終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 340年

340年1月1-2

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 オーサーは変わった。前よりも壁が厚くなった。親しい者の前では不機嫌になったり困ったりからかう事もあったが、今は常に礼儀正しく沈着。表情を崩さない。
 叔兄は辛くないのだろうか。オーサーは義務を果たしている。けれどオーサーではない。

 オーサーはもっと生き生きしていた。オーサーにはやりたい事もやるべき事もあって、それの障害になる事でも、側を歩くだけで粉砕するくらいの輝きがあった。
 今は叔兄の後ろで存在を消している。時々鋭く光って、懐刀のようだ。

 叔兄はそれでいいのだろうか。自分の懐に入っていたほうが安心なのか?
 オーサーは勝手に自分で好きな所を歩き、どこへ行くか、いついなくなるかわからないところがオーサーらしかった。
 囲い込めればオーサーでなくなってもいいのだろうか。

 オーサーが残ってくれたのは嬉しい。
 しかしこれは違う。オーサーは自分の意思で残ってほしかった。
 いやこれもオーサーの意思か。違う。強制だったのだろう。

 こうなってみると、オーサーはレイサス様に気を許していた。近寄られたら遠ざかり、触られれば振り払い、隣に立ってもレイサス様を見ることはなかったが、雰囲気が違った。叔兄といる時とは違う。

 叔兄はレイサス様のようにオーサーの手を握ったりはしない。近寄ってもある程度の距離を置く。
 しかしそれでもオーサーは体を強張らせている。
 レイサス様の時のように逃げることはないが、叔兄の動きに緊張している。

 ランリスの件はすぐに片付いた。叔兄が動けば終わる。
 イユリスの世論も、オーサーが片付けた。両国の関係も、正式には変化がない。
 今は何も問題はない。記録として残すような問題はない。

 しかし妾は居たたまれない。オーサーを見ているのが辛い。
 結婚しているはずだった。レイサス様と。
 レイサス様はどんなに幸せそうな笑顔を見せただろうか。
 あのドレスを着たオーサーは本当に綺麗だった。あれを着てレイサス様と並んだ所を見たかった。

 もう戻らない。
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