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異世界の王様、日本へ行く。
王様、日本の学校へ
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バスを降りて。
駅の切符売り場で、都営地下鉄と電車の一日乗車券も買って。お小遣いまでくれた。
「これで、都内ならだいたい回れるだろう。楽しんでもらいなさい」
おお、親父太っ腹! 痩せてるけど。
「行ってらっしゃい。仕事頑張れよー」
「お気遣いありがとうございます。お気をつけて」
親父とは駅の改札でお別れだ。
とりあえず、俺の学校へ行くことになった。
異世界には普通の学校がないから、見てみたいんだそうだ。
電車内でも、バルは注目の的だった。
でかいのが並んでるのもあって、他の車両からも視線を感じる。
芸能人より美形だしな。
でも、高貴なオーラのせいか、近寄らず、遠巻きに見てる感じだった。
*****
「あそこに見えるのが、うちの学校だよ」
同じ通りに、小学校から中学校、向かい側に高校と大学が並んでる。
頭のいい外部生を取らなきゃ偏差値が下がりすぎるという、ダメダメな学校である。
「そっちが小学校と中学校、反対側が俺が通ってる高校と、大学」
俺が何となく行くだろうな、と考えてた大学。
もう、その予定は無くなったけど。
「あれ? 小鳥遊パイセンじゃないっすか。忘れモンっすか?」
部活の後輩に声を掛けられた。
夏休み初日だというのに。部活のため、下級生が登校してる。お疲れさんだ。
三年はもう引退したけど。
「いや、案内」
後ろにいるバルを示して言う。
「うお、パイセンのおツレさんだったんすね。学校のお客さんすか? もしかして、新しい理事長とか?」
まあ、俺の知り合いっていうより、見るからに通りがかりのセレブな感じだよな。
王様だから正解だ。
「いや、俺の……、」
後ろのバルを見て。
「新しく、家族になる人」
うん、嘘は言っていない。
俺の結婚相手だし。
「パイセンお姉さんとかいましたっけ? まあいいや、ごゆっくり!」
後輩は、鞄をぶん回しながら学校に入っていった。
「随分と面妖な言葉遣いをする子供だが。知り合いかな?」
「面妖って……。部活の後輩だけど。……ええと、学校では何かひとつクラブに入らなきゃいけなくて。俺は背が高いから、バレーボール部に誘われたんだ。で、その後輩」
文化部とか運動部、委員とか。色々な係があることを説明した。
そして体育会系は、謎の挨拶が存在するのだ。
シャース、とかアザッス、とか。省略し過ぎてわけがわからなくなってる。
*****
「おう、小鳥遊じゃないか。夏休みなのに、こんな早くからどうした? 補習か?」
自転車に乗ってきた顧問の先生が、俺の前で止まった。
部活があるから、先生も夏休みなのに休めないとか大変だなあ。
「あ、先生おはよーございまーす。あのね、この人、俺の家族になる人で、日本の学校を見てみたいって言うんだけど。案内していい?」
バルを手で示すと。
先生はバルを見て、目を丸くした。
見るからに育った世界が違いそう? そりゃそうだ。異世界の王様だもん。
「おお、いいんじゃね? 事務室に言っとくから、来賓用の入校届け出しとけよ」
「はーい」
裏も取らないで、セキュリティガバガバ過ぎるって?
そこが我が校のいいところだ。
事務室の窓口で名前を書いて、入校証を受け取った。
幸い、というか。
セントロ王国の文字はアルファベットに似てたから、外国の人ね、で済まされた。
女性事務員はバルの美貌に見惚れて、手が止まってしまっている。
そうそう、驚くほど美形だよなあ。
「ざっと校内案内するね!」
来客用スリッパを履いたバルの手を引いて。
とりあえず、俺の教室まで行った。
夏休み初日の教室は、当然ながら、誰もいない。
「ここ、一番後ろが俺の席だよ」
もうずいぶん懐かしく感じる、俺の席に座る。
背が高いと、目立つから。居眠りも出来ないんだよな。
早弁も出来ない。
バルにとっては小さい机や椅子を、面白そうに見ている。
小学生の机とかを見るような感覚かなあ。
*****
「前に話してくれた話は、ここで学んだのか」
ああ、アメリカの植民地とかの話かな? あれは中学の時の歴史マニアな先生に聞いた話なんだけど。
あんまり変わらないか。
そんなもん、と頷いて。
あ、いけね。教科書やノート、教室のロッカーに置きっぱだった。
回収しておこう。
卒業までに、色々勉強しとかないと。何が役に立つかわかんないしな。
「これが三年生の教科書だよ」
ついでにバルに教科書を見せた。パラパラとめくって。
「ほう、随分色々学ぶのだな。基礎教養としては多すぎでは?」
向こうの本の方がぶ厚いように見えたけど。
あっちじゃ魔法使いとか騎士とか聖職者はそれぞれ専門の教育を受けるから、学ぶ内容も職種によって違うんだ。
一般の国民は日常生活に困らない程度の言葉や、一般常識程度の教育しかされない。
それで充分だから。
学びたい人には門戸が開かれてるそうだけど。
「無駄と言えば無駄だよね。でも、日本じゃ成人は二十歳からだし。高校のうちにやりたい仕事とか将来を考えてる人が多いよ。それと、人によっては高校に行かないで働いてたり、働きながら夜間学校に通ってるのもいる」
ウチは恵まれている方なんだろう。
こんなちゃらんぽらんでも大学まで行ける学校に入れたし。
親父には感謝だ。
駅の切符売り場で、都営地下鉄と電車の一日乗車券も買って。お小遣いまでくれた。
「これで、都内ならだいたい回れるだろう。楽しんでもらいなさい」
おお、親父太っ腹! 痩せてるけど。
「行ってらっしゃい。仕事頑張れよー」
「お気遣いありがとうございます。お気をつけて」
親父とは駅の改札でお別れだ。
とりあえず、俺の学校へ行くことになった。
異世界には普通の学校がないから、見てみたいんだそうだ。
電車内でも、バルは注目の的だった。
でかいのが並んでるのもあって、他の車両からも視線を感じる。
芸能人より美形だしな。
でも、高貴なオーラのせいか、近寄らず、遠巻きに見てる感じだった。
*****
「あそこに見えるのが、うちの学校だよ」
同じ通りに、小学校から中学校、向かい側に高校と大学が並んでる。
頭のいい外部生を取らなきゃ偏差値が下がりすぎるという、ダメダメな学校である。
「そっちが小学校と中学校、反対側が俺が通ってる高校と、大学」
俺が何となく行くだろうな、と考えてた大学。
もう、その予定は無くなったけど。
「あれ? 小鳥遊パイセンじゃないっすか。忘れモンっすか?」
部活の後輩に声を掛けられた。
夏休み初日だというのに。部活のため、下級生が登校してる。お疲れさんだ。
三年はもう引退したけど。
「いや、案内」
後ろにいるバルを示して言う。
「うお、パイセンのおツレさんだったんすね。学校のお客さんすか? もしかして、新しい理事長とか?」
まあ、俺の知り合いっていうより、見るからに通りがかりのセレブな感じだよな。
王様だから正解だ。
「いや、俺の……、」
後ろのバルを見て。
「新しく、家族になる人」
うん、嘘は言っていない。
俺の結婚相手だし。
「パイセンお姉さんとかいましたっけ? まあいいや、ごゆっくり!」
後輩は、鞄をぶん回しながら学校に入っていった。
「随分と面妖な言葉遣いをする子供だが。知り合いかな?」
「面妖って……。部活の後輩だけど。……ええと、学校では何かひとつクラブに入らなきゃいけなくて。俺は背が高いから、バレーボール部に誘われたんだ。で、その後輩」
文化部とか運動部、委員とか。色々な係があることを説明した。
そして体育会系は、謎の挨拶が存在するのだ。
シャース、とかアザッス、とか。省略し過ぎてわけがわからなくなってる。
*****
「おう、小鳥遊じゃないか。夏休みなのに、こんな早くからどうした? 補習か?」
自転車に乗ってきた顧問の先生が、俺の前で止まった。
部活があるから、先生も夏休みなのに休めないとか大変だなあ。
「あ、先生おはよーございまーす。あのね、この人、俺の家族になる人で、日本の学校を見てみたいって言うんだけど。案内していい?」
バルを手で示すと。
先生はバルを見て、目を丸くした。
見るからに育った世界が違いそう? そりゃそうだ。異世界の王様だもん。
「おお、いいんじゃね? 事務室に言っとくから、来賓用の入校届け出しとけよ」
「はーい」
裏も取らないで、セキュリティガバガバ過ぎるって?
そこが我が校のいいところだ。
事務室の窓口で名前を書いて、入校証を受け取った。
幸い、というか。
セントロ王国の文字はアルファベットに似てたから、外国の人ね、で済まされた。
女性事務員はバルの美貌に見惚れて、手が止まってしまっている。
そうそう、驚くほど美形だよなあ。
「ざっと校内案内するね!」
来客用スリッパを履いたバルの手を引いて。
とりあえず、俺の教室まで行った。
夏休み初日の教室は、当然ながら、誰もいない。
「ここ、一番後ろが俺の席だよ」
もうずいぶん懐かしく感じる、俺の席に座る。
背が高いと、目立つから。居眠りも出来ないんだよな。
早弁も出来ない。
バルにとっては小さい机や椅子を、面白そうに見ている。
小学生の机とかを見るような感覚かなあ。
*****
「前に話してくれた話は、ここで学んだのか」
ああ、アメリカの植民地とかの話かな? あれは中学の時の歴史マニアな先生に聞いた話なんだけど。
あんまり変わらないか。
そんなもん、と頷いて。
あ、いけね。教科書やノート、教室のロッカーに置きっぱだった。
回収しておこう。
卒業までに、色々勉強しとかないと。何が役に立つかわかんないしな。
「これが三年生の教科書だよ」
ついでにバルに教科書を見せた。パラパラとめくって。
「ほう、随分色々学ぶのだな。基礎教養としては多すぎでは?」
向こうの本の方がぶ厚いように見えたけど。
あっちじゃ魔法使いとか騎士とか聖職者はそれぞれ専門の教育を受けるから、学ぶ内容も職種によって違うんだ。
一般の国民は日常生活に困らない程度の言葉や、一般常識程度の教育しかされない。
それで充分だから。
学びたい人には門戸が開かれてるそうだけど。
「無駄と言えば無駄だよね。でも、日本じゃ成人は二十歳からだし。高校のうちにやりたい仕事とか将来を考えてる人が多いよ。それと、人によっては高校に行かないで働いてたり、働きながら夜間学校に通ってるのもいる」
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親父には感謝だ。
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