終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年3月2-2

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 ともやと共にホールへ入ると、誰もが注目した。
 国王夫妻へ挨拶する。王も、王妃も満面の笑みを浮かべ、ともやに声を掛けた。
「オーサー、そのドレスがとてもお似合いですね。お贈りした甲斐があります。レイサスと並ぶと、本当にお似合いですわ。陛下、そう思われませんか?」
「まさに。普段は凛々しいが今日はとりわけ美しい。レイサスとよく似合う」
「私の身には余るお」
「ありがとうございます両陛下。私もそう思っておりました」
 ともやを立たせて振り向いた。
 貴族達が見ている中を、ダンスの為に中央まで歩く。皆目はともやを追っている。

 私が最後にダンスをしたのは十年ほど前か。
 一人受けると限が無い。ダンスはしないと宣言した。それ以来踊っていない。

 これからはダンスはともやとだけしよう。
 身長が合い、訓練も練習もした私達のダンスは、ともやの身のこなしはとても美しいだろう。
「ともや、顔が険しい」
 ふっと微笑む。
「すみません、忘れていました。皆さん異様なものを見るようで」
「異様・・・あなたが美しいから見ているんだ」
「ご冗談を」
 本当に、私の言葉は素直に受け取らない。

 最初のダンスの後は人に囲まれた。
 いつもは女性がほとんどだが、今回は男も多い。ともやへ声を掛けている。
 若い男から年配まで、ともやを招待している。領地の産物を売りたいのなら気持ちはわかるが、特に若い男の目的はともやだ。

 ともやの公的な身分はない。私の側近という曖昧なものだ。
 ともやの手腕は周知の事実だ。手に入れれば役に立つ。さらに、本人が美しい女だ。手に入れたくなる。

 ともやの腰に回した腕に力を入れた。少し近付いた拍子にともやが微笑んだ。本当は眉を顰めようとしたのを誤魔化した事が私にはわかる。
 だが他の者にはわかるまい。愛し合っていると、私は手放すつもりが無く、ともやは離れる気は無いと思われればいい。
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