終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年9月2

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 全員が喜んだ。
 公主も含めて、全員が彼女との結婚を祝福している。
 喜んでいないのはともやくらいか。

 私が舞い上がりすぎだという自覚はある。少ししつこくしすぎた。もう逃げられないという思いがなかったとは言えない。
 今までは近いうちに、いつかいなくなる、いなくならないように嫌われないようにと自制していたが、もう彼女は私の婚約者だ。

 ともやが隣にいるときの誇らしさ、心強さ、守らなくてはいけないという緊張感、皆から感じる祝福と敬愛。

 ともやは私の愛を信じていない。近いうちに冷めると思っている。
 私はこのまま愛し続け、ともやに自分が間違っていたと認めさせる。
 三年たっても冷めず、ともやがうんざりするほど求め、年を重ねても愛している。

 ともやはなぜあんなに人目を気にするのか。
 日本にいた時もそうだった。「人が見る」と嫌がった。
 ともやは物事を見通すが、人の考えはよくわかっていない。利益で誘導する事で人の考えを読むが、そうでない時は自分の思考を投影しているようだ。
 ともやの考えでは「あんなつまらない年増」だ。

 なぜだろうか。誰にもできない事をやり、美しいと言われている。それは本心からの言葉だとわかるだろう。なぜ受け取れないのか。
 ともやだけが自分を認めない。だから私が手に入れられた。

 花に埋もれそうなともやの部屋で服を脱がせるとき、早くあのドレスを着せたいと思う。
 各国を訪問しなければいけないのが残念だ。今すぐにでも式を挙げたい。
 しかし、それがあったから婚約者になることを承諾させられた。

 ともやには私の名を呼ぶように頼んでいる。いや強制していると、脅していると言った方がいいか。
 だが彼女は何も言わない。ただもう止めてと言う。もう充分。無理。約束を守って。疲れた。明日も予定がある。離して。

 その全てに反論できる。まだ足りない。出来る。守れない。眠っていい。休めばいい。離さない。
 愛想を尽かされても仕方が無い。だが彼女は許してくれる。

 せめてドレスを着た姿を見たい。
 微調整の為に着たが、その姿を見せてくれなかった。女性陣による警護も厚かった。
 私が望みを伝えて作らせたのに。
 とても美しかった。似合っていた。趣味がいいと言ってはくれるが実物が見たい。何より、そのドレスは脱がせる為にある。

 ドレスは彼女が褒めていたシェラド領のレースを使った。ベリス産の絹から編まれた繊細なレースを彼女は気に入っていた。ヴェールはより細く細かく編んである。
 白い霞のようなヴェールを上げるとともやの黒い瞳が見える。その瞬間を待っている。
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