終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年4月1-1

　家庭菜園は私が貰った。
　イモを、ジャガイモを試したい。
　ジャガイモはイユリスにもあるけど、あれはとても重要で難しい作物だ。

　ジャガイモが伝播したことで、特にイギリスの食糧生産は大幅に改善された。
　ジャガイモの病気が流行って収量が減少すると、アイルランドで飢饉が起こった。
　その飢饉で食べられなくなった人がアメリカに移民するという歴史の流れになる。

　つまり、アイルランドを支えていたのはジャガイモ。
　ジャガイモは他の作物より生産性が高いから。生産量が多く、脱穀、製粉が必要なく、火を通せばすぐに食べられる。そのうえ癖が少ない。

　ジャガイモについてはいろいろと、やっぱり男爵が至高とか、インカのめざめがとか、北海道人としてあるけれど、作るのに気を遣う作物だという印象がある。
　強いんだけど連作ができないし、致命的なシスト線虫が広がらないように消毒と検疫はしっかりやってもらわないと。
　商業規模で考えるから気を遣わなくてはいけないんだろうけど。

　シスト線虫ってこの世界にはないんだろうか。聞いていると連作障害だけみたいだけど。
　もし何か病害虫が発生しても、エコロ伯が無理に作っていた菜園、今は私の菜園なら、小さいし畑からは遠い。広がらないから安全だ。

　ただ問題は、農家の娘とは言っても、実際に作ったのは小学校の実習くらいだということだ。うちでも家庭用くらいしか植えていなかった。商業作物としては作っていなかったんだよね。私は新ジャガをちょっと掘るくらいだった。
　いつ植えるのかとか、どんな成長が普通なのかとか、そういうのが全くわからない。
　違うのにしておくべきだったか。いやどの作物も遠くから見ていたくらいだからな。

　とにかく最初の年は普通に育てて普通を知る。
　来年以降のために堆肥の量を量って梳き込み、種イモを置いて土をかけた。
　うっ腰が。

　イモだけだとつまらないから、エンドウも蒔く。種をもらった。グリーンピースが好きだ。
　猫達も連れてきている。掘った土をさらに掘ってトイレにしている。まあいいさ。そのうち分解されるだろう。