神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

文字の大きさ
50 / 71
転生国王は神の使いを寵愛する

神の使者との出会い

「リズリーへ見回りに出る」

 護衛の騎士オズワルドと、側近のオーソンを連れ。愛馬ナムグンに跨り、不毛の地となったリズリーへ走らせた。
 リズリーへの見回りは、これまでも何度か行っているため不自然には思わないだろう。

 国王代理としてキンバリー公爵を立ててあるので、少々城を抜けても問題ない。


「次期国王に対し、護衛がオズワルドだけでは足りないのでは?」
 オーソンは未だに渋っていたが。

「……ほう? この国で、私に勝てる腕の者を連れて来るがいい。もしも存在するのならな」
 と言ったら黙った。

 オズワルドも微妙な顔をした。自分よりも弱い護衛だと言ったも同じである。
 少々大人げなかった。


 ……ああ、気がはやる。
 救世主とやらは、どのような姿をしているのだろう? 年齢は?

 このようにそわそわするのは、生まれて初めてかもしれない。
 前世も含めて。


 *****


 我がキングスレイ王国の最南端、辺境にあるリズリー地方。
 ここは草も木も枯れ果て、呪われた死の荒野となった。私の未熟さゆえに。

 その中ほどに。
 たった一人、かの子供は佇んでいたのだ。


 愛馬ナムグンをすぐ傍まで寄せたのだが。
 何か考え事をしているのか、子供はぼうっとして、どこかを見ていた。

 ”鑑定”で、ステータス画面でも見ているのかもしれないが。馬をここまで寄せているのに気づかないとは、無防備すぎる……。
 よほど平和な世界から来たのだろう。

 警戒心の強いナムグンが、珍しく威嚇もせず、興味深そうに子供の様子を伺っている。
 それだけでも、驚くべきことである。

 間違いなく、この子が”神の使者”……我が国の窮状を救うべく召喚された救世主なのだろう。


「誰だ?」
 子供などに化け、人を襲う魔物も存在する世界である。何も知らないオズワルドが子供に対し、警戒しきった声を上げたが。

 子供は、のんびりと振り向いて。

「今、お前がしゃべったの?」
 と言って、ナムグンの鼻面を撫でた。

 ナムグンは嬉しそうな声を上げている。
 それには驚いた。

 ナムグンはかなり気の荒い牝馬である。私以外には気を許さず、オズワルドやオーソンですら不用意に近寄ると容赦なく蹴られるため、恐れて馬番も近寄らないほどだというのに。
 それが、わざわざ子供にも手が届くように顔を下げて、撫でられるためにすり寄っているのだ。

「普通、馬は人の言葉を喋らないと思うが……?」
 不思議に思いつつ、呟くと。

 子供は、数歩後ずさり。


 私と、目が合った。


 *****


 艶やかな黒髪に、黒と茶の大きな目。
 左目の下には小さな黒子がある。なんとも愛らしい顔立ちをした子だ。

 肌の色から見ても、アジア人のようだと思った。
 身に着けた服は、こちらでもありふれた、一般的なものだが。仕立てたばかりのように真新しい。

 この国では、ほぼ見ない容姿である。
 年齢は5、6歳くらいだろうか? アジア系ならば、8歳くらいの可能性もあるが。


 子供は口を開け、ぽかんとした顔で私を見上げている。
 硬直するほど驚かせてしまったようだ。

 子供相手とはいえ、馬上から声を掛けるのは礼を欠いた行いであったことに気づき、ナムグンから降り、子供に視線を合わせるように跪き、腰を屈めた。

「このような呪われた荒野に子供が一人でいるので、魔物と勘違いしたようだ。私の連れが驚かせてしまい、すまなかった」
 子供と目線を合わせ、謝罪すると。

 私を見て、子供は頬を朱に染めた。
 女性であれば、よくある反応だが。この子は男の子だ。人見知りなのだろうか?


 *****


 ナムグンは子供に鼻面を摺り寄せている。

「気性の荒いナムグンがこれほど懐くとは。非常に珍しいことなのだよ」
 神の使者は、動物にも無条件で好かれるのだろうか?

 子供は、嬉しそうにナムグンの鼻面を撫でた。
 無防備な笑顔が愛らしい。

「この辺りでは見かけないような顔立ちだが。どこから来たのかな? 名は? 保護者はいないのか?」
 なるべく威圧感を与えないよう、名を訊くと。

「ええと。リン・クレーバーンです。保護者はいませんが……、」
「何と、神の使いか!」
 わざと背後にいる二人にも聞こえるよう、声を上げて驚いてみせた。


 この世界で姓を名乗れるのは、貴族か、大金を払って爵位を買った大商人、戦功を上げた勇者くらいだが。
 この世界では古くより、”クレーバーン”という姓は、”神により遣わされた神の使者”のみが名乗ることを許されたものだと記録されている。
 だが、このことは我が国でも、中枢にいる者しか知らない。決してその姓を騙る者が現れないよう、用心のため秘匿されている情報である。
 もはやこの子が神の使者であることは疑う余地もない。

「こことは異なる世界から、我が国キングスレイへようこそ。国を代表し、歓迎しよう」
 少々オーバーに礼をしてみせると。

 子供……リンは、また頬を染めた。
 照れているのだろうか? かわいらしいな。


 *****


 リンをナムグンの背に乗せ、ロチェスターへ向かわせる。

「私はウィリアム・ヘンドリック・ゲインズ。年齢は17歳だ」
 フルネームはウィリアム・ヘンドリック・ゲインズ=キングスレイなのだが。名に国名がついていると王族だとわかってしまい、内気らしい彼を委縮させるだろう。
 今は、ただの騎士だと言っておこう。

 私は生前、時代劇ドラマの撮影で何度か乗馬を経験したが。リンは馬に乗るのはこれが初めてのようだ。その上、この世界の馬は筋肉質で、身体も大きい。先ほど怯えなかったのが不思議なくらいである。
 初めての乗馬に、リンが緊張しているのが伝わってくる。

 父性本能、というのだろうか? この子を、あらゆるものから守ってやりたい気になる。
 ウィリアムはまだ17歳だが、流星は子供の一人くらいいてもおかしくはない年齢だったからだろうか。


 当初、リンのことは我が城で大切に保護し、常に私の目の届く範囲に置いておくつもりだったのだが。
 リンはリズリーに居住し、あの荒れた土地を緑地に蘇らせ、そこで畑などを作って生活したい、というのだ。
 そのために、神より”創造”の能力を授かったようだ。


 死の荒野を蘇らせてもらえるのは助かる。
 実に喜ばしいことであるのだが。

 リンが一晩しか我が城に留まらないのは、かなり残念でならなかった。
感想 8

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!