終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年7月2-2

　テティのお父様は、オーサー様のお声掛かりでツァイリスに行っている紙の技術者だった。
　もうすぐイユリスに帰って来るそうで、久しぶりに会えると喜んでいた。
　しばらくは、もしくはずっとジェスキヒテにいることになるみたいで、テティは先生になれたら、その近くの学校に勤めたいと言っている。

　素敵な話だわ。親についていくだけじゃなくて、自分の働き先を決めて、働きながら一緒に住めるかもしれない。
　私も先生になれたら住む場所を自分で選べるのね。親や夫の都合じゃなくて、自分で選べる。素敵な話だわ。

　予定より早く売切れてしまったので屋台を片付けた。
　期待しないようにしていたけれど、この時間であれば最初から見られる。

　エラン様が、片づけを手伝ってくださっていたオーサー様を呼んで広場に案内していった。
　それを見送って、私たちも広場に行った。
　広場は人で一杯だったけれど、オーサー様の周りは空間ができて、壇まで道ができていたからすぐにわかる。王太子様に手を取られて歩いている。

　壇の上のオーサー様は明らかに喜んではいないけれど、王太子様は嬉しそうだった。
　ベストカップルだと言われて、王太子様が告白するのか緊張して待ったけれど、告白はなかった。もうカップルだものね。

　告白はなかったけれど、王太子様はオーサー様の頬にキスをされた。きゃーという声が会場から聞こえた。私も言っちゃった。とてもいい場面だったから。

　オーサー様は手を頬に当ててびっくりされていた。王太子様はその手を上にもう一度キスをしようとして、気づいたオーサー様がものすごく避けていた。
　そういうところが、もどかしいけれど好かれるんだと思う。私はそういう恥じらいがあるオーサー様が好きだわ。