終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年1月15-2

　レイサス様が戻られたとき、あのときの喜び、思い出すと涙が流れる。
　生きていてくださったことだけでうれしかった。変わらずに戻られたのがうれしかった。

　けれどレイサス様は変わられていた。いい方に変わっていらっしゃる。私以外の人にとっては。レイサス様ご本人にとっても。

　感情を表されるようになった。そして異世界の恩人をとても愛おしそうに見つめられる。
　あのように女性を、人をご覧になったことはなかった。
　いつも目で追い、側に寄り、避けられていられる。あのレイサス様を避けるなんて。

　オーサーのことは嫌いになれない。とてもいい方だ。
　お会いしたくなる方。できるだけ頻繁に、できるだけ長く会って、お話を聞きたいし聞いてほしい。
　皆そう思うのでしょう。レイサス様も。

　オーサーはただいい方というばかりではなくて、とても有能な方だった。
　誰もできないことを簡単にしてしまう。
　ファリオン王子と話をするなんてできないと思っていた。
　軍と関係を結んではいけないと思っていた。
　税金を上げても商人が協力するなんて思わなかった。
　レイサス様に不可欠の、公私共に不可欠の女性だと思う。

　けれどオーサーはレイサス様のことを恩人だと、ただの恩人だと思っている。だから恩を返したら離れると。
　私がオーサーだったら。恋人になれるのに。オーサーさえ頷けばすぐに恋人になれるのに。

　オーサーが攫われたと知ったのは、オーサーが救い出されてロゾイゾ邸に戻ってからだった。
　私も知りたかったのに。一緒に心配したかったし協力したかった。私はいつも蚊帳の外。

　レイサス様が医師しか部屋に入れないくらい心配されていた。
　一日中付きっ切りで、オーサーに会えないどころかレイサス様の姿も見えなかった。
　オーサーのことはもちろん心配だけれど、うらやましく思う気持ちを止められない。私が攫われたとしたら・・・やめよう。

　救い出されて三日後、ようやくオーサーの部屋へ入れてくださった。
　オーサーは・・・レイサス様が心配された訳がわかった。ひどい。ここまでひどいことをされるなんて。
　けれどオーサーは大事だとは思っていないみたい。大怪我じゃないとかすぐ治るとか、手加減されたとか、私なら怖かったと言って縋りつくでしょう。

　王妃には喧嘩を売りたかったそう。
　何を言ったかはファリオン殿下から聞きました。レイサス様のために言いたかったのね。レイサス様のために命を掛けて言った。殺されることを覚悟していたと。

　オーサーはレイサス様を愛していないの？　オーサーの行動は全てレイサス様のためなのに。どうして恋人にはなれないの？　離れようとするの？
　今も隣に座って触れようとするレイサス様に迷惑そうにしているけれど、なぜ喜ばないの？

　私はレイサス様を諦めて、レイサス様の力になりたい。
　レイサス様にはオーサーが必要。おそらくオーサーもレイサス様が好きなはず。
　お二人が並んでいるところは、とてもお似合いだと本心から思う。