神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、将来を考える

 ウィリアムが手綱を繰るナムグンに乗って、ロチェスターへ向かう。
 向こうで使うものとかの荷物はスキート商会の出張所に預けたので、後で城まで届けてもらうことになってる。

 シロにとっては住み慣れた家から引っ越すことになるけど。俺の腕の中で嬉しそうにハフハフ言ってる。


 湖や畑を見ながら馬を走らせて。
 農作業中の人たちから手を振られて、振り返したり。

 ロチェスターの城壁外に作った貯水池も問題なく、水を巡らせているようだ。
 水道もかなり普及したし。上下水道もほぼ行き渡ったという。


「ああそうだ。君のために、城内に広めの風呂を設置したよ」

 水道工事をする際、かなりお城の大改造をしたみたいだ。
 塔があった場所には、噴水を設置したそうだ。最近ロチェスターには行ってないから知らなかった。


「ベッドも、寝心地良くなってる?」
「勿論だ」

 かなり奮発したって? それは楽しみだ。

 ……何でそんなにやにやしてるんだよ。
 ベッドのことは、変な意味で訊いたんじゃないからな⁉ 全く、えっちなんだから!
 男はみんなスケベなものだって? 俺も男だけど、そんな考えなかったってば!

 ……ウィリアム、笑い過ぎ!


 *****


 ロチェスターの城門前に到着すると。

 城門前には、沢山の人が集まっていた。城壁の上にいるのは、兵士たちかな? 武装してるようには見えないが。魔物の襲撃とか、何かあったのかな?
 普通に、帰還する王様をお出迎えするため、というには居並ぶメンツが妙に偏っているように見えるんだが……。

 よく見れば、スキート商会の店主にラドクリフ。すっかり看板娘が板についたエッダ。冒険者協同組合の職員や、顔見知りの冒険者たち。
 昨日もうちにお祝いに来てくれた、見知った顔が多く並んでいた。


 何だろう? と不思議に思ってたら。
 こちらに気づくなり、皆、嬉しそうに手を振って。

「陛下、無事求婚成功されたようで、おめでとうございます!」
「陛下、リン様、どうかお幸せに!」
「……この場合、ご婚約祝いになるのかね?」
「まあいいや、とにかくおめでとう! 結婚式はいつですか?」
 皆から祝いの声を掛けられた。


 おいおい。
 何で皆、ウィリアムが俺にプロポーズしたことを知ってるの? 昨日の今日だよ⁉ ここには居ないけど、オズワルドかオーソンの仕業か? それともプレストン?


 *****


 魔物との長期にわたる戦いで疲弊したキングスレイ王国を立ち直らせ、前以上に発展させた若く美しい国王陛下が、辺境リズリーを再生し、そこに住み着いた少年にご執心だという噂は、ここロチェスターではかなり有名な話だったようだ。

 そりゃそうか。
 ウィリアム、暇さえあればこっちに通って来てたもんな。よく仕事する暇あったなってレベルで。


 皆して、俺が15歳……成人になったらすぐにウィリアムから求婚されるだろう、と当然のように思っていて。二人の恋の行方をあたたかく見守っていたそうだ。
 誕生日の宴会を早めに切り上げて帰ったのも、これから大事なプロポーズを控えているだろうウィリアムに気を遣ってのことだった……らしい。

 そんな空気、全然気が付いてなかったよ⁉


 そして。
 皆から、俺がウィリアムのことを好きだということは知ってた、と言われた。

 プレストンとかが俺に触れようとした時は思いっきり避けてたけど。ウィリアムの場合はノーガードで、べったりくっつかれていても嬉しそうだったって?
 え? 俺、そんなにあからさまな態度だった?

 でも俺、別にプレストンのことが嫌いなわけじゃないよ? 子供じゃないのに、いい歳した男からベタベタくっつかれるのが嫌だったからで。誰が相手でもそんな感じ。

 唯一、ウィリアムだけが、特別だったんだ。

 さすが抱かれたい男ナンバーワン常連オーラが出てるというか。抱き締められると、何というか安心感があるし。いい匂いするし。
 全身芸術品みたいに完璧な造作で、見ててうっとりしちゃうし。

 ……そうだね! 俺ってばウィリアムのこと、大好きすぎ!


 *****


 っていうか。
 俺、男なのに。結婚式はいつだとか。普通に結婚を前提にお祝いされてるんだけど。

 男同士でお世継ぎとかどうするつもりなのか、ウィリアムに訊いてみたら。
 この世界は、同性……男同士や女同士で結婚しても、普通に子供が作れるという。

 ……初耳なんですが?

「ああ、すまなかった。そういえば君にそのことを説明するのを忘れていた。では、それが常識だったのでね」
 15歳までは普通にここで過ごしていたのもあって、たまに元の世界での常識との違いを忘れてしまうようだ。

「ええっ、同性同士で子供? どうやって? 魔法で?」


 ウィリアムの説明によると。
 愛し合う二人が、教会で子供が欲しい、と祈りを捧げれば、すぐにコウノトリならぬ狛犬プラ・シンが、二人の遺伝子を持った赤ん坊を届けてくれるという。

 ここの神様、サービス精神旺盛すぎじゃないか?


「じゃあ、俺たちの場合、神様にお願いしたら、シロが赤ん坊を届けてくれるのかな?」

「キャウン」
 嬉しそうに、任せろ、とばかりにいい返事をして。シロを抱いている腕を、もふもふな手で、たしたし叩かれる。
 かなり張り切ってる様子だけど。俺たちまだ、結婚もしてないからな?

 そうかー。
 すごいな異世界。


 ……この世界において、生殖器の存在意義について考えるのは無意味だろう。野暮というものだ。
 だって、ウィリアムとするの、すごく気持ち良かったし。


 *****


「そうなんだ。ウィルは王様だから。世継ぎが必要だと思って。”創造”でお腹に子宮とか作るべきかどうか悩んでたけど。お祈りすれば、出来るのか……」

「そうか。私のために、そこまで考えてくれていたのか。……私は、本当に幸せ者だね」
 後ろから、ぎゅっと抱き締められる。


「おーい、独り身には目の毒だよー」
「お熱いねえ」
 冷やかすような声が上がって。

 ここは城門前で。
 沢山の人目があったことに、今更ながら気づいたのだった。


 うわあ、恥ずかしい!
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