!」
アイドルグループあるあるというか。
5人いたメンバーは、しばらくして引退したり。役者転向などソロ活動で忙しくなったりで。
リューセーの亡くなる4年前には、もうほとんど音楽活動を中止してたんだよな。
いい声してたのに。
ソロで歌手活動して欲しいと思ってたファンは多かったと思う。
「あ、ベスト盤含めてCD20枚。リューセーのソロ曲も全部歌えるよ」
「……忘れなさい」
ウィリアムは、顔を覆って俯いてしまった。
あれ? 照れてる?
*****
オズワルド達をロチェスターへ帰したのは。
ウィリアムが転生した異世界人であることを誰にも秘密にしていたので、単に、この話を聞かれたくなかったからだそうだ。
俺にも、彼らには黙っていて欲しいと言われた。
ウィリアムは、この国の第二王子だった。
15歳の儀式の時、神様からいつか来る”神の使者”の補佐をすること。自分は将来国王になることを聞き、闇魔法を除いた全魔法を授かった。
でも、同時に悪い神様の介入によって、前世の記憶を思い出させられた上に、何もかも破壊できるような闇魔法を授けられて。
神の使者を堕落させ、この世界を混乱に導く手伝いをするよう、誘われたらしい。
そういえば俺も、悪い神様によって死ぬことになったんだよな。
何でそういうことするんだ。悪い神様だからか。
「君も知ってるかもしれないが。……前世で、色々あったから。人と神に対し、憎悪を持ってると思われたのだろう」
静かに笑った。
ニュースは見た。
リューセーが自殺した動機は、腐りきった芸能界に絶望したことと、枕営業を押し付けられたことに対しての抗議、だった。
何社かに、遺書が送られたらしく。大手出版社は事務所の力で握りつぶされたようだけど。とあるスポーツ新聞が一面使って全文載せたので、話題になったんだ。
皆は何となく、芸能界ってそういうとこだろうな、と察してたので。
むしろそれまでリューセーが裏の営業をしてなかったのが奇跡だとか言われてた。実力でトップアイドルにまでのし上がったんだ。前よりもっと好感度が上がった。
その後、事務所は所長が病気で急死して。
ちょっとしたスクープも握りつぶせないくらい、かなり力を落としたようだ。
今まで好き勝手していた罰が当たったんだろうって皆言ってたっけ。
*****
そして、魔物の大発生時。
予言で亡くなると言われたので。ウィリアムは前もって王と第一王子に、戦線には決して出ないよう忠告しておいた。
ウィリアム自身は騎士団を指揮して、最前線で戦った。でも、破壊力の高すぎる闇の魔法は使わなかった。
王様と第一王子は城の高い塔から、兵へ指示を出していたらしい。
そこへ、それまでこの世界にはいなかったワイバーンが現れて。ワイバーンの 火の息によって、塔は跡形なく破壊された。
忠告もむなしく、予言通りに王様と第一王子は亡くなってしまった。
戦場で訃報を聞いたウィリアムは。
ショックもあって、それまで自分に禁じていた闇魔法を使って、魔物の発生源だったリズリーの森を焼いてしまったそうだ。
それによって、大発生したモンスターは全て退治することができたけど。
闇魔法の影響で、辺り一面を死の荒野に変えてしまった。
国民が混乱するだろうから、国王と第一王子は他国へ外交に出ていることにして。
リズリーの荒野も、魔物の血による影響と発表した。
まだ二人の死は発表してないし、ウィリアムの身分も第二王子のままだという。
そして。
神のお告げ通り。こうして、俺……神の使者も来た訳で。
*****
そうか。妙に親切だと思ったら。
俺の手助けをするよう、前もって言われてたんだ。
「やっぱりリューセー……じゃなかったウィルって、王子様だったんだ」
王様にしては若いから、王子辺りの王族だとは思ったけど。
大事なことを決める時はウッドロー公爵を国王代理として立てておいて。決定権はウィリアムが握っていた。
実質、もう王様みたいなものじゃないか。まだ17歳なのに。
中の人は36でも、その記憶を取り戻したのは2年前か。
色々、混乱しただろうな。
なのに、悪神の誘いに魅かれなかった精神力はすごい。
アイドルグループあるあるというか。
5人いたメンバーは、しばらくして引退したり。役者転向などソロ活動で忙しくなったりで。
リューセーの亡くなる4年前には、もうほとんど音楽活動を中止してたんだよな。
いい声してたのに。
ソロで歌手活動して欲しいと思ってたファンは多かったと思う。
「あ、ベスト盤含めてCD20枚。リューセーのソロ曲も全部歌えるよ」
「……忘れなさい」
ウィリアムは、顔を覆って俯いてしまった。
あれ? 照れてる?
*****
オズワルド達をロチェスターへ帰したのは。
ウィリアムが転生した異世界人であることを誰にも秘密にしていたので、単に、この話を聞かれたくなかったからだそうだ。
俺にも、彼らには黙っていて欲しいと言われた。
ウィリアムは、この国の第二王子だった。
15歳の儀式の時、神様からいつか来る”神の使者”の補佐をすること。自分は将来国王になることを聞き、闇魔法を除いた全魔法を授かった。
でも、同時に悪い神様の介入によって、前世の記憶を思い出させられた上に、何もかも破壊できるような闇魔法を授けられて。
神の使者を堕落させ、この世界を混乱に導く手伝いをするよう、誘われたらしい。
そういえば俺も、悪い神様によって死ぬことになったんだよな。
何でそういうことするんだ。悪い神様だからか。
「君も知ってるかもしれないが。……前世で、色々あったから。人と神に対し、憎悪を持ってると思われたのだろう」
静かに笑った。
ニュースは見た。
リューセーが自殺した動機は、腐りきった芸能界に絶望したことと、枕営業を押し付けられたことに対しての抗議、だった。
何社かに、遺書が送られたらしく。大手出版社は事務所の力で握りつぶされたようだけど。とあるスポーツ新聞が一面使って全文載せたので、話題になったんだ。
皆は何となく、芸能界ってそういうとこだろうな、と察してたので。
むしろそれまでリューセーが裏の営業をしてなかったのが奇跡だとか言われてた。実力でトップアイドルにまでのし上がったんだ。前よりもっと好感度が上がった。
その後、事務所は所長が病気で急死して。
ちょっとしたスクープも握りつぶせないくらい、かなり力を落としたようだ。
今まで好き勝手していた罰が当たったんだろうって皆言ってたっけ。
*****
そして、魔物の大発生時。
予言で亡くなると言われたので。ウィリアムは前もって王と第一王子に、戦線には決して出ないよう忠告しておいた。
ウィリアム自身は騎士団を指揮して、最前線で戦った。でも、破壊力の高すぎる闇の魔法は使わなかった。
王様と第一王子は城の高い塔から、兵へ指示を出していたらしい。
そこへ、それまでこの世界にはいなかったワイバーンが現れて。ワイバーンの 火の息によって、塔は跡形なく破壊された。
忠告もむなしく、予言通りに王様と第一王子は亡くなってしまった。
戦場で訃報を聞いたウィリアムは。
ショックもあって、それまで自分に禁じていた闇魔法を使って、魔物の発生源だったリズリーの森を焼いてしまったそうだ。
それによって、大発生したモンスターは全て退治することができたけど。
闇魔法の影響で、辺り一面を死の荒野に変えてしまった。
国民が混乱するだろうから、国王と第一王子は他国へ外交に出ていることにして。
リズリーの荒野も、魔物の血による影響と発表した。
まだ二人の死は発表してないし、ウィリアムの身分も第二王子のままだという。
そして。
神のお告げ通り。こうして、俺……神の使者も来た訳で。
*****
そうか。妙に親切だと思ったら。
俺の手助けをするよう、前もって言われてたんだ。
「やっぱりリューセー……じゃなかったウィルって、王子様だったんだ」
王様にしては若いから、王子辺りの王族だとは思ったけど。
大事なことを決める時はウッドロー公爵を国王代理として立てておいて。決定権はウィリアムが握っていた。
実質、もう王様みたいなものじゃないか。まだ17歳なのに。
中の人は36でも、その記憶を取り戻したのは2年前か。
色々、混乱しただろうな。
なのに、悪神の誘いに魅かれなかった精神力はすごい。
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