巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

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キノコマスター、結婚する。

結婚式前日

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舗装された道を、婚礼の馬車が走る。

通りかかる町では、沿道に町民がずらりと並んで手を振っている。
花を撒いてる人もいた。

バルはそれに、笑顔で応えてる。
笑顔を見た女性が卒倒しそうになってた。バル、かっこいいもんなあ。

その上、最近また、男の色気もアップしたし。


普段は”静かの森”の城で隠居してるようなものらしいけど、世界一の魔術師でもある国王の人気は、今でも絶大なものだ。
旱魃とか、災害でピンチな時に、国王自ら助けに駆けつけてくれるんだ。

まさにヒーロー。生きる伝説みたいなものだ。

俺と逢ったのも、”静かの森”を荒らすやつがいないか、バルが見回りに出たからだし。
護衛もつけず、一人で何でもやっちゃうんだから。

王様って、王座でふんぞり返ってるイメージだったよ。

でも、こんなサービス精神旺盛な国王って。
バルの他に、世界のどこにもいないんじゃないかな?


*****


どの町の沿道でも、国旗とかを振りながら、町民達の歓迎を受けた。

みんなバルが大好きなんだ。
結婚おめでとう、と。幸せを祈ってくれている。


……あ、あの子。
木に登ってこっちを見てるけど。危なっかしいなあ。

と思っていたら。
案の定、足を滑らせて、頭から落ちた。

バルは反対側を見ていて気付いてない。


「ブルブハス!」
咄嗟に唱えたのが、間に合った。

泡状の、空気のクッションを発生させる魔法だ。

子供は泡の上できょとんとしている。
怪我はないようだ。良かった。


「勇者様が、木から落ちた子供を助けてくださった……」
「おお、何と慈悲深い……」
「勇者様ばんざい!」

国王様コールだけでなく、勇者様コールまでされてしまった。
そんな、褒め称えられるようなことはしてないけど。

町の人達の声で。
何が起こったか、バルも気付いたらしい。

今使った魔法は、ファビオのお祖母ちゃんの魔法書に載ってたやつだけど。
バルは今回は仕方ない、という顔をして。

「よくやってくれた。祝いの場で、怪我人を出さずに済んだようだ」

俺の頭を撫でて、軽く頬にキスすると。
誰もが見惚れるような、蕩けそうに優しい微笑みを浮かべた。


お幸せにって? もう充分幸せだよ。
ありがとう。


*****


夜も更けて。
ようやく馬車は王都に到着した。

途中で馬も、2回ほど交代してた。
笑顔を絶やさず御者役を務めてくれていたエリアスも大変だっただろう。


「お疲れ様~。……クラシオン」
エリアスの肩を揉みながら、回復魔法を唱えた。

覚えたてで、まだレベルが低いから、大した回復量じゃないけど。

「このくらい、寝れば治りますのに……。お気遣い、ありがとうございます」
「お礼とかいいよ。俺もレベル上げないとだから。積極的に使わせて欲しいんだ。協力してくれると嬉しい」

魔法の練習中だということは話してあるので。
なら気軽に実験台にお使い下さい、と言って笑った。


バルがコホン、と咳払いをして。ちらちらとこちらを見ながら。
「私も、座りっぱなしで、少々腰が痛いかな」

わざとらしすぎる態度に。
エリアスがぶはっ、と吹き出した。

エリアスが思わず笑っちゃうのもわかる気がする。
バルってこういうとこ、可愛いよな?


「はい、クラシオン」
「ありがとう。ああ。優輝の優しさで細胞の隅々まで喜び、力がわきあがるようだ……」

大袈裟だよ。


*****


「お待ちしておりました、陛下。……こちらが花嫁の勇者殿ですか? ようこそ王都へ」

恰幅のいい、ヒゲのおじさんがやって来た。
絵本とかに出てくる王様みたいな、立派な格好をしている。

アダン=ウルタードって名前の王族らしい。

バルの代わりに王都にいて、雑務をこなしてくれているそうだ。
手に余るような災害などが起こると、バルに連絡して、助けを求めているとか。

つまり、王様代理なのかな?
格好はこっちの方が王様っぽい。バルは一見、黒衣の騎士だもんな。


「ああ、私の可愛い子猫ちゃん、優輝だ」
バルは俺の肩を抱き寄せ、誇らしげに言った。

いい加減、”可愛い子猫ちゃん”呼ばわりにも慣れないといけないのだろうか。慣れる気がしない。

「これは可愛らしい。……結婚出来る年齢ですよね?」
俺の顔をちらりと見て。

「こう見えて、優輝は17歳だぞ? 異世界人ゆえ、こちらの者とは身体の大きさが違うようだ」
「それはうらやましいことで……」


うらやましいって、どういうことかと思ったら。
どうやらこの世界では、女性は小さければ小さいほどモテるらしい。

俺は女性じゃないけど。
どうして背が小さいほうがいいんだろ?

巨人の国なのに。


「ああ、そうでした。屋敷の方に、陛下のお客人がお見えです」
「客? ……誰だ?」

陛下もご存知の方ですよ、とかいいつつ。
アダンに王都のお屋敷へ案内された。


*****


屋敷の一室にいたのは。

自称、旅の魔法使い。
俺をこの異世界に召喚した上級魔道士、ウィルフレドだった。


「やあ、遅かったね」
ウィルフレドは優雅に紅茶を飲んでいた。

「フレッド? どうしてここに……」

国王と勇者結婚、と書かれた号外のチラシをひらひらさせて。
「古い友人が結婚するって聞いてさ。お祝いに来たに決まってるじゃないか。それと、をしに」

「……忠告?」
バルはいぶかしげな顔をした。
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