10歳差の王子様

めぇ

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第3章 碧斗、高校2年生。あさひ、社会人7年目。

9.

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「碧斗っ!!」

ガタンッとさっきと比じゃないくらい大きな音がした。何かが外れるような嫌な音だった。

「…っ!」

びっくりしてドアの方を見ると締めたはずの鍵が外れ、眉間にしわを寄せ眉を吊り上げた兄貴がこっちを見ていた。まさか兄貴の馬鹿力で鍵ごとドアが開くと思ってなくてあんぐり口が開く。

「俺は毎日鍛えてんだからな、なめんなよ」

これは怒っているどころの騒ぎじゃない。

やられる…!!!

「ほら、行くぞ!」

俺の腕を掴んでグッと引っ張る。兄貴の力には勝てるわけなくて、足がもつれながらも立ち上がった。

「ブレザー着て、ちゃんとしろ」

兄貴がベッドの上のブレザーを手に取って俺に渡した。だけどブレザーは掴めなかった。

「…碧斗」

さっきまでの乱暴な声から落ち着いた声になる。

「…お前が来ないとあさひが悲しむだろ」

体に力が入らない。

ただ俯くしか出来ない。

何も答えられない。

 

どうしたって悲しませるじゃないか、俺の気持ちもあさひにとっては。

 

「…、あさひに会いたくないのか?」

「……。」

「もう子供じゃないんだから」

 

子供だよ。俺はずっと子供だ。


でもどうせならずっと子供のままでいたかった。


そしたらいつまでもあさひと手を繋いでいられたのに。

何も知らないままでいられたのに。

 

「あさひに、言うことあるだろ?」

「………。」

「大事なこと、あるだろ!」

「兄貴が決めつけんなよ、ムカつく」

「俺は碧斗の兄ちゃんだからな!お前よりわかってることも多いんだよ!」

グイッと腕を引っ張られた。でもそれが気に入らなくて振り払った。

「何をわかってんだよ!?兄貴がわかるわけないだろ!!」

目にはいっぱい涙が溜まって、どこまでも俺は子供で、だから自分ではどうしたって止められなくて。

「あさひより先に生まれた兄貴に何がわかるんだよ!わかるわけねぇーだろ!!」

 

いつかは身長だって追い越せる。

いつかは大人にだってなる。

 

でもあさひの時間だって進んでいくんだ。

 

「兄貴みたいに子供だったあさひのことを知らない!大人になったあさひの悩みなんてわからない!たった10年なのに…っ」


10年って長いのかな、短いのかな。

でも埋まらない10年なんだ。

 

「俺だって先に生まれたかった、俺が兄貴になりたかったよ!」


子供の頃はいつかを夢見るだけで思わなかったのに、どうして大人になるにつれてこんなこと思うんだ。


なんでこんなに涙が出るんだ。

どうしてこんなに胸が痛いんだ。


「俺が先に生まれたかった…っ!」


叶わない想いはただただしんどいだけだ。

こんなこと言いたくなかった。

 

 

「でもそんなの碧斗じゃないだろ?」

 

 

下を見てポロポロと涙を流す俺に兄貴がゆっくり口を開いた。

「もし碧斗が俺の兄貴だとして、それは碧斗じゃないよ」

「……。」

「生まれて育って碧斗が出来上がるんだから」

「…なんだよそれ」

「あさひは“今の碧斗”だからいいんだと思わないか?」



今の俺だから?

それはどーゆう意味…

 

「めちゃくちゃギリだからな!行くぞ!!」

「っ!」

ぎゅっと掴まれ腕を引っ張られる。階段を駆け下りて強引に兄貴の車に押し込められた。

もう何も言えないまま車は動き出した。
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