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幕間Ⅶ
ブルームーンと流星
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リンが珍しく”創造”の力を使ったと思えば。
ビールやウイスキーなどの酒だけでなく、リキュールを何種類か出していた。ジュース、ソーダ水と水、氷も。
そういえば、カクテルはまだ無かった。
見ていたら、クレーム・ド・カカオ、グリーンペパーミント、フレッシュクリームを同量入れて、シェイカーで振っている。グラスホッパーだな。
ミントチョコのような味のするカクテルである。なかなか手慣れている。
「乾杯、」
リンがカクテルグラスを掲げると。
「成人おめでとう!」
皆がそれに応えて祝いの言葉を述べる。
「ん、美味しい」
リンは嬉しそうにカクテルグラスを傾けた。
*****
「可愛いバーテンさん、私にも何か一杯ご馳走してくれないかね?」
声を掛けると。
見れば、リンのカクテルグラスはもう空だった。なかなかの酒豪だったか?
シェイクしたカクテルは、なるべく温くならないうちに素早く飲むのが鉄則だからかもしれない。
「ジンライムとかバイオレットフィズならすぐ出来るよ」
「では、バイオレットフィズを」
近くにいた皆は、首を傾げていた。こちらにはどれも存在しないものだ。
二人だけの暗号のようで、少々小気味いい。
リンはトールグラスに氷を入れ、ジンとパルフェ・タムールを無糖炭酸水で割り、レモンジュースとシュガーシロップを少量入れ、マドラーで軽く混ぜた。
やはり手際がいい。ゆっくりしていると、炭酸が飛んでしまうのだ。
「はいどうぞ、」
グラスをこちらへ滑らせた。
「ありがとう。……うん、美味しいよ」
華やかな菫の香り。味もちょうどいい。
分量通り入れても何故か美味くないカクテルは多くあるが。リンは料理だけでなく、こちらのセンスも抜群のようだ。
*****
「では、お返しに、」
シェイカーとカクテルグラスを”浄化”し。
パルフェ・タムールとジン、レモン果汁を入れて振る。ブルームーンである。
流星がバーテンダーの役をした時に、格好だけでなく、味も最高レベルを、と猛練習したものだ。
リンは私がシェイカーを振るのを、うっとりと見ている。
中身をカクテルグラスに注ぎ、花瓶の蘭の花を添える。
「今宵の月のような君へ」
と、ウインクをし。気障っぽくカクテルグラスを滑らせた。
格好つけるな、と言われると思ったが。リンは頬を染めながらカクテルグラスを傾けた。
「格好いい上に、味もいいとか……!」
少々悔しそうだった。
そうか。格好いいと思ってくれたのか。それは照れる。
様子を見ていたオズワルドらが、私たちの真似をして、色々なカクテルに挑戦しだした。
手探りで作るので、レシピも滅茶苦茶である。
だが、物凄くまずいものだけでなく、何故か奇跡のように美味いカクテルが出来上がったりもした。
”鑑定”すれば判明するだろうが。
こういうものは、その場限りである方が良いだろう。
*****
夕食の時間も過ぎ、ビールやウイスキーの酒樽が空になった頃。
酒宴は解散になった。
皆、テーブルの上の皿やコップを片付けている。
スペンサー夫妻に、頑張ってくださいね、と言われ。
皆が私に気を遣って、早めに酒宴を切り上げたのだと知った。
皆、気付いていたのだろうか。リンが15歳になったら、告白しようと思っていたことを。
二人きりになり、告白を断られた場合、かなり気まずい。
帰ろうとするオズワルドとオーソンを引き留めた。
彼らにも聴かれるのは恥ずかしいが。酔った勢いで行こう。
「では、そろそろリンのお願いを叶えてあげようか」
アコースティックギターを出してもらった。
細部がわからなくても大丈夫だと神が言っていた通り、ちゃんと音も問題ない。
さすがに日本語では歌えないので、こちらの言葉にして歌う。
流星群の降る夜。”僕”は大好きな”君”を海へ連れ出して。二人だけしかいない砂浜に寝転んで、星空を眺めるという歌だ。
私の場合、その相手は、リンである。リンを見て。リンだけに向けて、歌う。
君を愛してる。
他の誰かと比べようもないほど。君だけを。
*****
リンは、真っ赤になって。涙を浮かべて聴いている。
私と同じ想いを、君も抱いてくれればいいけれど。
そんな奇跡のようなことが起こる確率は、どのくらいなのだろう。
今、流れ星が落ちるくらいか? この世界では、一度も見たことはないが。
「……星降る夜に、君と。永遠に……」
歌い終わり。最後のワンフレーズを弾いたその時。
目の端に、一瞬。流れ星が見えた。
ビールやウイスキーなどの酒だけでなく、リキュールを何種類か出していた。ジュース、ソーダ水と水、氷も。
そういえば、カクテルはまだ無かった。
見ていたら、クレーム・ド・カカオ、グリーンペパーミント、フレッシュクリームを同量入れて、シェイカーで振っている。グラスホッパーだな。
ミントチョコのような味のするカクテルである。なかなか手慣れている。
「乾杯、」
リンがカクテルグラスを掲げると。
「成人おめでとう!」
皆がそれに応えて祝いの言葉を述べる。
「ん、美味しい」
リンは嬉しそうにカクテルグラスを傾けた。
*****
「可愛いバーテンさん、私にも何か一杯ご馳走してくれないかね?」
声を掛けると。
見れば、リンのカクテルグラスはもう空だった。なかなかの酒豪だったか?
シェイクしたカクテルは、なるべく温くならないうちに素早く飲むのが鉄則だからかもしれない。
「ジンライムとかバイオレットフィズならすぐ出来るよ」
「では、バイオレットフィズを」
近くにいた皆は、首を傾げていた。こちらにはどれも存在しないものだ。
二人だけの暗号のようで、少々小気味いい。
リンはトールグラスに氷を入れ、ジンとパルフェ・タムールを無糖炭酸水で割り、レモンジュースとシュガーシロップを少量入れ、マドラーで軽く混ぜた。
やはり手際がいい。ゆっくりしていると、炭酸が飛んでしまうのだ。
「はいどうぞ、」
グラスをこちらへ滑らせた。
「ありがとう。……うん、美味しいよ」
華やかな菫の香り。味もちょうどいい。
分量通り入れても何故か美味くないカクテルは多くあるが。リンは料理だけでなく、こちらのセンスも抜群のようだ。
*****
「では、お返しに、」
シェイカーとカクテルグラスを”浄化”し。
パルフェ・タムールとジン、レモン果汁を入れて振る。ブルームーンである。
流星がバーテンダーの役をした時に、格好だけでなく、味も最高レベルを、と猛練習したものだ。
リンは私がシェイカーを振るのを、うっとりと見ている。
中身をカクテルグラスに注ぎ、花瓶の蘭の花を添える。
「今宵の月のような君へ」
と、ウインクをし。気障っぽくカクテルグラスを滑らせた。
格好つけるな、と言われると思ったが。リンは頬を染めながらカクテルグラスを傾けた。
「格好いい上に、味もいいとか……!」
少々悔しそうだった。
そうか。格好いいと思ってくれたのか。それは照れる。
様子を見ていたオズワルドらが、私たちの真似をして、色々なカクテルに挑戦しだした。
手探りで作るので、レシピも滅茶苦茶である。
だが、物凄くまずいものだけでなく、何故か奇跡のように美味いカクテルが出来上がったりもした。
”鑑定”すれば判明するだろうが。
こういうものは、その場限りである方が良いだろう。
*****
夕食の時間も過ぎ、ビールやウイスキーの酒樽が空になった頃。
酒宴は解散になった。
皆、テーブルの上の皿やコップを片付けている。
スペンサー夫妻に、頑張ってくださいね、と言われ。
皆が私に気を遣って、早めに酒宴を切り上げたのだと知った。
皆、気付いていたのだろうか。リンが15歳になったら、告白しようと思っていたことを。
二人きりになり、告白を断られた場合、かなり気まずい。
帰ろうとするオズワルドとオーソンを引き留めた。
彼らにも聴かれるのは恥ずかしいが。酔った勢いで行こう。
「では、そろそろリンのお願いを叶えてあげようか」
アコースティックギターを出してもらった。
細部がわからなくても大丈夫だと神が言っていた通り、ちゃんと音も問題ない。
さすがに日本語では歌えないので、こちらの言葉にして歌う。
流星群の降る夜。”僕”は大好きな”君”を海へ連れ出して。二人だけしかいない砂浜に寝転んで、星空を眺めるという歌だ。
私の場合、その相手は、リンである。リンを見て。リンだけに向けて、歌う。
君を愛してる。
他の誰かと比べようもないほど。君だけを。
*****
リンは、真っ赤になって。涙を浮かべて聴いている。
私と同じ想いを、君も抱いてくれればいいけれど。
そんな奇跡のようなことが起こる確率は、どのくらいなのだろう。
今、流れ星が落ちるくらいか? この世界では、一度も見たことはないが。
「……星降る夜に、君と。永遠に……」
歌い終わり。最後のワンフレーズを弾いたその時。
目の端に、一瞬。流れ星が見えた。
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