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本編

10雨のイベント発生中?

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「はぁぁぁ」
窓から見える景色はグレー一色に染められている・・・
今はまさに梅雨時期。

乙女ゲームでは味わえないねぇ

そしてヒロインあっちゃんはと言うと
「うぅ~」
とてもヒロインという事を自覚していないお顔になっています

「そう言えばあっちゃん猫の獣人だったよね。」
隣で唸っているあっちゃんを横目で見ながら目の前のお弁当を一口食べる
「この季節だけは憂鬱な気分になっちゃうよ」
机に突っ伏しったまま項垂れるあっちゃん
「体育館もジメジメしてるし!なんて時期だっ!」
「あっちゃん、いきなり叫ばないで」
周りの人がびっくりしちゃってるし

でも梅雨時期か~、梅雨と言えばたしか雨のイベントがあったような
傘を忘れたヒロインに「一緒に入るか」と傘を差し出すヒーロー!
なんてロマンティックなんでしょう!
しかもヒーローはヒロインとの親密度の高さで変わるから現状況のあっちゃんの恋模様がわかって私にはムフフな状況だ!
「あっちゃん、昼休み終わるから教室かえるね」

放課後
私は早速特技の隠密であっちゃんを尾行した
周りの人の目なんて気にしないわ!あっちゃんに気づかれたりしない限り大丈夫!
あっちゃんは中央玄関に到着し上靴と靴を履き替えて外へと向かった
「やばい!私も準備しなくちゃ!」
私も上靴と靴を履き替えあっちゃんに見つからない位置へと移動する
あっちゃんは玄関前てポツポツ降る雨を見上げカバンから何かを取り出した
「っ!?」
驚きで声も出ない
あっちゃんが取り出したもの、それは黄色に輝くレインコートだった

いや、ヒロインがレインコートって!?
しかもレインコートと傘のダブルパンチ!!あっちゃんどんだけ雨嫌いなん!?

おかしな格好のヒロインあっちゃんに若干引きながら様子を伺うと玄関の方から赤い髪の上にちょこんと犬耳がのった活発そうな男の子がやって来た
はぅ、あれはジル君!?
てかあっちゃんはいつジル君と知り合ったんだ?お母さんは初耳だぞっ!!

「あれ?アプリコットじゃねぇか?つかその格好はボケか?」
あ、ジル君があっちゃんの格好を見て笑いを堪えてる
あっちゃんは素知らぬ顔で帰ろうとしている
「アプリコット、傘に入れてくれねぇ?俺の傘壊れちまって」
愛嬌がある笑顔であっちゃんにお願いするジル君
「・・・っち」
あれ?今あっちゃん舌打ちしませんでしたか?

・・・・・・

「しかたねぇから入れてやるよ」
なんて漢らしい答え方なのでしょうかあっちゃん!
てか今の間は長かったしヒロインとしては有るまじき答え方だぞっ!
「ありがとう、アプリコット!」
満面の笑みで答えるジル君
はぁぁぁ!眼福の笑顔でございますジル君!

幸福に包まれたまま私は雨の中に消える二人を見守った
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