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Ⅴ
異世界で、税の話をしたり
「あんなに美味しいご食事を、毎日食べていたのか。羨ましいね。子供たちは、さぞ幸せだったことだろう」
ウィリアムは、寂しげな微笑みを浮かべた。
幸せだった。
……そう。過去形だ。調理師だった俺は、もう死んだから。
「神様が言うには、本来、幸せな結婚をして寿命を迎えるはずが、悪い神がちょっかい出してきたせいで、起こるはずのなかった事故で死ぬことになったんだって」
「そうか……、」
本当に突然、思いがけず死んでしまったけど。
思い残すことは、定年退職後は片田舎で家庭菜園しながら古民家カフェでもやりたかったくらいだな、と思っていたら。
生き返らせることは不可能だけど、異世界で新しい人生を送ることができる、と言われて。ちょっと欲張って、農業をしても疲れない身体と、畑と、ちょっとした酪農もできる土地、好きな植物を育てられる能力に可愛い番犬が欲しいと言ってみたら。
神様から”創造”のスキルだけでなく、異世界でも言葉がわかる能力や、攻撃無効、生き物に好かれる能力までつけて頂いたことを話すと。
ウィリアムは、神様まであれこれ世話を焼きたくなるなんて相当だね、と笑った。
俺って、そんなに頼りないかな?
*****
リズリーの森を蘇らせて。水源も確保した。庭付き一戸建ても無事作れた。
この国の王族とのコネもできたので、土地の権利とか営業許可とか、難しい問題は解決したと言っていい……よな?
あとは畑作りと、酪農でチーズ、バター、牛乳をゲット。
そして、犬を飼う。
夢のスローライフを送ることができるなんて、本当に夢みたいだ。
カフェ開店は、まだしばらくの間はいいかな。もうちょっと、この世界に馴れてからで。
それに、店で出すのなら”創造”の能力で作ったんじゃなく、できれば畑で育てた野菜を使いたい。地産地消。この国に役立つこともしなくちゃ。
「でも、こうして若返って、子供の姿でも何でも作れる能力をもらえたんだし。かえってラッキー、と思わなくもないかな?」
「まあね。私もそうかもしれないな。この世界では少なくともパワハラを受けたことがないのが嬉しいね」
ウィリアムはにやりと笑ってみせた。
ああ、前世では、随分苦労したんだろうな……ってわかる笑みだ。
でも王子様にパワハラとか、勇者でも無理では?
「せっかく同郷同士こうして出会えたのだし、この世界のことで困ったりわからないことがあったら、いつでも相談するといい。私も、君がこの国で過ごしやすいよう、手を貸すよ。何よりも最優先でね」
と手を差し出されたので。
てっきり握手だと思い、握ろうと伸ばした手を掴まれて。
「うひゃ、」
手の甲にキスをされた。
お姫様にキスする騎士じゃあるまいし。……格好は騎士だけど。
お腹抱えて笑ってる。
やっぱり、ちょっとは酔ってないか?
「ウィル、俺のこと、たぶらかそうとしてない?」
「え? このくらいで誑かされてくれるのかい?」
にこにこしてる。
そういえばこの人は、現役の王子様で。前世はトップアイドルだった。勝てるわけがない。
*****
「あ、そうだ。明日は管理人夫婦を紹介するよ。二人は元々、リズリーの森を管理していたのだけど、私のせいで職を失くしていてね。森も蘇ったので復職してもらうつもりだ」
森の中に、管理小屋もあったけど。魔物の襲撃で壊されてしまったという。
その上、管理する森自体がなくなったので、困っていたそうだ。でもそればウィリアムのせいじゃないだろう。責任、背負い過ぎだと思う。
「じゃあその人たちの家、作ろうか?」
「いいのかい?」
「うん。どういうのがいいかな。こっちの建物、中はお城とギルドしか見てない……」
さすがにこの家みたいなのはまずいだろう。この世界ではオーバースペック過ぎる。色々と。
「書くものがあれば図説できるが」
「はい、」
紙と鉛筆を出したら、ウィリアムはさらさらと管理小屋の外観と間取りを描いてくれた。絵、上手いな。
なるほど。小屋というか、コテージみたいな感じでいいのか。あとは馬小屋と、魔物や猛獣を退治する武器の保管庫も必要、と。
ウィリアムは、自分の代で廃止にするつもりだそうだけど。
この国には間口税といって、家の間口が広ければ広いほど税金が多く課される税金があるそうだ。
なるほど。だから下町では門や扉、窓の小さな家が多かったのか。
商店街の大商店は、どこも窓が大きくて、入り口が広かったな。税金を余裕で払えるくらい稼いでるんだぞ、という証みたいなものか。
あと、魔物の大発生で壊されてしまい、今は木戸になってるけど、元々お城の窓は高価な一枚ガラスで出来ていたんだそうだ。
この世界でガラスの窓は、権力と莫大な財力の証なわけだな?
ロチェスターにある教会の窓は小さなガラスをはめ込んだステンドグラスになっていて、観光名所として人気だとか。
そろそろ落ち着いた頃だし、ガラス窓の販売も復活するつもりらしい。ガラス窓税、めちゃくちゃかかるそうだけど。
え? 間口税は日本にも、江戸時代にあった? そうなんだ。
だから当時はウナギの寝床みたいな家が多かったし、税金対策のために色々工夫をして暮らしてたんだ。
よく知ってるなあ、と思ったらクイズ番組で知った知識だそうだ。いや、覚えてるの凄いと思う。
さすが元トップアイドル。才能がマルチすぎる。
ウィリアムは、寂しげな微笑みを浮かべた。
幸せだった。
……そう。過去形だ。調理師だった俺は、もう死んだから。
「神様が言うには、本来、幸せな結婚をして寿命を迎えるはずが、悪い神がちょっかい出してきたせいで、起こるはずのなかった事故で死ぬことになったんだって」
「そうか……、」
本当に突然、思いがけず死んでしまったけど。
思い残すことは、定年退職後は片田舎で家庭菜園しながら古民家カフェでもやりたかったくらいだな、と思っていたら。
生き返らせることは不可能だけど、異世界で新しい人生を送ることができる、と言われて。ちょっと欲張って、農業をしても疲れない身体と、畑と、ちょっとした酪農もできる土地、好きな植物を育てられる能力に可愛い番犬が欲しいと言ってみたら。
神様から”創造”のスキルだけでなく、異世界でも言葉がわかる能力や、攻撃無効、生き物に好かれる能力までつけて頂いたことを話すと。
ウィリアムは、神様まであれこれ世話を焼きたくなるなんて相当だね、と笑った。
俺って、そんなに頼りないかな?
*****
リズリーの森を蘇らせて。水源も確保した。庭付き一戸建ても無事作れた。
この国の王族とのコネもできたので、土地の権利とか営業許可とか、難しい問題は解決したと言っていい……よな?
あとは畑作りと、酪農でチーズ、バター、牛乳をゲット。
そして、犬を飼う。
夢のスローライフを送ることができるなんて、本当に夢みたいだ。
カフェ開店は、まだしばらくの間はいいかな。もうちょっと、この世界に馴れてからで。
それに、店で出すのなら”創造”の能力で作ったんじゃなく、できれば畑で育てた野菜を使いたい。地産地消。この国に役立つこともしなくちゃ。
「でも、こうして若返って、子供の姿でも何でも作れる能力をもらえたんだし。かえってラッキー、と思わなくもないかな?」
「まあね。私もそうかもしれないな。この世界では少なくともパワハラを受けたことがないのが嬉しいね」
ウィリアムはにやりと笑ってみせた。
ああ、前世では、随分苦労したんだろうな……ってわかる笑みだ。
でも王子様にパワハラとか、勇者でも無理では?
「せっかく同郷同士こうして出会えたのだし、この世界のことで困ったりわからないことがあったら、いつでも相談するといい。私も、君がこの国で過ごしやすいよう、手を貸すよ。何よりも最優先でね」
と手を差し出されたので。
てっきり握手だと思い、握ろうと伸ばした手を掴まれて。
「うひゃ、」
手の甲にキスをされた。
お姫様にキスする騎士じゃあるまいし。……格好は騎士だけど。
お腹抱えて笑ってる。
やっぱり、ちょっとは酔ってないか?
「ウィル、俺のこと、たぶらかそうとしてない?」
「え? このくらいで誑かされてくれるのかい?」
にこにこしてる。
そういえばこの人は、現役の王子様で。前世はトップアイドルだった。勝てるわけがない。
*****
「あ、そうだ。明日は管理人夫婦を紹介するよ。二人は元々、リズリーの森を管理していたのだけど、私のせいで職を失くしていてね。森も蘇ったので復職してもらうつもりだ」
森の中に、管理小屋もあったけど。魔物の襲撃で壊されてしまったという。
その上、管理する森自体がなくなったので、困っていたそうだ。でもそればウィリアムのせいじゃないだろう。責任、背負い過ぎだと思う。
「じゃあその人たちの家、作ろうか?」
「いいのかい?」
「うん。どういうのがいいかな。こっちの建物、中はお城とギルドしか見てない……」
さすがにこの家みたいなのはまずいだろう。この世界ではオーバースペック過ぎる。色々と。
「書くものがあれば図説できるが」
「はい、」
紙と鉛筆を出したら、ウィリアムはさらさらと管理小屋の外観と間取りを描いてくれた。絵、上手いな。
なるほど。小屋というか、コテージみたいな感じでいいのか。あとは馬小屋と、魔物や猛獣を退治する武器の保管庫も必要、と。
ウィリアムは、自分の代で廃止にするつもりだそうだけど。
この国には間口税といって、家の間口が広ければ広いほど税金が多く課される税金があるそうだ。
なるほど。だから下町では門や扉、窓の小さな家が多かったのか。
商店街の大商店は、どこも窓が大きくて、入り口が広かったな。税金を余裕で払えるくらい稼いでるんだぞ、という証みたいなものか。
あと、魔物の大発生で壊されてしまい、今は木戸になってるけど、元々お城の窓は高価な一枚ガラスで出来ていたんだそうだ。
この世界でガラスの窓は、権力と莫大な財力の証なわけだな?
ロチェスターにある教会の窓は小さなガラスをはめ込んだステンドグラスになっていて、観光名所として人気だとか。
そろそろ落ち着いた頃だし、ガラス窓の販売も復活するつもりらしい。ガラス窓税、めちゃくちゃかかるそうだけど。
え? 間口税は日本にも、江戸時代にあった? そうなんだ。
だから当時はウナギの寝床みたいな家が多かったし、税金対策のために色々工夫をして暮らしてたんだ。
よく知ってるなあ、と思ったらクイズ番組で知った知識だそうだ。いや、覚えてるの凄いと思う。
さすが元トップアイドル。才能がマルチすぎる。
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