魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした

月影みるく

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第19話 はじめての人間界

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空が、明るい。

魔界の空より、ずっと。

セラフィナは、馬車の窓から外を見ていた。

「……まぶしい」

「人間界の空は、少し高いですからね」

リリアが、やさしく答える。

セラフィナの隣には、
父――魔王。

その後ろ、そして外側には、
近衛騎士クロウ・フェルゼン。

さらに。

馬車の周囲を囲むのは、
人間界と魔界、混成の護衛部隊だった。

(……多い)

「セラフィナ」

魔王が、低く声をかける。

「怖くはないか」

「……だいじょぶ」

少しだけ考えてから、答える。

「みんないる」

その一言で、
馬車の外の護衛たちの背筋が伸びた。

* * *

王都・正門。

門が、ゆっくりと開かれる。

人間界の兵士たちは、
武器を構えず、胸に手を当てていた。

「――魔界より来訪!」

「魔王、ならびに姫君セラフィナ・ノワールを迎える!」

ざわめく民衆。

だが、恐怖より先に。

「……ちいさい」
「……可愛い……」

囁きが、広がる。

馬車の扉が開き、
セラフィナが姿を見せた瞬間。

空気が、止まった。

ノエル・クラークは、すぐに膝をつく。

「人間界王子、ノエル・クラーク」

「姫君を、歓迎します」

アルト・ヴォイドも続く。

「勇者アルト・ヴォイド」

「命をもって、守ることを誓います」

「……のえる」

「……あると」

名前を呼ばれた瞬間。

二人の心臓が、同時に跳ねた。

* * *

城内の庭園。

歓迎式は短く、
すぐに花の咲く場所へ案内された。

「……おはな!」

セラフィナは、目を輝かせる。

「人間界の花です」

「……かわいいいろ」

一歩、また一歩。

花に近づこうとして――

「……あ」

つま先が、石に引っかかった。

「――っ!」

ころん。

小さな体が、前に倒れる。

一瞬の沈黙。

次の瞬間。

「……っ、う……」

目に、涙がたまる。

「……いたい……」

その一言で。

「セラフィナ!!」

魔王が、即座に駆け寄る。

「姫君!」

クロウが、剣を投げ出す勢いで膝をつく。

「だ、大丈夫ですか!」

ノエルとアルトも、ほぼ同時に動いた。

「医師を――!」
「いや、俺が抱く!」

民衆まで、息をのむ。

セラフィナは、地面に座ったまま、
小さく顔を歪めた。

「……ころん、した……」

「……いたい……」

ぽろっ。

涙が、落ちた。

その瞬間。

魔王の周囲の魔力が、
一気に殺気を帯びる。

「……誰だ」

「この石を、ここに置いたのは」

「ぱ、ぱぱ……!」

セラフィナが、慌てて父の服をつかむ。

「だいじょぶ……!」

「せらふぃな、ないてるだけ……」

その一言で。

魔王は、はっとして、娘を抱き上げた。

「……すまん」

「怖かったな」

クロウは、震える声で言う。

「……血は、出ていません」

ノエルは、膝をついたまま。

「すぐに整備を……!」

アルトは、拳を握りしめる。

(……泣かせたくない)

セラフィナは、父の腕の中で、
目をこすった。

「……もう、だいじょぶ」

「びっくり、しただけ」

そして。

小さく、笑った。

「……おはな、きれい」

その瞬間。

張りつめていた空気が、
ふっと、ほどけた。

* * *

帰りの馬車。

セラフィナは、父に抱かれたまま、
窓の外を見ていた。

「……にんげんかい」

「こわい?」

「……ううん」

少し考えてから。

「やさしい」

「みんな、あわててた」

ノエルとアルトは、深く頷く。

「当然です」
「当然だ」

セラフィナは、にこっと笑う。

「……また、くるね」

その約束は。

人間界にとって、
何より重い誓いだった。

――こうして。

魔界の姫は、転び、泣き、
それでも笑った。

そして人間界は。

守るべき存在を、心から理解した。
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