終生飼育は原則ですから

被保護編 337年

337年4月12

　とりあえず、オーサーがこの世界の事を学んでも、側から離さない事には成功したか。

　それにしても、彼女にとってはあくまでも仕事か。
　側にいたいとか離れたくないとか、そういった感情は介入しないのか。七ヵ月も一緒にいて、レイは何をしていたのか。

　もし今レイが告白したとしたら、彼女は却下する。有り得ないと、断るのではなく告白自体を否定するだろう。気の毒に。
　私が告白すれば彼女はうなずく。外に情報を漏らさない為、囲い込む為の手段だと解釈するだろう。

　告白するのもいいかもしれない。オーサーは使える人間だ。
　クリスティアナにとって彼女は恋敵、恩人だが目障りな敵なのに、あっさり警戒心を解き親しくなった。人を懐柔する手腕だけではなく、必要な情報も引き出している。

　美しい女だし、着飾らせればもっと輝くだろう。一緒にいて楽しいと、私が感じる人間も珍しい。
　レイは哀れだ。身分故に彼女は決して手に入らない。

　レイに裁縫師の手配を命じられた。側に置くからにはドレスを着る機会もあると彼女を説得している。
　オーサーは男で、少なくとも男の格好をする女で通すつもりらしい。正装なら私の服の中にあるから大丈夫と言っている。

　ここはレイが勝つだろう。オーサーは王宮や社交を知らないから、そういうものだと言われれば従うしかない。
　ドレスは似合うだろう。彼女は姿勢がいいしスタイルがいい。

　彼女は仕方がないと溜息をついて承諾する。ただデザインには口を挟ませてと言っている。
　彼女がドレスを着なくてはいけない機会を早く作るべきだ。