終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年10月8-1

　彼女達はいろいろな所に見学に行ったが、ほとんどが女性向ではない。だがどこも、彼女の希望で訪れている。
　行った先々でオーサー贔屓の人間を作っている。不思議だ。

　パーティでの様子を見ていると、会話をしているようだが、聞き出している内容の方が多い。
　聞き方が上手いのだろう。相手はこんなに興味を持って聞いてくれたと喜んでいる。彼女は聞いた中から必要な事を取捨選択すればいい。

　男の服で行動している所を見たときは驚いたが、よく似合っていた。彼女の本質か。
　だがドレスも似合っていて、守る必要がありそうに見える。実際は全く無いが。

　パーティにまで男の服で参加したのには驚いた。
　その時は王太子とも踊らない。
　では私が誘ったらどうするのだろうか。興味が湧いた。

　パーティでダンスを踊るのは初めてだ。
　ダンスを楽しいと思うのも初めてだ。
　女に振り回されるのも初めてだ。それも物理的に。

　強引に踊らされた。人に強制されたのはいつが最後だっただろうか。嫌なものではない。
　失敗してもいいと言い、失敗は自分の責任だと保障する。私が間違える事を待っている人間は多い。だが私の失敗の責任を引き受ける人間はいない。
　安心感があれば、子は新しい事に挑戦するものだ。この年になっても同じだとは。

　器用だ。この細い体で人の動きを調整できる。見た目より筋力があり、おそらく武術も見た目より強い。背筋の動き。よく鍛えている。
　音感はもちろん間違いがないので、本当に安心して踊れる。上手いパートナーと組んだ女の気持ちがわかった。

　体力は勿論私よりも無い。先に呼吸が乱れた。私を踊らせているせいもあるだろう。
　残念だが終わらせなくてはいけない。