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第2章 碧斗、中学1年生。あさひ、社会人3年目。
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「わぁ、すごいおいしそう!ゆみママの唐揚げ好きだから嬉しい!」
「そんな風に言ってくれるの、あさひちゃんだけよ。たくさん食べて行ってね!」
「俺も言ってるだろー」
「拓海は言っとけばいいって思ってるでしょ。女はね、そうゆうのちゃんとわかってるからね!」
「拓海くん言われてるー!」
いつになく賑やかな我が家の食卓、あさひがいるからだ。
明日帰る兄貴のためにと、あさひを呼んで夕ご飯だ。
あさひが来てくれるのはうれしいけど、隣に座るオレより前に座る兄貴の方ばかり見てるのがなんだか不満だった。
「………。」
だから今日も変わらず唐揚げをもぐもぐ…口いっぱいに入れてもぐもぐ。早く食べ終わりたくてもぐもぐ…
あさひも楽しそうなんだよな。仕事が忙しくて疲れてるって言うわりに、兄貴としゃべってるあさひの声はいつもより元気に聞こえるしよくリアクション大きいし、めちゃくちゃ話すし、オレと話してる時とは違うって言うか…
「あさひ、箸の持ち方キレイだな」
「え…、何急に?」
「ううん、昔もっとおかしな持ち方してなかった?」
「そんなこと覚えてるの!?」
「ちっちゃい手で一生懸命箸持ってんの可愛いなぁって思ってたからな」
「な、直したんだよ!恥ずかしいから!」
「へぇ、がんばったんだな」
あさひが恥ずかしそうに照れて、そんな姿に兄貴が微笑んで。
あさひの手は白くてほっそりしてピシッと背筋が伸びるような箸の持ち方をする。何度も持ち方教えてもらった。
あさひはずっと箸の持ち方がキレイだって思ってた。
あさひの手はいつだってオレより大きかった。
昔の話ばっかり聞きたくねぇよ。
やっぱり唐揚げを頬張るしかできなくて。
なんかすげぇ、苦しい。
唐揚げ食いすぎたかな。
鉛が溜まっていくように重い。
「…ごちそうさま」
口の中のから揚げを無理にお茶で流し込んで箸を置いた。
「碧斗、もういいの?」
「もういい」
「ご飯残してるじゃない」
「いらない」
「せっかくあさひちゃんも拓海も来てるんだからもう少しっ」
母さんの言葉を無視して立ち上がった、ダンッと机をたたきつけるように箸を置いて。
「碧斗!」
むしゃくしゃしてしょうがなかった。
「いらねぇっつってんだろ!」
「碧斗、母さんにそんな言い方するな」
つい声が大きくなったオレに兄貴がキッと瞳に力を入れた。睨むようにオレを見てる。
それに無性に腹が立った。
「なんだよっ、久しぶりに帰ってきた奴に説教なんかされたくねぇよ!」
声を兄貴にぶつけるみたいに叫んだ。
そのまま部屋を出てダダダダッと階段を駆け上がって、自分部屋に走った。引きこもるようにわざとバタッと音を立ててドアを閉めた。
「……っ」
最悪だ。
なんだあれ。何だよ。
最悪だよ。
何もかも、オレも…
最悪だ。
なんで泣きそうになってるんだよ…っ
そのままベッドに倒れこんだ。枕に顔を埋めて、電気も点けないままに。
目が熱い、じわじわと熱っぽくなっていく。
こんなことで泣きたくねぇのに、子供かよオレは!
ずっと子供なんだよ…っ
「そんな風に言ってくれるの、あさひちゃんだけよ。たくさん食べて行ってね!」
「俺も言ってるだろー」
「拓海は言っとけばいいって思ってるでしょ。女はね、そうゆうのちゃんとわかってるからね!」
「拓海くん言われてるー!」
いつになく賑やかな我が家の食卓、あさひがいるからだ。
明日帰る兄貴のためにと、あさひを呼んで夕ご飯だ。
あさひが来てくれるのはうれしいけど、隣に座るオレより前に座る兄貴の方ばかり見てるのがなんだか不満だった。
「………。」
だから今日も変わらず唐揚げをもぐもぐ…口いっぱいに入れてもぐもぐ。早く食べ終わりたくてもぐもぐ…
あさひも楽しそうなんだよな。仕事が忙しくて疲れてるって言うわりに、兄貴としゃべってるあさひの声はいつもより元気に聞こえるしよくリアクション大きいし、めちゃくちゃ話すし、オレと話してる時とは違うって言うか…
「あさひ、箸の持ち方キレイだな」
「え…、何急に?」
「ううん、昔もっとおかしな持ち方してなかった?」
「そんなこと覚えてるの!?」
「ちっちゃい手で一生懸命箸持ってんの可愛いなぁって思ってたからな」
「な、直したんだよ!恥ずかしいから!」
「へぇ、がんばったんだな」
あさひが恥ずかしそうに照れて、そんな姿に兄貴が微笑んで。
あさひの手は白くてほっそりしてピシッと背筋が伸びるような箸の持ち方をする。何度も持ち方教えてもらった。
あさひはずっと箸の持ち方がキレイだって思ってた。
あさひの手はいつだってオレより大きかった。
昔の話ばっかり聞きたくねぇよ。
やっぱり唐揚げを頬張るしかできなくて。
なんかすげぇ、苦しい。
唐揚げ食いすぎたかな。
鉛が溜まっていくように重い。
「…ごちそうさま」
口の中のから揚げを無理にお茶で流し込んで箸を置いた。
「碧斗、もういいの?」
「もういい」
「ご飯残してるじゃない」
「いらない」
「せっかくあさひちゃんも拓海も来てるんだからもう少しっ」
母さんの言葉を無視して立ち上がった、ダンッと机をたたきつけるように箸を置いて。
「碧斗!」
むしゃくしゃしてしょうがなかった。
「いらねぇっつってんだろ!」
「碧斗、母さんにそんな言い方するな」
つい声が大きくなったオレに兄貴がキッと瞳に力を入れた。睨むようにオレを見てる。
それに無性に腹が立った。
「なんだよっ、久しぶりに帰ってきた奴に説教なんかされたくねぇよ!」
声を兄貴にぶつけるみたいに叫んだ。
そのまま部屋を出てダダダダッと階段を駆け上がって、自分部屋に走った。引きこもるようにわざとバタッと音を立ててドアを閉めた。
「……っ」
最悪だ。
なんだあれ。何だよ。
最悪だよ。
何もかも、オレも…
最悪だ。
なんで泣きそうになってるんだよ…っ
そのままベッドに倒れこんだ。枕に顔を埋めて、電気も点けないままに。
目が熱い、じわじわと熱っぽくなっていく。
こんなことで泣きたくねぇのに、子供かよオレは!
ずっと子供なんだよ…っ
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