巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

文字の大きさ
53 / 65
異世界の王様、日本へ行く。

王様、日本の学校へ

しおりを挟む
バスを降りて。
駅の切符売り場で、都営地下鉄と電車の一日乗車券も買って。お小遣いまでくれた。

「これで、都内ならだいたい回れるだろう。楽しんでもらいなさい」
おお、親父太っ腹! 痩せてるけど。

「行ってらっしゃい。仕事頑張れよー」
「お気遣いありがとうございます。お気をつけて」

親父とは駅の改札でお別れだ。


とりあえず、俺の学校へ行くことになった。
異世界には普通の学校がないから、見てみたいんだそうだ。

電車内でも、バルは注目の的だった。

でかいのが並んでるのもあって、他の車両からも視線を感じる。
芸能人より美形だしな。

でも、高貴なオーラのせいか、近寄らず、遠巻きに見てる感じだった。


*****


「あそこに見えるのが、うちの学校だよ」

同じ通りに、小学校から中学校、向かい側に高校と大学が並んでる。
頭のいい外部生を取らなきゃ偏差値が下がりすぎるという、ダメダメな学校である。

「そっちが小学校と中学校、反対側が俺が通ってる高校と、大学」
俺が何となく行くだろうな、と考えてた大学。

もう、その予定は無くなったけど。


「あれ? 小鳥遊パイセンじゃないっすか。忘れモンっすか?」
部活の後輩に声を掛けられた。

夏休み初日だというのに。部活のため、下級生が登校してる。お疲れさんだ。
三年はもう引退したけど。

「いや、案内」
後ろにいるバルを示して言う。

「うお、パイセンのおツレさんだったんすね。学校のお客さんすか? もしかして、新しい理事長とか?」

まあ、俺の知り合いっていうより、見るからに通りがかりのセレブな感じだよな。
王様だから正解だ。

「いや、俺の……、」
後ろのバルを見て。

「新しく、家族になる人」

うん、嘘は言っていない。
俺の結婚相手だし。


「パイセンお姉さんとかいましたっけ? まあいいや、ごゆっくり!」
後輩は、鞄をぶん回しながら学校に入っていった。

「随分と面妖な言葉遣いをする子供だが。知り合いかな?」
「面妖って……。部活の後輩だけど。……ええと、学校では何かひとつクラブに入らなきゃいけなくて。俺は背が高いから、バレーボール部に誘われたんだ。で、その後輩」

文化部とか運動部、委員とか。色々な係があることを説明した。

そして体育会系は、謎の挨拶が存在するのだ。
シャース、とかアザッス、とか。省略し過ぎてわけがわからなくなってる。


*****


「おう、小鳥遊じゃないか。夏休みなのに、こんな早くからどうした? 補習か?」
自転車に乗ってきた顧問の先生が、俺の前で止まった。

部活があるから、先生も夏休みなのに休めないとか大変だなあ。

「あ、先生おはよーございまーす。あのね、この人、俺の家族になる人で、日本の学校を見てみたいって言うんだけど。案内していい?」
バルを手で示すと。

先生はバルを見て、目を丸くした。
見るからに育った世界が違いそう? そりゃそうだ。異世界の王様だもん。

「おお、いいんじゃね? 事務室に言っとくから、来賓用の入校届け出しとけよ」
「はーい」

裏も取らないで、セキュリティガバガバ過ぎるって?
そこが我が校のいいところだ。


事務室の窓口で名前を書いて、入校証を受け取った。

幸い、というか。
セントロ王国の文字はアルファベットに似てたから、外国の人ね、で済まされた。

女性事務員はバルの美貌に見惚れて、手が止まってしまっている。
そうそう、驚くほど美形だよなあ。


「ざっと校内案内するね!」

来客用スリッパを履いたバルの手を引いて。
とりあえず、俺の教室まで行った。


夏休み初日の教室は、当然ながら、誰もいない。

「ここ、一番後ろが俺の席だよ」
もうずいぶん懐かしく感じる、俺の席に座る。

背が高いと、目立つから。居眠りも出来ないんだよな。
早弁も出来ない。


バルにとっては小さい机や椅子を、面白そうに見ている。
小学生の机とかを見るような感覚かなあ。


*****


「前に話してくれた話は、ここで学んだのか」


ああ、アメリカの植民地とかの話かな? あれは中学の時の歴史マニアな先生に聞いた話なんだけど。
あんまり変わらないか。

そんなもん、と頷いて。

あ、いけね。教科書やノート、教室のロッカーに置きっぱだった。
回収しておこう。

卒業までに、色々勉強しとかないと。何が役に立つかわかんないしな。


「これが三年生の教科書だよ」
ついでにバルに教科書を見せた。パラパラとめくって。

「ほう、随分色々学ぶのだな。基礎教養としては多すぎでは?」

向こうの本の方がぶ厚いように見えたけど。
あっちじゃ魔法使いとか騎士とか聖職者はそれぞれ専門の教育を受けるから、学ぶ内容も職種によって違うんだ。

一般の国民は日常生活に困らない程度の言葉や、一般常識程度の教育しかされない。
それで充分だから。

学びたい人には門戸が開かれてるそうだけど。

「無駄と言えば無駄だよね。でも、日本じゃ成人は二十歳からだし。高校のうちにやりたい仕事とか将来を考えてる人が多いよ。それと、人によっては高校に行かないで働いてたり、働きながら夜間学校に通ってるのもいる」
ウチは恵まれている方なんだろう。

こんなちゃらんぽらんでも大学まで行ける学校に入れたし。
親父には感謝だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します

市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。 四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。 だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。 自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。 ※性描写あり。他サイトにも掲載しています。

限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙
BL
限界ヲタクだった来栖翔太はトラックに撥ねられ、肌色の本を撒き散らして無惨に死んだ。だが、異世界で美少年のクリスティアン王子として転生する。ヲタクな自分を捨て、立派な王様になるべく努力した王子だったが。近衛騎士のアルベルトが勇者にクラスチェンジし、竜を退治した褒美として結婚するように脅され……。 

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。 

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

処理中です...