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一路、王都へ
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往生際が悪い、と自分でも思う。
本当は、わかってるんだ。
早いところ、素直に自分の気持ちを認めるべきだってことは。
見知らぬ不審者でしかなかったゼノンにキスされても、嫌じゃなかった。
馬車に乗るまで、ろくな抵抗もせず抱かれたまま運ばれて。
そのままおとなしくしてたのは、ゼノンが俺に酷いことはしないと感覚で理解してたからじゃないのかな。
逃げる隙が、ゼロだった訳でもなかった。
言葉がわからなくて。
どういう状況か訳がわからないまま犯されても。
結局、俺がゼノンに悪い印象を持つことはなかったんだ。
つまるところ。
俺も、”運命の相手”に惹かれてたんだってことだ。
*****
舞台の上のゼノンに釘付けになった。
黒い騎士みたいで格好いいなって思った。
目が合って、ドキドキした。
拒絶して、悲しい顔になるのを見たくなくて。
差し出された花を受け取った。
神様が、わざわざ異なる次元を繋げてまで引き合わせた者同士だ。
相性だって最高なんだろう。
ゼノンのすること、全部。すごく気持ち良かった。
凛々しい王子様から告白されて、愛されて。
独占欲を見せられて、ぞくぞくした。
あんなストレートに愛情表現されたのは初めてで。嬉しいと思う。
俺もゼノンのことが好きだよ、って返せば。
ゼノンはすごく喜んでくれるだろう。
しっぽブンブン振って。
でも。
どうしてか、素直になれないんだよな。
昨日今日逢った相手、しかも男に惚れるなんていくら何でも軽すぎる、って理由で認められない。
つまらない男のプライドだ。
……我ながら、めんどくさっ!
*****
「おはよう、スオウ。気分はどうかな?」
目を開けた途端。
浅黒い肌の胸板がしゃべった。
顔を上げたら、ゼノンが微笑んで。
俺の鼻に自分の鼻を寄せて。それから両頬と額にキスをした。朝っぱらから愛情過多だ。
「ん、おはよ、」
気分は……特に悪くない。
体調は、かなり良いと思う。
ゆうべ、あれだけ体力消耗したのに。筋肉痛にもなってない。
ドロドロだった身体はさっぱりしてる。
ゼノンが後始末してくれたのかな?
たぶん、最初の時も。
王子様なのに甲斐甲斐しいな……。
いや、単にやきもちかも。
自分の名前より先にアドニスの名前を呼んだからってムッとしてたくらいだし。
誰かに触れさせたくなかったとかだろう。
「朝食は、食べられそうか?」
ルームサービスってやつかな?
部屋に朝食を持ってきてもらったらしい。
オレンジジュースと、焼き立てのパン。
野菜のスープ、スクランブルエッグにソーセージ。食後に紅茶。
衛生面の問題か、生野菜のサラダはないけど。
本当にここ異世界なの? ってくらい普通の食事風景だ。
普通っていっても、普段俺が食べてたものより上等で、味も美味しいけど。
*****
こっちをずっと見てたらしいゼノンと目が合った。
そんな甘ったるい顔して俺の食べてるところを見てないで、早く食事しなよ、と注意しようと思ったら。
ゼノンはもう食べ終わっていた。いつの間に。素早いなあ。
今日はこれから、王様のいる城がある、王都テタルティへ行くそうだ。
ゼノンは正装を身に着けてる。……自分で全部着られるんだ。
そりゃそうか。
俺の服も着せてくれたし。
家で使用人にさせてるのは、雇用の問題かな? 貴族も大変だ。
でもって俺はやっぱり、また女装なわけ?
まあ俺はゼノンの花嫁って立場らしいし、しょうがないけど。
俺、化粧もしてないんだけど。大丈夫? おかしくない? ってゼノンに訊いても無駄だった。
誉め言葉しか出てこない。
どうせ恥をかくのは俺を連れ歩いてるゼノンだし、いいやもう。
ドアを開けたら、護衛のタキとノエが部屋の前に立ってて。
二人とも俺を見て。鼻をひくつかせて。
見る見るうちに、真っ赤になった。
え、何だろう。
何かにおうのかな?
「奥まで念入りに匂いをつけたからな。皆にも、誰のツガイかわかるように」
ゼノンが耳元で囁いた。エッロい顔して。
それって。
マーキングってやつ?
中にいっぱい出されたの、他の人にもわかっちゃうの!?
何それ。恥ずかしすぎる……!
すまし顔でエスコートしてるゼノンの足を、ハイヒールで思い切り踏んでやったけど、ノーダメージだった。
くっ、革靴、防御力高いな……!
*****
馬車と護衛の馬は一路、王都テタルティへと向かった。
キリヤキからは、本当に近かった。
目と鼻の先。
要塞みたいな高い城壁に囲まれた、大きな城。
確かにゼノンの住んでるところより、遥かに大きかった。
でも、ゼノンの家も充分城だと思う。
城壁の内側、城下町みたいに見えるのは、大臣とかの中間管理職や騎士とか兵士、使用人たちの住居らしい。
王都には関係者しか入れないんだって。
ホテルもないので、王から呼ばれた客人以外はみんなキリヤキに宿を取るらしい。
夜になれば巨大な城門を閉ざしてしまうので、朝まで誰も出入りできないんだとか。
なるほど、それで昨日はキリヤキで一泊することになったんだ。
急遽指輪作りをすることになって。
予想外に手間取ったから、城門閉まっちゃったんだな。
城門前の兵と言葉を交わして、馬車が塀の中へ入る。
石畳の道。
似たような建物が並んでいて、迷子になりそう。
城の前で、馬車から降りて。
「うわあ」
見上げたら、首が痛くなりそうなほどでかい。
間近で見たら、さらに大迫力だ。
華美ではない、重厚で、頑丈そうな城。
要塞みたいだ、という感想はあながち的外れではなかった。
ひとたび戦争になれば、ヴォーレィオ王国の全国民を収容・生活できる要塞になるらしい。
地下にはそのための物資も備蓄してるとか。
「応接室で待っているそうだ」
ハイヒールは歩きにくいので、エスコートされながら赤い絨毯を歩いて。
応接室とやらに向かった。
これからこの国の王様に会うのかと思うと緊張する。
旦那の実家と思えば……って無理。
余計緊張しちゃうよ!
ゼノンの両親か。
どんな感じの人……狼人だろう?
怖くなければいいけど。
本当は、わかってるんだ。
早いところ、素直に自分の気持ちを認めるべきだってことは。
見知らぬ不審者でしかなかったゼノンにキスされても、嫌じゃなかった。
馬車に乗るまで、ろくな抵抗もせず抱かれたまま運ばれて。
そのままおとなしくしてたのは、ゼノンが俺に酷いことはしないと感覚で理解してたからじゃないのかな。
逃げる隙が、ゼロだった訳でもなかった。
言葉がわからなくて。
どういう状況か訳がわからないまま犯されても。
結局、俺がゼノンに悪い印象を持つことはなかったんだ。
つまるところ。
俺も、”運命の相手”に惹かれてたんだってことだ。
*****
舞台の上のゼノンに釘付けになった。
黒い騎士みたいで格好いいなって思った。
目が合って、ドキドキした。
拒絶して、悲しい顔になるのを見たくなくて。
差し出された花を受け取った。
神様が、わざわざ異なる次元を繋げてまで引き合わせた者同士だ。
相性だって最高なんだろう。
ゼノンのすること、全部。すごく気持ち良かった。
凛々しい王子様から告白されて、愛されて。
独占欲を見せられて、ぞくぞくした。
あんなストレートに愛情表現されたのは初めてで。嬉しいと思う。
俺もゼノンのことが好きだよ、って返せば。
ゼノンはすごく喜んでくれるだろう。
しっぽブンブン振って。
でも。
どうしてか、素直になれないんだよな。
昨日今日逢った相手、しかも男に惚れるなんていくら何でも軽すぎる、って理由で認められない。
つまらない男のプライドだ。
……我ながら、めんどくさっ!
*****
「おはよう、スオウ。気分はどうかな?」
目を開けた途端。
浅黒い肌の胸板がしゃべった。
顔を上げたら、ゼノンが微笑んで。
俺の鼻に自分の鼻を寄せて。それから両頬と額にキスをした。朝っぱらから愛情過多だ。
「ん、おはよ、」
気分は……特に悪くない。
体調は、かなり良いと思う。
ゆうべ、あれだけ体力消耗したのに。筋肉痛にもなってない。
ドロドロだった身体はさっぱりしてる。
ゼノンが後始末してくれたのかな?
たぶん、最初の時も。
王子様なのに甲斐甲斐しいな……。
いや、単にやきもちかも。
自分の名前より先にアドニスの名前を呼んだからってムッとしてたくらいだし。
誰かに触れさせたくなかったとかだろう。
「朝食は、食べられそうか?」
ルームサービスってやつかな?
部屋に朝食を持ってきてもらったらしい。
オレンジジュースと、焼き立てのパン。
野菜のスープ、スクランブルエッグにソーセージ。食後に紅茶。
衛生面の問題か、生野菜のサラダはないけど。
本当にここ異世界なの? ってくらい普通の食事風景だ。
普通っていっても、普段俺が食べてたものより上等で、味も美味しいけど。
*****
こっちをずっと見てたらしいゼノンと目が合った。
そんな甘ったるい顔して俺の食べてるところを見てないで、早く食事しなよ、と注意しようと思ったら。
ゼノンはもう食べ終わっていた。いつの間に。素早いなあ。
今日はこれから、王様のいる城がある、王都テタルティへ行くそうだ。
ゼノンは正装を身に着けてる。……自分で全部着られるんだ。
そりゃそうか。
俺の服も着せてくれたし。
家で使用人にさせてるのは、雇用の問題かな? 貴族も大変だ。
でもって俺はやっぱり、また女装なわけ?
まあ俺はゼノンの花嫁って立場らしいし、しょうがないけど。
俺、化粧もしてないんだけど。大丈夫? おかしくない? ってゼノンに訊いても無駄だった。
誉め言葉しか出てこない。
どうせ恥をかくのは俺を連れ歩いてるゼノンだし、いいやもう。
ドアを開けたら、護衛のタキとノエが部屋の前に立ってて。
二人とも俺を見て。鼻をひくつかせて。
見る見るうちに、真っ赤になった。
え、何だろう。
何かにおうのかな?
「奥まで念入りに匂いをつけたからな。皆にも、誰のツガイかわかるように」
ゼノンが耳元で囁いた。エッロい顔して。
それって。
マーキングってやつ?
中にいっぱい出されたの、他の人にもわかっちゃうの!?
何それ。恥ずかしすぎる……!
すまし顔でエスコートしてるゼノンの足を、ハイヒールで思い切り踏んでやったけど、ノーダメージだった。
くっ、革靴、防御力高いな……!
*****
馬車と護衛の馬は一路、王都テタルティへと向かった。
キリヤキからは、本当に近かった。
目と鼻の先。
要塞みたいな高い城壁に囲まれた、大きな城。
確かにゼノンの住んでるところより、遥かに大きかった。
でも、ゼノンの家も充分城だと思う。
城壁の内側、城下町みたいに見えるのは、大臣とかの中間管理職や騎士とか兵士、使用人たちの住居らしい。
王都には関係者しか入れないんだって。
ホテルもないので、王から呼ばれた客人以外はみんなキリヤキに宿を取るらしい。
夜になれば巨大な城門を閉ざしてしまうので、朝まで誰も出入りできないんだとか。
なるほど、それで昨日はキリヤキで一泊することになったんだ。
急遽指輪作りをすることになって。
予想外に手間取ったから、城門閉まっちゃったんだな。
城門前の兵と言葉を交わして、馬車が塀の中へ入る。
石畳の道。
似たような建物が並んでいて、迷子になりそう。
城の前で、馬車から降りて。
「うわあ」
見上げたら、首が痛くなりそうなほどでかい。
間近で見たら、さらに大迫力だ。
華美ではない、重厚で、頑丈そうな城。
要塞みたいだ、という感想はあながち的外れではなかった。
ひとたび戦争になれば、ヴォーレィオ王国の全国民を収容・生活できる要塞になるらしい。
地下にはそのための物資も備蓄してるとか。
「応接室で待っているそうだ」
ハイヒールは歩きにくいので、エスコートされながら赤い絨毯を歩いて。
応接室とやらに向かった。
これからこの国の王様に会うのかと思うと緊張する。
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ゼノンの両親か。
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