25 / 65
キノコマスター、結婚する。
結婚式前日
しおりを挟む
舗装された道を、婚礼の馬車が走る。
通りかかる町では、沿道に町民がずらりと並んで手を振っている。
花を撒いてる人もいた。
バルはそれに、笑顔で応えてる。
笑顔を見た女性が卒倒しそうになってた。バル、かっこいいもんなあ。
その上、最近また、男の色気もアップしたし。
普段は”静かの森”の城で隠居してるようなものらしいけど、世界一の魔術師でもある国王の人気は、今でも絶大なものだ。
旱魃とか、災害でピンチな時に、国王自ら助けに駆けつけてくれるんだ。
まさにヒーロー。生きる伝説みたいなものだ。
俺と逢ったのも、”静かの森”を荒らすやつがいないか、バルが見回りに出たからだし。
護衛もつけず、一人で何でもやっちゃうんだから。
王様って、王座でふんぞり返ってるイメージだったよ。
でも、こんなサービス精神旺盛な国王って。
バルの他に、世界のどこにもいないんじゃないかな?
*****
どの町の沿道でも、国旗とかを振りながら、町民達の歓迎を受けた。
みんなバルが大好きなんだ。
結婚おめでとう、と。幸せを祈ってくれている。
……あ、あの子。
木に登ってこっちを見てるけど。危なっかしいなあ。
と思っていたら。
案の定、足を滑らせて、頭から落ちた。
バルは反対側を見ていて気付いてない。
「ブルブハス!」
咄嗟に唱えたのが、間に合った。
泡状の、空気のクッションを発生させる魔法だ。
子供は泡の上できょとんとしている。
怪我はないようだ。良かった。
「勇者様が、木から落ちた子供を助けてくださった……」
「おお、何と慈悲深い……」
「勇者様ばんざい!」
国王様コールだけでなく、勇者様コールまでされてしまった。
そんな、褒め称えられるようなことはしてないけど。
町の人達の声で。
何が起こったか、バルも気付いたらしい。
今使った魔法は、ファビオのお祖母ちゃんの魔法書に載ってたやつだけど。
バルは今回は仕方ない、という顔をして。
「よくやってくれた。祝いの場で、怪我人を出さずに済んだようだ」
俺の頭を撫でて、軽く頬にキスすると。
誰もが見惚れるような、蕩けそうに優しい微笑みを浮かべた。
お幸せにって? もう充分幸せだよ。
ありがとう。
*****
夜も更けて。
ようやく馬車は王都に到着した。
途中で馬も、2回ほど交代してた。
笑顔を絶やさず御者役を務めてくれていたエリアスも大変だっただろう。
「お疲れ様~。……クラシオン」
エリアスの肩を揉みながら、回復魔法を唱えた。
覚えたてで、まだレベルが低いから、大した回復量じゃないけど。
「このくらい、寝れば治りますのに……。お気遣い、ありがとうございます」
「お礼とかいいよ。俺もレベル上げないとだから。積極的に使わせて欲しいんだ。協力してくれると嬉しい」
魔法の練習中だということは話してあるので。
なら気軽に実験台にお使い下さい、と言って笑った。
バルがコホン、と咳払いをして。ちらちらとこちらを見ながら。
「私も、座りっぱなしで、少々腰が痛いかな」
わざとらしすぎる態度に。
エリアスがぶはっ、と吹き出した。
エリアスが思わず笑っちゃうのもわかる気がする。
バルってこういうとこ、可愛いよな?
「はい、クラシオン」
「ありがとう。ああ。優輝の優しさで細胞の隅々まで喜び、力がわきあがるようだ……」
大袈裟だよ。
*****
「お待ちしておりました、陛下。……こちらが花嫁の勇者殿ですか? ようこそ王都へ」
恰幅のいい、ヒゲのおじさんがやって来た。
絵本とかに出てくる王様みたいな、立派な格好をしている。
アダン=ウルタードって名前の王族らしい。
バルの代わりに王都にいて、雑務をこなしてくれているそうだ。
手に余るような災害などが起こると、バルに連絡して、助けを求めているとか。
つまり、王様代理なのかな?
格好はこっちの方が王様っぽい。バルは一見、黒衣の騎士だもんな。
「ああ、私の可愛い子猫ちゃん、優輝だ」
バルは俺の肩を抱き寄せ、誇らしげに言った。
いい加減、”可愛い子猫ちゃん”呼ばわりにも慣れないといけないのだろうか。慣れる気がしない。
「これは可愛らしい。……結婚出来る年齢ですよね?」
俺の顔をちらりと見て。
「こう見えて、優輝は17歳だぞ? 異世界人ゆえ、こちらの者とは身体の大きさが違うようだ」
「それはうらやましいことで……」
うらやましいって、どういうことかと思ったら。
どうやらこの世界では、女性は小さければ小さいほどモテるらしい。
俺は女性じゃないけど。
どうして背が小さいほうがいいんだろ?
巨人の国なのに。
「ああ、そうでした。屋敷の方に、陛下のお客人がお見えです」
「客? ……誰だ?」
陛下もご存知の方ですよ、とかいいつつ。
アダンに王都のお屋敷へ案内された。
*****
屋敷の一室にいたのは。
自称、旅の魔法使い。
俺をこの異世界に召喚した上級魔道士、ウィルフレドだった。
「やあ、遅かったね」
ウィルフレドは優雅に紅茶を飲んでいた。
「フレッド? どうしてここに……」
国王と勇者結婚、と書かれた号外のチラシをひらひらさせて。
「古い友人が結婚するって聞いてさ。お祝いに来たに決まってるじゃないか。それと、忠告をしに」
「……忠告?」
バルはいぶかしげな顔をした。
通りかかる町では、沿道に町民がずらりと並んで手を振っている。
花を撒いてる人もいた。
バルはそれに、笑顔で応えてる。
笑顔を見た女性が卒倒しそうになってた。バル、かっこいいもんなあ。
その上、最近また、男の色気もアップしたし。
普段は”静かの森”の城で隠居してるようなものらしいけど、世界一の魔術師でもある国王の人気は、今でも絶大なものだ。
旱魃とか、災害でピンチな時に、国王自ら助けに駆けつけてくれるんだ。
まさにヒーロー。生きる伝説みたいなものだ。
俺と逢ったのも、”静かの森”を荒らすやつがいないか、バルが見回りに出たからだし。
護衛もつけず、一人で何でもやっちゃうんだから。
王様って、王座でふんぞり返ってるイメージだったよ。
でも、こんなサービス精神旺盛な国王って。
バルの他に、世界のどこにもいないんじゃないかな?
*****
どの町の沿道でも、国旗とかを振りながら、町民達の歓迎を受けた。
みんなバルが大好きなんだ。
結婚おめでとう、と。幸せを祈ってくれている。
……あ、あの子。
木に登ってこっちを見てるけど。危なっかしいなあ。
と思っていたら。
案の定、足を滑らせて、頭から落ちた。
バルは反対側を見ていて気付いてない。
「ブルブハス!」
咄嗟に唱えたのが、間に合った。
泡状の、空気のクッションを発生させる魔法だ。
子供は泡の上できょとんとしている。
怪我はないようだ。良かった。
「勇者様が、木から落ちた子供を助けてくださった……」
「おお、何と慈悲深い……」
「勇者様ばんざい!」
国王様コールだけでなく、勇者様コールまでされてしまった。
そんな、褒め称えられるようなことはしてないけど。
町の人達の声で。
何が起こったか、バルも気付いたらしい。
今使った魔法は、ファビオのお祖母ちゃんの魔法書に載ってたやつだけど。
バルは今回は仕方ない、という顔をして。
「よくやってくれた。祝いの場で、怪我人を出さずに済んだようだ」
俺の頭を撫でて、軽く頬にキスすると。
誰もが見惚れるような、蕩けそうに優しい微笑みを浮かべた。
お幸せにって? もう充分幸せだよ。
ありがとう。
*****
夜も更けて。
ようやく馬車は王都に到着した。
途中で馬も、2回ほど交代してた。
笑顔を絶やさず御者役を務めてくれていたエリアスも大変だっただろう。
「お疲れ様~。……クラシオン」
エリアスの肩を揉みながら、回復魔法を唱えた。
覚えたてで、まだレベルが低いから、大した回復量じゃないけど。
「このくらい、寝れば治りますのに……。お気遣い、ありがとうございます」
「お礼とかいいよ。俺もレベル上げないとだから。積極的に使わせて欲しいんだ。協力してくれると嬉しい」
魔法の練習中だということは話してあるので。
なら気軽に実験台にお使い下さい、と言って笑った。
バルがコホン、と咳払いをして。ちらちらとこちらを見ながら。
「私も、座りっぱなしで、少々腰が痛いかな」
わざとらしすぎる態度に。
エリアスがぶはっ、と吹き出した。
エリアスが思わず笑っちゃうのもわかる気がする。
バルってこういうとこ、可愛いよな?
「はい、クラシオン」
「ありがとう。ああ。優輝の優しさで細胞の隅々まで喜び、力がわきあがるようだ……」
大袈裟だよ。
*****
「お待ちしておりました、陛下。……こちらが花嫁の勇者殿ですか? ようこそ王都へ」
恰幅のいい、ヒゲのおじさんがやって来た。
絵本とかに出てくる王様みたいな、立派な格好をしている。
アダン=ウルタードって名前の王族らしい。
バルの代わりに王都にいて、雑務をこなしてくれているそうだ。
手に余るような災害などが起こると、バルに連絡して、助けを求めているとか。
つまり、王様代理なのかな?
格好はこっちの方が王様っぽい。バルは一見、黒衣の騎士だもんな。
「ああ、私の可愛い子猫ちゃん、優輝だ」
バルは俺の肩を抱き寄せ、誇らしげに言った。
いい加減、”可愛い子猫ちゃん”呼ばわりにも慣れないといけないのだろうか。慣れる気がしない。
「これは可愛らしい。……結婚出来る年齢ですよね?」
俺の顔をちらりと見て。
「こう見えて、優輝は17歳だぞ? 異世界人ゆえ、こちらの者とは身体の大きさが違うようだ」
「それはうらやましいことで……」
うらやましいって、どういうことかと思ったら。
どうやらこの世界では、女性は小さければ小さいほどモテるらしい。
俺は女性じゃないけど。
どうして背が小さいほうがいいんだろ?
巨人の国なのに。
「ああ、そうでした。屋敷の方に、陛下のお客人がお見えです」
「客? ……誰だ?」
陛下もご存知の方ですよ、とかいいつつ。
アダンに王都のお屋敷へ案内された。
*****
屋敷の一室にいたのは。
自称、旅の魔法使い。
俺をこの異世界に召喚した上級魔道士、ウィルフレドだった。
「やあ、遅かったね」
ウィルフレドは優雅に紅茶を飲んでいた。
「フレッド? どうしてここに……」
国王と勇者結婚、と書かれた号外のチラシをひらひらさせて。
「古い友人が結婚するって聞いてさ。お祝いに来たに決まってるじゃないか。それと、忠告をしに」
「……忠告?」
バルはいぶかしげな顔をした。
36
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。
篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は?
最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか?
人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。
よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。
ハッピーエンド確定
※は性的描写あり
【完結】2021/10/31
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ
2021/10/03 エブリスタ、BLカテゴリー 1位
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる