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俺が最強だって証明してやる
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ガドーさんについて行きながら一階のロビーに降りる。
予想通り酔っぱらった冒険者が暴れていた。
机や椅子がなぎ倒されていてひどい有様だ。
それをギルドの職員が取り囲んで必死に抑えようとしてるが、うまくいかないらしい。
暴れている冒険者はまだ若い。俺と同じくらいだろう。
聞いた話だと朝まで飲み続けた挙句に、俺たち冒険者が街を守ってるのに金を取るとは何事だ、とか言って払わずに店を出たらしい。
なのでこうして冒険者ギルドに連れてこられたようだった。
「この腰抜けどもが、てめえらのせいで俺たち冒険者が舐められてるんだろうが! だから俺が冒険者のありがたさを教えてやったんだよ! むしろ授業料をよこせってんだ!」
無茶苦茶なことを叫んでいる。
まだ酔っているらしい。
それにしても、まだ腰の剣を抜かないだけの理性は残っているようだが、それもいつまでもつかわからない。
何かのきっかけに抜いてしまうことはあるだろう。
そうなればこちらも自衛のために剣を抜くしかない。
相手を無傷で捕らえられるのは、レベル差が大きく開いているときだけだ。
ましてや高レベルの冒険者同士が剣を抜いて戦うとなれば、血を見ずに終わることは難しい。
最悪の場合、死傷者すら出るだろう。
ロビーの空気はピリピリとした緊張感で張り詰めている。
この感じ、なんだか懐かしいな。
冒険者ギルドは荒くれ者ばかりだ。
この程度のトラブルはいつものこと。
ガドーさんの鋼鉄の胃袋に穴が空くのも仕方ないだろう。やっぱギルド長なんて絶対やりたくないな。
「まったく、お前は腕は確かなんだが、酒癖の悪さだけは治らんな」
ガドーさんがぼやきながら男に近づいていく。
男は一瞬だけガドーさんを見たが、その視線はさらに奥、後ろをついてやってきた俺へと向けられた。
「てめえ、まさかイクスか……?」
「え? そうだが、なんで俺のことを知ってる?」
会ったことはないと思うのだが……。
だが、男は違ったようだった。
「同年代に貴様がいたせいで、俺たちはいつも二番手だった。どいつもこいつも、イクスの話ばかりだ! だから死ぬほど修行した。女の尻を追っかけるしか脳のないやつに負けるわけがねえ! そうしたら、貴様は女を追いかけてどこかへと逃げやがった。わかるか、この俺の怒りが?」
もちろんわかるわけがない。
というか俺はいまだにこいつの名前すら知らないんだが。
そんな奴が勝手に俺に怒ってるとか言われても、どう反応したらいいんだよ。
酔っ払いというのは本当に面倒くさい。
「だが! てめえは今日、俺の目の前に現れた。それはつまり、俺に切られても文句はねえってことだよなあ!」
そういって腰の剣を抜き放った。
即座にガドーさんが大声で怒鳴る。
「ステイン! ギルド内での武器使用はご法度だぞ!」
「うるせえ! こいつを殺して俺が最強だって証明してやる!」
剣を構え、俺に向かって猛然と駆け出した!
が、その動きはあまりにも遅い。
こいつよくこんなんで俺に勝とうとか言い出したな。
というかそれ以前に、こんなレベルじゃ冒険者としては新米レベルだろう。
さすがにゴブリンには勝てるだろうが、オーク相手だと勝てるかどうか。
まあ酔っぱらってるし、それで実力が出せてないのかもな。
ガドーさんが俺に向けて何かを叫ぶ。
危ないとか、そんなところだろうか。
女の人の悲鳴も聞こえた。
エリーのわけはないから、たぶん受付のお姉さんだろう。
エリーが俺の危機に際して悲鳴を上げてくれるとか最高のシチュエーションなんだが、あいつ俺がシェイドと戦ってるときでさえむしろ楽しそうだったからな。
多分俺の心配とか一生してくれないんだろうな。
でも最近エリーは可愛いところも多くなってきたし、そろそろ女の子らしい声のひとつくらいあげてくれそうな気がしないでもない。
よし。これはやはり夜の調教をもっと増やすしかないな。
なんて考えていたらようやく男が俺の目の前にやってきた。
みえみえの大振りで繰り出される剣を横に避ける。
そのまま足を突き出し、男の足をすくい上げて転ばせた。
酔っ払い相手ならこの程度でいい薬になるだろう。
男は空中で一回転し、走ってきた勢いのまま壁に激突した。
「ぐあっ!」
思ったよりも大きな衝撃音が響き、ギルドの壁に亀裂が走る。
それを見て俺は違和感を覚えた。
トラブルが日常茶飯事のギルドはかなり頑丈に作られている。
多少の攻撃くらいじゃ傷ひとつつかない。
その壁に亀裂を走らせるなんて、相当な威力だったってことだ。
でも、今の攻撃にそんな威力あったかな?
気がつくとギルド内が静まり返っていた。
ガドーさんを含め、集まっていた職員たちがみんな呆然としながら俺を見ている。
「閃光のステインが、秒殺……」
「何をしたんだ、何も見えなかったが……」
「俺はかろうじて見えた。ステインの攻撃を紙一重でかわすと、足をかけて転ばせながら、さらに壁に向けて蹴り飛ばしやがった」
「蹴りだけであの威力だと……」
静かなざわめきが広がっていく。
「えっと、どうしたんですか?」
困惑しながらガドーさんを振り返る。
「イクス。お前が今倒したのは、この街でも冒険者ランク3位に入るほどの実力者だ」
「えっ、今ので3位?」
あんな程度でそんな上位に入れるの?
驚く俺に、ガドーさんが苦笑する。
「プラス520と聞いた時は冗談かと思ったが……。どうやら本当みたいだな」
予想通り酔っぱらった冒険者が暴れていた。
机や椅子がなぎ倒されていてひどい有様だ。
それをギルドの職員が取り囲んで必死に抑えようとしてるが、うまくいかないらしい。
暴れている冒険者はまだ若い。俺と同じくらいだろう。
聞いた話だと朝まで飲み続けた挙句に、俺たち冒険者が街を守ってるのに金を取るとは何事だ、とか言って払わずに店を出たらしい。
なのでこうして冒険者ギルドに連れてこられたようだった。
「この腰抜けどもが、てめえらのせいで俺たち冒険者が舐められてるんだろうが! だから俺が冒険者のありがたさを教えてやったんだよ! むしろ授業料をよこせってんだ!」
無茶苦茶なことを叫んでいる。
まだ酔っているらしい。
それにしても、まだ腰の剣を抜かないだけの理性は残っているようだが、それもいつまでもつかわからない。
何かのきっかけに抜いてしまうことはあるだろう。
そうなればこちらも自衛のために剣を抜くしかない。
相手を無傷で捕らえられるのは、レベル差が大きく開いているときだけだ。
ましてや高レベルの冒険者同士が剣を抜いて戦うとなれば、血を見ずに終わることは難しい。
最悪の場合、死傷者すら出るだろう。
ロビーの空気はピリピリとした緊張感で張り詰めている。
この感じ、なんだか懐かしいな。
冒険者ギルドは荒くれ者ばかりだ。
この程度のトラブルはいつものこと。
ガドーさんの鋼鉄の胃袋に穴が空くのも仕方ないだろう。やっぱギルド長なんて絶対やりたくないな。
「まったく、お前は腕は確かなんだが、酒癖の悪さだけは治らんな」
ガドーさんがぼやきながら男に近づいていく。
男は一瞬だけガドーさんを見たが、その視線はさらに奥、後ろをついてやってきた俺へと向けられた。
「てめえ、まさかイクスか……?」
「え? そうだが、なんで俺のことを知ってる?」
会ったことはないと思うのだが……。
だが、男は違ったようだった。
「同年代に貴様がいたせいで、俺たちはいつも二番手だった。どいつもこいつも、イクスの話ばかりだ! だから死ぬほど修行した。女の尻を追っかけるしか脳のないやつに負けるわけがねえ! そうしたら、貴様は女を追いかけてどこかへと逃げやがった。わかるか、この俺の怒りが?」
もちろんわかるわけがない。
というか俺はいまだにこいつの名前すら知らないんだが。
そんな奴が勝手に俺に怒ってるとか言われても、どう反応したらいいんだよ。
酔っ払いというのは本当に面倒くさい。
「だが! てめえは今日、俺の目の前に現れた。それはつまり、俺に切られても文句はねえってことだよなあ!」
そういって腰の剣を抜き放った。
即座にガドーさんが大声で怒鳴る。
「ステイン! ギルド内での武器使用はご法度だぞ!」
「うるせえ! こいつを殺して俺が最強だって証明してやる!」
剣を構え、俺に向かって猛然と駆け出した!
が、その動きはあまりにも遅い。
こいつよくこんなんで俺に勝とうとか言い出したな。
というかそれ以前に、こんなレベルじゃ冒険者としては新米レベルだろう。
さすがにゴブリンには勝てるだろうが、オーク相手だと勝てるかどうか。
まあ酔っぱらってるし、それで実力が出せてないのかもな。
ガドーさんが俺に向けて何かを叫ぶ。
危ないとか、そんなところだろうか。
女の人の悲鳴も聞こえた。
エリーのわけはないから、たぶん受付のお姉さんだろう。
エリーが俺の危機に際して悲鳴を上げてくれるとか最高のシチュエーションなんだが、あいつ俺がシェイドと戦ってるときでさえむしろ楽しそうだったからな。
多分俺の心配とか一生してくれないんだろうな。
でも最近エリーは可愛いところも多くなってきたし、そろそろ女の子らしい声のひとつくらいあげてくれそうな気がしないでもない。
よし。これはやはり夜の調教をもっと増やすしかないな。
なんて考えていたらようやく男が俺の目の前にやってきた。
みえみえの大振りで繰り出される剣を横に避ける。
そのまま足を突き出し、男の足をすくい上げて転ばせた。
酔っ払い相手ならこの程度でいい薬になるだろう。
男は空中で一回転し、走ってきた勢いのまま壁に激突した。
「ぐあっ!」
思ったよりも大きな衝撃音が響き、ギルドの壁に亀裂が走る。
それを見て俺は違和感を覚えた。
トラブルが日常茶飯事のギルドはかなり頑丈に作られている。
多少の攻撃くらいじゃ傷ひとつつかない。
その壁に亀裂を走らせるなんて、相当な威力だったってことだ。
でも、今の攻撃にそんな威力あったかな?
気がつくとギルド内が静まり返っていた。
ガドーさんを含め、集まっていた職員たちがみんな呆然としながら俺を見ている。
「閃光のステインが、秒殺……」
「何をしたんだ、何も見えなかったが……」
「俺はかろうじて見えた。ステインの攻撃を紙一重でかわすと、足をかけて転ばせながら、さらに壁に向けて蹴り飛ばしやがった」
「蹴りだけであの威力だと……」
静かなざわめきが広がっていく。
「えっと、どうしたんですか?」
困惑しながらガドーさんを振り返る。
「イクス。お前が今倒したのは、この街でも冒険者ランク3位に入るほどの実力者だ」
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