終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 337年

337年10月10-2

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 流行はどうやって作るかな。エンパイアやアール・ヌーヴォー、アール・デコみたいな、とにかくシンプルなのが、私はうれしい。
 服には刺繍とか宝石を縫いつけたら単価が上がるし、裁縫師も仕事がなくならないと思う。

 クリスに新しい服を着てもらいたい。みんな真似すると思うんだけど。
 失敗したら変な服を着ているだけになっちゃうか。
 それなら私が着た方が、変な人が変な服を着てるで見逃してもらえるかも。だけどそれじゃあ流行らないか。

 これについては実際服を作ってみてもらうしかないだろうけど、サイズは? 私に合わすとクリスの胸が入らない。
 仕方ない。やっぱり自分のサイズで作るか。採寸して合わせられるほどの腕前は、私にはない。
 グレスに繋ぎを頼むついでにシルクの布と糸を買ってこよう。レースもあった方がいいかな。高くなるな。着るかわからないのに。

「大丈夫か、疲れているみたいだが」
 ファリオンが心配してくれた。疲れているよ。人に会うと気疲れする。

「何でそこまでするんだ? 兄上に命じられているのか?」
「いや、レイサスは休めって言ってる」
「何でだ」
「何でか・・・何でだろう。自分が生きやすくするためではあるんだけど、そこまでしなくても生きていける」
 そう言われれば、私はなんでこんな必死でやってるんだろうな。
「結局レイサスのためか」

 役に立たなくちゃいけないと思ったし、役に立ちたいとも思っている。結局、私はレイサスに使えないと思われたくないんだ。
 役に立つから側に置いてって、媚びてるなぁ。愛想尽かされる前に独り立ちしないと。

「好きなのか?」
 ファリオンを見ると誤解が生じているようだ。
「違う。そういう意味じゃない。好きだけど、ファリオンが思っているような種類じゃない」
 恋人になりたいわけじゃない。お断りだろうけど。
「同情かな。レイサスは、レイサス様は」
「もういいだろ」
 そうだね。私の口が悪いことは知られている。

「レイサスは気の毒だと思う。レイサスに許されることはない。常に清く正しく美しく、強く賢くいなければいけない。ファリオンに許されてもレイサスには許されない。前のファリオンみたいなことをレイサスがしたら、廃嫡されていてもおかしくないと思う」
 せめて妃となる人がいい人で支えてくれればいいんだけど。

「私は長くいるつもりはないけど、できる限り協力はしたい。お世話になっているから」
 恩人だからね。
 そして今までのはきれいごとで、レイサスがかっこいいから手伝いたいだけかな。
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