神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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転生国王は神の使いを寵愛する

お宅訪問

 そういえば、有名人のお宅訪問の仕事もしたな、と遠い記憶を思い出しながら、リンが”創造”した家の中に入ると。

 広々とした大理石……いや、これは確か、御影石みかげいしだ。
 御影石の三和土たたきに迎えられ。ウォークインクローゼットと、シューズボックス。段差のないフローリングの床。

「あ、この白い床からは土足厳禁だからね。靴のまま家に入るのは衛生上にもよくないし」
 と、スリッパを出された。

 道にはいろいろな雑菌が落ちてるのに、道を歩いて汚れた靴でそのまま家の中に入るのは不衛生である。浄化魔法を持たない人でも、土足禁止や手洗いなど、衛生に気を配ることで感染リスクを下げることができる、と得意げな顔をして皆に説明しているのが可愛らしい。
 メイヤー師などは感心して聞いている。彼にとっては神の教えにも等しいだろう。

「って訳で、洗面所で手洗いとうがいしてね」
 タオルを渡された。


 *****


 私とメイヤー師は”浄化”を持っているのだが。
 メイヤー師は嬉しげに、いそいそと洗面所へ向かった。

「これはレバー式の蛇口。ここをこっちに回すとお湯が出て、こっちは冷たい水が出るよ」
 リンは皆に、洗面所の使い方を教えている。


 ここの水は、湖からろ過装置付の水道を通したらしいが。
 湯が出る仕組みは、どうなっているのだろう? 電線は無かった。電気も通ってないだろうに。発電機に、ガス湯沸かし器か?

 ……洗面所の横には、大きなドラム式洗濯乾燥機が鎮座している。リンも”浄化”を使えるだろうに。よほど洗濯好きなのだろうか? 床拭きワイパーも設置してある。これはかなり綺麗好きなようだ。
 私は前世では洗濯はほぼクリーニングで済ませていたし、週に二回ほど業者に清掃を頼んでいた。今は城の使用人が掃除も洗濯も全てやっている。わざわざ自分でしたいとは思わない。

 オズワルドは、洗面所の奥にある風呂場の扉を勝手に開け、不思議そうに風呂場を覗き込んでいた。
 この世界の人間には、これが何に使う部屋なのかわからないのだろう。……バスタブは大きなトイレではないぞ。

「うわあ、」
 案の定、シャワーヘッドの真下でレバーを弄り、頭から冷水を浴びている。

 やるだろうな、とは思っていたが。期待を裏切らない男である。


 オズワルドは風魔法でずぶ濡れになった身体を乾かしたが。
 それを見て、リンが残念そうな顔をしていた。……そこのドラム式乾燥機を使いたかったのだろう。とてもわかりやすい。

「そこはお風呂だよ。その、バスタブにお湯を溜めて。シャワーで身体を洗ってから、お湯の溜まったバスタブに浸かるの」
「なんと贅沢な……!」
 確かに、この国の基準ではそうなるだろう。他国の水事情はよく知らないが。


「こちらの扉はトースアムトイレですか?」

 風呂場の隣にトイレがあったが。
 一見、便座の見た目は似ているので、そこはどこも変わらないのか、という反応だった。

 しかし、まだ皆、気づいていないようだが。

 一番の違いは。
 ここのトイレは水洗だが、この世界のトイレは汲み取り式である、というところだ。

 これも、以前からどうにか改革したい点だったが。
 これからは水が豊かになるのだから、是非とも取り入れたいものだ。


 *****


「これは、厨房ですか?」
 家の一番奥にある、一人で使うには広めなアイランドキッチンに目を引かれたオーソンが、リンに訊いた。

「そう。こことそこは、後で説明するよ」
 キッチンと、ウッドデッキのテラスを指差した。


 廊下を挟み、洗面所の向かいにあるのはリビングルームか。
 モダンな絨毯が敷かれ、低いガラステーブルに、椅子とソファーが置かれている。

 一見装飾がなく、地味に見えるソファーだが。
 オーソンが座面を手で押し、そのクッション性に驚いていた。

 我が国のソファーは見た目は豪華だが、いまいち座り心地が悪いのだ。何が違うのだろうか。構造がわかればいいのだが。


 何か物足りないと思えば。通常、テレビなどを置く場所だと思い至った。
 テレビの代わりに日本式の床の間があるのだが。……これは。

「紙の戸とは、豪勢な……、」
「雪見障子……」

 オズワルドは、まず高価である白い紙を贅沢に使用していることに着目していた。
 私は、雪見障子と丸障子に驚いたが。

 やはり、リンは日本人なのか?
 ……いや、まだわからない。あまり期待はしない方がいい。


 ****


 リビングルームの先には、緩やかな階段。

 二階には、客室もあるようだ。奥が寝室で、その手前に書斎。まだ本がない状態だからか、メイヤー師はお仕置き部屋と勘違いしていた。
 ……教会にはそんな部屋があったのか。初めて知った。

 寝室も、色合いはシンプルだ。派手だと落ち着かないのでそれで正解だろうが。
 この家は、全体的に木目やモノトーンで統一されている。

 パキラなどの観葉植物も配置され、まるでモデルルームのようだと感じた。


 ここで、ある意味勇者であるメイヤー師が、リンのベッドにダイブし。
 ごろごろと転がった。

「はあああ、なんと素晴らしい……!」
 家主より先に寝るとは。

「ああ、もうこのまま帰りたくない……」

 などと言い出したので。
 さすがに見過ごせず、メイヤー師の首根っこを掴み、ベッドから引きずり下ろした。

 私も寝てみたかったというのに。全く、困った人だ。
 とりあえず”浄化”しておこう。
感想 8

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