336 / 365
被保護編 339年
339年11月6
しおりを挟む
耐えられない。無理だ。本当に無理だ。
あの時を幾度繰り返したか。何度繰り返しても彼女を説得できない。
「大丈夫。ひとりで生きられる。あなたのおかげで」
あなたを一人にするつもりはなかった。何があっても離さないし、ついて行くつもりだった。
あなたに私が必要ないのはわかっている。だが必要だと言えば私の側にいてくれると思っていた。
「私は迷った子猫を飼ったんじゃなくて、野生動物を保護した。本来の環境に戻さないと。馴れ合ってはいけない。私は構いすぎた。反省している」
ともやらしい。育てはするが甘やかさない。私は安心していた。拾われて、面倒を見てもらい、守られ、そして彼女には珍しく甘やかされた。私が幾度となく約束を破っても許してくれた。受け入れてくれた。一人で眠る方法さえ忘れるほど。
「私は元々いなかったはずの人間だから、前に戻っただけだよ。レイサス、あなたのことは信頼している。これからをよろしくね」
本当にともやは。事実を伝え信頼を伝え励ます。ともやの想定に達しなければ自分の責任。必死でやるしかない。ともやのいない世界で。ともやが他の男のものになっているのに。
腹の内から狼にでも齧られている気がする。今この瞬間、あるいは次の瞬間。特に夜は辛い。
耐え難い。
ともやが一度だけ着たドレスを握る。あの時は幸せだった。あの時は私のものだった。
ともやは病床に伏してるという。いつもの頭痛と、そして今までの疲れだろう。
ゆっくり休めているのだろうか。ともやは体調が悪いときは一人になりたがる。それを理解してくれるだろうか。
たとえ戦争が起こっても、ともやを取り戻したい。
だがそこで取り戻したともやは、決して私を許さない。
どうやっても元には戻らない。何をやっても。
元のともやでなくともいい。私を見なくてもいいから側に。
ともやの望み通り一人にさせてもいい。他の男が側にいなければ。
幾度となく同じ事を考え続ける。眠れない。
酒を飲んでも酔えず、眠れば悪夢を見る。
立てなくなるほど剣を振っても、横になると眠れない。
シルヴィオは女を勧めた。あれは本当に即物的だ。ともやと似ている。
無理だ。暴力的な空しさに襲われるだけだ。破壊的な。自分とこの国と、ソファリスを壊してしまいたい。国の為にともやを失った。
壊す事はできない。彼女が一番避けようとした事態だ。その為にソファリスに残った。
レンツォーリは、彼が望んだようにソファリスに遣った。彼女の近辺に潜り込むだろう。
羨んでいる。私もそうしたい。せめて見ていたい。だが見ているだけでは無理だ。特に他の男といるのなら。
結婚しているはずだった。なぜ私は彼女の服だけを握り締めているのだろう。
あの時を幾度繰り返したか。何度繰り返しても彼女を説得できない。
「大丈夫。ひとりで生きられる。あなたのおかげで」
あなたを一人にするつもりはなかった。何があっても離さないし、ついて行くつもりだった。
あなたに私が必要ないのはわかっている。だが必要だと言えば私の側にいてくれると思っていた。
「私は迷った子猫を飼ったんじゃなくて、野生動物を保護した。本来の環境に戻さないと。馴れ合ってはいけない。私は構いすぎた。反省している」
ともやらしい。育てはするが甘やかさない。私は安心していた。拾われて、面倒を見てもらい、守られ、そして彼女には珍しく甘やかされた。私が幾度となく約束を破っても許してくれた。受け入れてくれた。一人で眠る方法さえ忘れるほど。
「私は元々いなかったはずの人間だから、前に戻っただけだよ。レイサス、あなたのことは信頼している。これからをよろしくね」
本当にともやは。事実を伝え信頼を伝え励ます。ともやの想定に達しなければ自分の責任。必死でやるしかない。ともやのいない世界で。ともやが他の男のものになっているのに。
腹の内から狼にでも齧られている気がする。今この瞬間、あるいは次の瞬間。特に夜は辛い。
耐え難い。
ともやが一度だけ着たドレスを握る。あの時は幸せだった。あの時は私のものだった。
ともやは病床に伏してるという。いつもの頭痛と、そして今までの疲れだろう。
ゆっくり休めているのだろうか。ともやは体調が悪いときは一人になりたがる。それを理解してくれるだろうか。
たとえ戦争が起こっても、ともやを取り戻したい。
だがそこで取り戻したともやは、決して私を許さない。
どうやっても元には戻らない。何をやっても。
元のともやでなくともいい。私を見なくてもいいから側に。
ともやの望み通り一人にさせてもいい。他の男が側にいなければ。
幾度となく同じ事を考え続ける。眠れない。
酒を飲んでも酔えず、眠れば悪夢を見る。
立てなくなるほど剣を振っても、横になると眠れない。
シルヴィオは女を勧めた。あれは本当に即物的だ。ともやと似ている。
無理だ。暴力的な空しさに襲われるだけだ。破壊的な。自分とこの国と、ソファリスを壊してしまいたい。国の為にともやを失った。
壊す事はできない。彼女が一番避けようとした事態だ。その為にソファリスに残った。
レンツォーリは、彼が望んだようにソファリスに遣った。彼女の近辺に潜り込むだろう。
羨んでいる。私もそうしたい。せめて見ていたい。だが見ているだけでは無理だ。特に他の男といるのなら。
結婚しているはずだった。なぜ私は彼女の服だけを握り締めているのだろう。
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる