幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります

ねこ鍋

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光の勇者エリーの華麗なる戦闘術

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 周囲の地面に現れた無数の入り口から、数え切れないほどのモンスターたちが登ってくる。
 ミノタウロスにドラゴン、巨大なスライムにレイスまで、様々な種類のモンスターたちだ。
 その中の1匹、牙を生やした豚頭のモンスターが前に出てきた。

「見つけたぜえこの腐れ勇者め」

「光の勇者よ。豚はその程度も覚えられないの?」

「うるせえ! さんざん俺たちを殺して回りやがって!」
「てめえのせいで俺たちはダンジョン内に隠れているしかなかったんだ!」
「貴様を殺して、俺たちはやっと自由になれる!」

 他のモンスターたちも同調して騒ぎはじめた。
 どうやらよっぽど恨まれてるらしい。

「そんなの知らないわよ。出たいなら好きに出ればいいじゃない」

「お前のせいだろうが……!」
「貴様が俺たちの間でなんて呼ばれていたか知ってるか?」
「冷酷非道の悪魔。和解の可能性ゼロ。モンスターよりもモンスターらしい殺戮の勇者。歴史上最もモンスターを殺した大量殺人鬼。それが貴様だ!」

「殺人じゃないわよ。アンタたち人間じゃないんだから。せめて大量屠殺者とでも呼んでちょうだい」

「ふざけるな! そんなことはどうでもいい!」

 モンスターたちがヒートアップする。
 というか普通に話しているが、人語を解するモンスターはかなり知能が高い証だ。その分だけレベルも高い。
 さっきの牙を生やした豚頭だっておそらくはハイオーク、あるいはより上位のオークキングだろう。
 もしそうなら推定レベルは120。

 そんなのが数え切れないほどの量で俺たちを取り囲んでいる。
 しかも、地面に作られたダンジョンの入り口からは、今もモンスターたちが現れていた。
 この様子ならまだまだ増えそうだ。

 怜悧な顔のダンジョンマスターが静かに声を放つ。

「勇ましいのは結構だが、光の勇者の資格を失ったのだろう。これだけの数を相手にどうするつもりだ」

「雑魚は何匹集まったって雑魚のままでしょ」

「レベルも1になったそうだな」

「ちょうどいいハンデじゃない。アンタら倒してレベルアップの足しにしてあげるわ」

 フフンと不敵な笑みを浮かべてエリーが言い返す。
 その表情には僅かな怯えすらも見られなかった。

 マジですごいな。
 光の勇者の資格を剥奪されたのも、レベルが1になってしまったのも全部本当なのに、まったく臆する様子がない。
 その余裕がどこからくるのかわからないが、俺も見習わないといけないな。

「あのエリーを八つ裂きにできる日が来るなんてなあ」
「弱体化したんだろ。嬲り殺しにしてやるぜ」
「おいおい、まじでレベルが1だぜ!」

 どこかでそんな声が聞こえた。
 どうやら「ステータス」を使えるモンスターがいたみたいだな。

「よっしゃあ! これまでの恨みを晴らしてやる! 行くぞ!!」

 俺たちを囲むモンスターの一部が、集団となって襲いかかってきた。
 その数はざっと見ても数十体。
 それだけの数が同時に走り出したんだ。足音で大地が揺れ、土煙がもうもうと巻き上がる。まさに圧巻だった。

 集団の暴力はそれだけで力となる。
 まともに戦っても勝ち目はない。

 なのに、その様子をエリーは笑みを浮かべたまま見ていた。
 手を空へと掲げ、女神様から授かった神聖魔法を唱える。

「<神器装換>」

 光が手のひらに集まっていく。
 それを強く握りしめた。

「出でよ、聖剣エクスカリバー」

 手の中の光が、光り輝く聖なる剣に変わった。

 本来の<神器装換>は聖剣と聖盾、聖鎧を生み出す神聖魔法だが、今のエリーの魔力では聖剣しか生み出せないみたいだった。
 もっとも、それだけで十分だ。
 現れた聖剣を振り上げると、モンスターたちの群れに向けて構え──

「死ねやゴミどもおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!」

 そのまま聖剣を投げつけた!

「「ギャアアアアアアアアアアッッッ!!!!」」

 聖剣が群れをなぎ倒し、突き刺さった地面を中心に聖なる光の爆発を巻き起こした。
 モンスターたちが紙切れのように吹き飛んでいく。

 光の剣は悪しき者たちにとっては猛毒だ。
 光に当たるだけでダメージを受けるし、かすり傷でもレベルが低ければ即死する。
 そうでなくても対モンスター特攻の加護を受けているため、ダメージが数倍にもなるんだ。

 さっきまでの勢いが消え、モンスターたちがうろたえはじめる。

「お、おい、勇者の資格を失ったんじゃなかったのかよ!」
「思いっきり聖剣召喚してるじゃねえか!」
「しかも投げてくるぞあいつ! 正気か!?」
「だが投げちまったらもう使えねえ。今がチャンスだ!」

 はじめは混乱していたモンスターたちだが、逆にチャンスだと気が付いて立ち直りはじめる。
 エリーは口元に笑みを浮かべたままだった。

「装換解除」

 投げつけた聖剣が消滅する。
 そして空に向けて手を掲げた。

「<神器装換>聖剣エクスカリバー」

 その手に光り輝く聖剣が再び現れた。

「……は?」

「死ねやおらあああああああああっっっ!!!!」

「「ギャアアアアアアアアアア!?」」

 襲い掛かろうとしていたモンスターたちのど真ん中に再び聖剣を投擲した。
 ゴミのように吹き散らされるモンスターたち。
 なんだか哀れみすら感じるな。

「……ちっ。二本が限界みたいね」

 エリーが舌打ちをすると、荷物の中から赤いポーションを取り出した。
 魔法の使用には魔力を消費する。その魔力を回復させるポーションだ。
 それを一気飲みすると、空になった容器を投げ捨てる。

「さて、いくわよ」

 ニィッと口の端を吊り上げる。

「装換解除。<神器装換>聖剣エクスカリバー!!」

「ま、まて、やめろ! 俺たちはまだなにも……」

「言い訳ならあの世でしやがれえええええええええ!!!!!」

「「ギャアアアアアアアアアアッッッ!!!!」」

 三度聖剣が投擲され、モンスターたちが風に舞う木の葉のように吹き飛んでいく。

「なんなんだあいつ、めちゃくちゃだ! 本当に勇者なのか!?」
「だが勇者の資格は剥奪されたって……」
「そりゃそうだ、あんなの人間じゃねえ。化け物だ!」

 モンスターにまで化け物扱いされているエリーさん。
 ついさっきまで数え切れないほどいたモンスターたちも、今では半分ほどに減っていた。
 その残った半分も戦意を喪失している。実質的には壊滅だった。

「ヤッパリあいつ脳筋じゃなイカ」

 パンドラの呆れる声が聞こえた。

「くそっ、せめてこっちの人間だけでも……!」

 オークキングと思われるモンスターが、巨大な斧を俺に向けて振り下ろしてくる。 
 しかし。

 ──ギィン!

 俺の届く前に空中で火花が散り、オークキングの斧が弾き返された。

「な、なんだ!?」

「あー悪いな。俺の周囲には魔剣グラムの力を展開してるんだ。その程度の攻撃なら届かないよ」

「豚ごときが我に勝てるわけないダロウ!」

 パンドラが勝ち誇る。
 なんか口調がエリーに毒されてないか?

「もういい。下がれ」

 怜悧な声が響き、モンスターたちの動きが止まる。
 声の中心にいたのはあのダンジョンマスターだった。

 いよいよボスのお出ましってわけだな。
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