終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年8月2-1

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「夏祭りのベストカップルになったそうね」
「申し訳ありません」
「なぜ謝るの? わたくしも見たかったわ」
「そうですね。いらっしゃれば皆、もっと喜んだでしょう」

 王妃とオーサーとの会話に、珍しく兄上が入った。
 俺はミラの店にいて、広場にはいなかった。
 行けばよかったかな。だが行かなくても想像はできる。兄上が寄り、オーサーの腰が引けていたんだろ。
「特別賞です。皆さんが気を遣ってくれました」
 王妃の前だからオーサーはまだ穏やかな表情だが、本心は苦々しいな。

 王妃はどんな服を着ていたのかやどんな風に呼び出されたのか、その時のことを聞いている。
 兄上が答えている。オーサーが望んでいた関係に近くなっているように見えるが、まさか自分がこんなに迷惑を蒙るとは思っていなかっただろ。
 自分の掘った穴に落ちたか。いや自分の身を犠牲にしてって方が近いか。気の毒だが、面白い。
 面白いが、なんだろうな、兄上ではなく俺が行っていた場合の事を考えてしまう。

「それで、いつ婚約を発表するの?」
 オーサーが咳き込んだ。
 さすが持っていたカップは、静かにテーブルに置いたが、長く咳き込んでいる。その背を兄上がさすり、オーサーが逃げるように席を立ち、呼吸を整えて戻った。

「私との婚約と言うことでしたら、それはありえません」
「なぜ? ベストカップルでしょうに」
「それは祭りを盛り上げるための方便です。否定してもつまらない。そんなことよりも、ちょうどいい機会です。レイサス様の婚約者を早く決めるよう、フレディア様からもおっしゃっていただけませんか」
「わたくしはあなたと婚約するように勧めています」

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