終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 337年

337年12月2-1

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 今朝は朝からオーサーは憂鬱そうだった。
 軍に顔を出し、予定があるからと早々に引き上げた。
 昼からある商会連合の会合に行かなくてはいけない。

 オーサーは俺に謝ってくれた。
「ファリオンの身分を利用することになる。ごめん」
「気にするな。お前がどう利用するのか楽しみだよ」

 貴族が利用するレストランの個室には九人が座っていた。貴族が使うレストランも商人が経営しているということに、今気付いた。
 七人は知っている。
 その内の五人は、グレスの紹介でオーサーと会った。
 二人はエンディオと一緒にいたはずだ。見覚えがある。

「招待を感謝する」
 立っていた九人を座らせる。
 オーサーも俺の隣に座った。

「殿下、フラーニでございます。お久しぶりです。この場でお会いできるとは」
「そうだな」
 食前酒が配られる。俺はともかく、オーサーのは毒見をした方がいい。グレスの手配した場所だから大丈夫だと思うが。

「お忙しいでしょうに、こちらにいらしていただくのは申し訳ありません。私が伺いますのでお呼び下さればよろしいのですよ」
 口を挟むな黙ってろってことか。
「用があったから来た。オーサー」

「皆様にはご挨拶が遅くなり申し訳ありません。オーサーと申します。この度は法改正のご説明とこれからのご協力をお願いしに参りました」
「あなたはどんな権限があってそんなことをしようと言うのか」
 フラーニは男爵だったはずだ。金で爵位を買った。
 オーサーの笑顔は動かない。内心が怖い。

「私の名代だと考えていい」
 フラーニに答えた。
 オーサーが右手を胸に当て、膝を折ってお辞儀をする。優雅だ。
「これからの発言はファリオン殿下の言葉としてお聞きください」
 笑みを消した。
 全員を一人ひとり見つめる、と言うよりも睥睨する。
 オーサーに会った事の無い四人の表情が締まった。他の五人も居住まいを正す。

「国は法を定め、民はそれに従うが原則である。
 だが国は定めるだけではない。民は従うだけではない。
 民の実情を国は知る必要があり、民は国に関わる必要がある。
 そのように相互の情報の交換によって法は洗練され、国は発展する。
 国は民の生活の向上を企図する。
 そなたらにはこの国の民として、国に関与し貢献することを期待する」

 全員を見渡した。
 役者が違う。皆威圧されている。俺もだ。こんな事を考え、こんな演説が出来るのか。
「殿下は皆様の返答をお待ちです」

「われわれ一同、誠心誠意、民として国に仕えたいと思います」
 グレスが言って腰を折った。他の者も、フラーニ達もそれに続く。
 オーサーが俺を見たので何か言わなければ。だが俺もオーサーに頭を下げたいくらいだ。
「その言葉、忘れまい」
 オーサーがまた微笑んだ。
「お時間をいただきありがとうございます」
 腰掛ける。

 グレスが部屋の外に声をかけ、食事が運ばれてきた。
 オーサーが食事に使われている材料の産地などを質問し、ようやく少し場が和らいだ。強烈だったからな。
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