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協定を結びに
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俺のツガイが、男からも女からもモテていたとは……。
まあ、そんなのわかってたけど!
国民からも人気だもんな。
現国王より人気なくらいだ。
月の光みたいなプラチナの髪とか。月の化身って言われても違和感ない容姿だし。
実際そうだ。
そのケのなかった俺まで恋に落とすくらいだもんな。
まさか。
ゼノンが国で一番強い黒騎士になったのも、夜這いが多すぎて、撃退してるうちに強くなっちゃったとか?
「スオウ、全て排除したので心配するようなことは何もなかったぞ?」
頭を撫でられる。
気付けば、ゼノンにぎゅっとしがみついていたようだ。
誰にも取られたくない、って気持ち。
こんなに強い独占欲が俺にもあったんだ。
一番仲のいいアドニスにも妬いたくらいだもんな。
ゼノンと一緒の部屋で、仲良く暮らしてたって言うし。
ゼノンは俺だけのものなのに。
なんだかもやもやするので。
ゼノンの胸に頭をぐりぐり擦り付ける。
*****
「ふにゃ、」
撫でられてるうちに、心地好くなって。
眠くなってきちゃった。
「眠くなったのか?」
だからそんなに優しく撫でるなって。
眠くなるだろ。
猫族になったからかな?
やたら睡眠時間が増えた気がする。
疲れたのかな?
でも、そんなに労働した自覚はないんだけど。
それとも、”祝福”を与えるっていう行為は、意外と魔力というか、気力を使うものなのかも。
寝ちゃうのは失礼かな、と頭の片隅で思いつつ。
でも。
この腕の中なら安心だから。
睡眠欲のおもむくまま、寝てしまおう。
「あらあら、可愛らしいわあ」
「ふふ、そんなに大切そうに抱き締めちゃって。宝物みたいだねえ?」
「ああ、俺の一番大切な宝物だ。俺に心から人を愛すことを教えてくれた」
優しい声を子守歌に。
*****
「んー、」
伸びをしようと思ったけど。
身体が動かない。
……ずいぶん硬い布団だな。
「もういいのか? もう少し寝ていても大丈夫だ」
いつの間にか、上空だった。
寝ている間にアルギュロスに乗せられていた。
というか、ゼノンの膝の上。
マントに包まれていたからか、風の抵抗を感じなかった。
俺が寝てる間にノーティオから出国していて。
カルデアポリを通り過ぎたあたりだって。
寄り道するわけでもないので、アルギュロスも素直に飛んだんだな。
「おはよ、」
「おはよースオウ、もう夕方だけどね! そろそろ夕ご飯の時間だねえ?」
アルギュロスが明るく挨拶を返した。
もう夕飯の話とか。
ノーティオでおやつをもらったんじゃないのか?
太ってまんまるくなったら飛べなくなるぞ?
でも飛竜っていうのは別に翼で飛んでるんじゃなくて、翼は方向転換に使うだけのようだ。
羽ばたくと風が巻き起こるくらいだけど、それだけじゃ空は飛べない。
魔力がロケットエンジンみたいなもんかな。
生まれながらに風と空気の神の加護を受けた、飛ぶことに特化した生き物だ。
「おはよう。すっかり目が覚めたようだな?」
ゼノンの腕は、しっかりと俺の身体を支えている。
嬉しそうな様子に、あ、これはまた夜が長くなるなって予感がする。
ほぼ毎晩そうなんだけど。
それが嫌じゃないから困るっていうか。
世の中の夫婦って、こう毎日毎晩こんな頻繁にしてるもんなのか?
ゼノンが特別絶倫なだけか?
新婚期間もいい加減過ぎただろうに。
いや、決して嫌なわけじゃないんだけど。
気持ち良くて、いつも流されちゃうんだよ。
毎日するのが当たり前みたいになって。
身体がこれに慣れた頃、飽きたらどうなるんだろ、とか思ったりするとな……。
うう、こういう微妙な話題を気軽に相談というか、話せる相手がいないのが現在、唯一の悩みだろうか。
依井にだって話せない。
この世界のことだし、こっちの住人に訊くべきか。
妻帯者だって判明したノエ……に訊くのも何かなあ。
ゼノンに訊いても無駄なのは確実だ。
今のとこ、頭の中はいつでも俺のことでいっぱいで、俺が嫌がらない限り一日中でもずっと繋がってたいって言ってるもん。
これできっちり公務をこなしてるのが凄い。
仕事中ずっと、一秒でも早く仕事終わらせて俺とイチャイチャしたいなんて考えてるとは、まさか誰も思わないだろう。
俺もゼノンのそんな心の声を聞かされて困った。
お願いだから秘めといて欲しい。
*****
「ディティコ王国に和平条約を提言しに行きたい?」
「うん。アナトリコ王国はもう将来そうなること確定だけど。ディティコは未だ不確定だし。今のうちにがっちり条約結んどいたほうがいいかなって」
クロノスは、戦争が起こる未来は消えたって言ってた。
一番危険だったのが、アナトリコ王国だったけど。
俺とゼノンがレオニダス王と交流を持ったことで大丈夫になったって。
ゼノンは夜這いという名の暗殺未遂についてはもう狙わないなら許すっていう寛容っぷりを見せてるんだし。
同期っていう繋がりもあるし。
仲良くなれる余地はあるんじゃないかな?
「成程。では父上……国王陛下から親書を頂いて来よう」
ゼノンの行動は早かった。
アルギュロスでひとっ飛び、テタルティの城へ行って。
国王から書類を貰ってすぐ帰ってきた。
国益になることなら大歓迎だって言ってたそうだ。
トゥリティが結婚記念グッズで盛り上がってるのも当然耳に入っていて、何でお城に寄ってくれないのって愚痴られたって。
この件についての報告に行く時には、ご挨拶をしに、一緒に行くことにしよう。
義理の両親になるんだもんな。
まだ実感ないけど。
セルジオス王にはすでに訪問すると連絡も入れたそうなので、馬車でディティコへ向かう。
最近置いてけぼり気味だったタキとノエは嬉しそうだ。
王太子付近衛騎士って、とても誇らしい仕事だっていうからな。
まあ、そんなのわかってたけど!
国民からも人気だもんな。
現国王より人気なくらいだ。
月の光みたいなプラチナの髪とか。月の化身って言われても違和感ない容姿だし。
実際そうだ。
そのケのなかった俺まで恋に落とすくらいだもんな。
まさか。
ゼノンが国で一番強い黒騎士になったのも、夜這いが多すぎて、撃退してるうちに強くなっちゃったとか?
「スオウ、全て排除したので心配するようなことは何もなかったぞ?」
頭を撫でられる。
気付けば、ゼノンにぎゅっとしがみついていたようだ。
誰にも取られたくない、って気持ち。
こんなに強い独占欲が俺にもあったんだ。
一番仲のいいアドニスにも妬いたくらいだもんな。
ゼノンと一緒の部屋で、仲良く暮らしてたって言うし。
ゼノンは俺だけのものなのに。
なんだかもやもやするので。
ゼノンの胸に頭をぐりぐり擦り付ける。
*****
「ふにゃ、」
撫でられてるうちに、心地好くなって。
眠くなってきちゃった。
「眠くなったのか?」
だからそんなに優しく撫でるなって。
眠くなるだろ。
猫族になったからかな?
やたら睡眠時間が増えた気がする。
疲れたのかな?
でも、そんなに労働した自覚はないんだけど。
それとも、”祝福”を与えるっていう行為は、意外と魔力というか、気力を使うものなのかも。
寝ちゃうのは失礼かな、と頭の片隅で思いつつ。
でも。
この腕の中なら安心だから。
睡眠欲のおもむくまま、寝てしまおう。
「あらあら、可愛らしいわあ」
「ふふ、そんなに大切そうに抱き締めちゃって。宝物みたいだねえ?」
「ああ、俺の一番大切な宝物だ。俺に心から人を愛すことを教えてくれた」
優しい声を子守歌に。
*****
「んー、」
伸びをしようと思ったけど。
身体が動かない。
……ずいぶん硬い布団だな。
「もういいのか? もう少し寝ていても大丈夫だ」
いつの間にか、上空だった。
寝ている間にアルギュロスに乗せられていた。
というか、ゼノンの膝の上。
マントに包まれていたからか、風の抵抗を感じなかった。
俺が寝てる間にノーティオから出国していて。
カルデアポリを通り過ぎたあたりだって。
寄り道するわけでもないので、アルギュロスも素直に飛んだんだな。
「おはよ、」
「おはよースオウ、もう夕方だけどね! そろそろ夕ご飯の時間だねえ?」
アルギュロスが明るく挨拶を返した。
もう夕飯の話とか。
ノーティオでおやつをもらったんじゃないのか?
太ってまんまるくなったら飛べなくなるぞ?
でも飛竜っていうのは別に翼で飛んでるんじゃなくて、翼は方向転換に使うだけのようだ。
羽ばたくと風が巻き起こるくらいだけど、それだけじゃ空は飛べない。
魔力がロケットエンジンみたいなもんかな。
生まれながらに風と空気の神の加護を受けた、飛ぶことに特化した生き物だ。
「おはよう。すっかり目が覚めたようだな?」
ゼノンの腕は、しっかりと俺の身体を支えている。
嬉しそうな様子に、あ、これはまた夜が長くなるなって予感がする。
ほぼ毎晩そうなんだけど。
それが嫌じゃないから困るっていうか。
世の中の夫婦って、こう毎日毎晩こんな頻繁にしてるもんなのか?
ゼノンが特別絶倫なだけか?
新婚期間もいい加減過ぎただろうに。
いや、決して嫌なわけじゃないんだけど。
気持ち良くて、いつも流されちゃうんだよ。
毎日するのが当たり前みたいになって。
身体がこれに慣れた頃、飽きたらどうなるんだろ、とか思ったりするとな……。
うう、こういう微妙な話題を気軽に相談というか、話せる相手がいないのが現在、唯一の悩みだろうか。
依井にだって話せない。
この世界のことだし、こっちの住人に訊くべきか。
妻帯者だって判明したノエ……に訊くのも何かなあ。
ゼノンに訊いても無駄なのは確実だ。
今のとこ、頭の中はいつでも俺のことでいっぱいで、俺が嫌がらない限り一日中でもずっと繋がってたいって言ってるもん。
これできっちり公務をこなしてるのが凄い。
仕事中ずっと、一秒でも早く仕事終わらせて俺とイチャイチャしたいなんて考えてるとは、まさか誰も思わないだろう。
俺もゼノンのそんな心の声を聞かされて困った。
お願いだから秘めといて欲しい。
*****
「ディティコ王国に和平条約を提言しに行きたい?」
「うん。アナトリコ王国はもう将来そうなること確定だけど。ディティコは未だ不確定だし。今のうちにがっちり条約結んどいたほうがいいかなって」
クロノスは、戦争が起こる未来は消えたって言ってた。
一番危険だったのが、アナトリコ王国だったけど。
俺とゼノンがレオニダス王と交流を持ったことで大丈夫になったって。
ゼノンは夜這いという名の暗殺未遂についてはもう狙わないなら許すっていう寛容っぷりを見せてるんだし。
同期っていう繋がりもあるし。
仲良くなれる余地はあるんじゃないかな?
「成程。では父上……国王陛下から親書を頂いて来よう」
ゼノンの行動は早かった。
アルギュロスでひとっ飛び、テタルティの城へ行って。
国王から書類を貰ってすぐ帰ってきた。
国益になることなら大歓迎だって言ってたそうだ。
トゥリティが結婚記念グッズで盛り上がってるのも当然耳に入っていて、何でお城に寄ってくれないのって愚痴られたって。
この件についての報告に行く時には、ご挨拶をしに、一緒に行くことにしよう。
義理の両親になるんだもんな。
まだ実感ないけど。
セルジオス王にはすでに訪問すると連絡も入れたそうなので、馬車でディティコへ向かう。
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