終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年10月1-1

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 妾達はとても歓迎された。
 実際の目当てはイユリスの王太子と、そしてオーサーだが。
 オーサーは男の服で、騎馬で移動している。
 人はオーサーに興味を持ち、だがあの髪や目の色と評判に尻込みし、オーサーから話しかけると取り囲んだ。

 男の服のオーサーを案内し見慣れた後で、パーティでオーサーがドレスを着ると、皆が目を見張る。
 まだ目新しい形のドレスはオーサーが流行らせたものだ。やはりオーサーがつけ出した新しいアクセサリーをつけている者もいるが、本物との違い、その合わせ方を女性達が食い入るように見ている。
 どこにいても目立つが安心していられる。オーサーがやる事であれば間違いはないと信頼できる。

 レイサス様がオーサーと婚約できたのはよかった。その方が安定する。
 オーサーにとっては負担になるのかもしれないが、オーサーがいる事で、レイサス様を将来まで信用できる。

 ベリスでは茶や蚕のことを聞き、ザイリスでは木材の特性について話していた。本当に何でも知っている。
 ツァイリスでは船の種類や、切り上がり性能。なぜそんな質問ができるのか不思議がられていた。妾も不思議だ。

 イユリス主導の製紙工場を見学し、派遣している技術者を入れ替えることを決めた。
 イユリス国内にも製紙工場ができる。
 ツァイリス側はどこか決まり悪げな対応だった。オーサーの敵ではない。

 製紙の買い取り金額はそれほど下げず、材料費や工賃として分配する比率を増やすことを承諾させた。
「こちらから派遣する技術者は数が減り、それほど訓練を積んでいない者も含まれます。その分費用を圧縮できるので他に回せるでしょう。われわれが製紙価格を下げず、われわれの収入となる人件費を下げたということを、貴国のみならず他国も喜んでくれるでしょう」

 本当に、味方と関係のない人間にとっては気持ちよく美しい笑顔だ。だが対する側には恐ろしい笑顔。
 イユリスは損を引き受けてまで、製紙に関わる人間の生活向上を願っている。何か対策を取らないならわかっているんだろうなという脅し。
 叔兄に早く会ってほしい。どんな話をするのだろうか。
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