19 / 35
第19話 はじめての人間界
しおりを挟む
空が、明るい。
魔界の空より、ずっと。
セラフィナは、馬車の窓から外を見ていた。
「……まぶしい」
「人間界の空は、少し高いですからね」
リリアが、やさしく答える。
セラフィナの隣には、
父――魔王。
その後ろ、そして外側には、
近衛騎士クロウ・フェルゼン。
さらに。
馬車の周囲を囲むのは、
人間界と魔界、混成の護衛部隊だった。
(……多い)
「セラフィナ」
魔王が、低く声をかける。
「怖くはないか」
「……だいじょぶ」
少しだけ考えてから、答える。
「みんないる」
その一言で、
馬車の外の護衛たちの背筋が伸びた。
* * *
王都・正門。
門が、ゆっくりと開かれる。
人間界の兵士たちは、
武器を構えず、胸に手を当てていた。
「――魔界より来訪!」
「魔王、ならびに姫君セラフィナ・ノワールを迎える!」
ざわめく民衆。
だが、恐怖より先に。
「……ちいさい」
「……可愛い……」
囁きが、広がる。
馬車の扉が開き、
セラフィナが姿を見せた瞬間。
空気が、止まった。
ノエル・クラークは、すぐに膝をつく。
「人間界王子、ノエル・クラーク」
「姫君を、歓迎します」
アルト・ヴォイドも続く。
「勇者アルト・ヴォイド」
「命をもって、守ることを誓います」
「……のえる」
「……あると」
名前を呼ばれた瞬間。
二人の心臓が、同時に跳ねた。
* * *
城内の庭園。
歓迎式は短く、
すぐに花の咲く場所へ案内された。
「……おはな!」
セラフィナは、目を輝かせる。
「人間界の花です」
「……かわいいいろ」
一歩、また一歩。
花に近づこうとして――
「……あ」
つま先が、石に引っかかった。
「――っ!」
ころん。
小さな体が、前に倒れる。
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
「……っ、う……」
目に、涙がたまる。
「……いたい……」
その一言で。
「セラフィナ!!」
魔王が、即座に駆け寄る。
「姫君!」
クロウが、剣を投げ出す勢いで膝をつく。
「だ、大丈夫ですか!」
ノエルとアルトも、ほぼ同時に動いた。
「医師を――!」
「いや、俺が抱く!」
民衆まで、息をのむ。
セラフィナは、地面に座ったまま、
小さく顔を歪めた。
「……ころん、した……」
「……いたい……」
ぽろっ。
涙が、落ちた。
その瞬間。
魔王の周囲の魔力が、
一気に殺気を帯びる。
「……誰だ」
「この石を、ここに置いたのは」
「ぱ、ぱぱ……!」
セラフィナが、慌てて父の服をつかむ。
「だいじょぶ……!」
「せらふぃな、ないてるだけ……」
その一言で。
魔王は、はっとして、娘を抱き上げた。
「……すまん」
「怖かったな」
クロウは、震える声で言う。
「……血は、出ていません」
ノエルは、膝をついたまま。
「すぐに整備を……!」
アルトは、拳を握りしめる。
(……泣かせたくない)
セラフィナは、父の腕の中で、
目をこすった。
「……もう、だいじょぶ」
「びっくり、しただけ」
そして。
小さく、笑った。
「……おはな、きれい」
その瞬間。
張りつめていた空気が、
ふっと、ほどけた。
* * *
帰りの馬車。
セラフィナは、父に抱かれたまま、
窓の外を見ていた。
「……にんげんかい」
「こわい?」
「……ううん」
少し考えてから。
「やさしい」
「みんな、あわててた」
ノエルとアルトは、深く頷く。
「当然です」
「当然だ」
セラフィナは、にこっと笑う。
「……また、くるね」
その約束は。
人間界にとって、
何より重い誓いだった。
――こうして。
魔界の姫は、転び、泣き、
それでも笑った。
そして人間界は。
守るべき存在を、心から理解した。
魔界の空より、ずっと。
セラフィナは、馬車の窓から外を見ていた。
「……まぶしい」
「人間界の空は、少し高いですからね」
リリアが、やさしく答える。
セラフィナの隣には、
父――魔王。
その後ろ、そして外側には、
近衛騎士クロウ・フェルゼン。
さらに。
馬車の周囲を囲むのは、
人間界と魔界、混成の護衛部隊だった。
(……多い)
「セラフィナ」
魔王が、低く声をかける。
「怖くはないか」
「……だいじょぶ」
少しだけ考えてから、答える。
「みんないる」
その一言で、
馬車の外の護衛たちの背筋が伸びた。
* * *
王都・正門。
門が、ゆっくりと開かれる。
人間界の兵士たちは、
武器を構えず、胸に手を当てていた。
「――魔界より来訪!」
「魔王、ならびに姫君セラフィナ・ノワールを迎える!」
ざわめく民衆。
だが、恐怖より先に。
「……ちいさい」
「……可愛い……」
囁きが、広がる。
馬車の扉が開き、
セラフィナが姿を見せた瞬間。
空気が、止まった。
ノエル・クラークは、すぐに膝をつく。
「人間界王子、ノエル・クラーク」
「姫君を、歓迎します」
アルト・ヴォイドも続く。
「勇者アルト・ヴォイド」
「命をもって、守ることを誓います」
「……のえる」
「……あると」
名前を呼ばれた瞬間。
二人の心臓が、同時に跳ねた。
* * *
城内の庭園。
歓迎式は短く、
すぐに花の咲く場所へ案内された。
「……おはな!」
セラフィナは、目を輝かせる。
「人間界の花です」
「……かわいいいろ」
一歩、また一歩。
花に近づこうとして――
「……あ」
つま先が、石に引っかかった。
「――っ!」
ころん。
小さな体が、前に倒れる。
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
「……っ、う……」
目に、涙がたまる。
「……いたい……」
その一言で。
「セラフィナ!!」
魔王が、即座に駆け寄る。
「姫君!」
クロウが、剣を投げ出す勢いで膝をつく。
「だ、大丈夫ですか!」
ノエルとアルトも、ほぼ同時に動いた。
「医師を――!」
「いや、俺が抱く!」
民衆まで、息をのむ。
セラフィナは、地面に座ったまま、
小さく顔を歪めた。
「……ころん、した……」
「……いたい……」
ぽろっ。
涙が、落ちた。
その瞬間。
魔王の周囲の魔力が、
一気に殺気を帯びる。
「……誰だ」
「この石を、ここに置いたのは」
「ぱ、ぱぱ……!」
セラフィナが、慌てて父の服をつかむ。
「だいじょぶ……!」
「せらふぃな、ないてるだけ……」
その一言で。
魔王は、はっとして、娘を抱き上げた。
「……すまん」
「怖かったな」
クロウは、震える声で言う。
「……血は、出ていません」
ノエルは、膝をついたまま。
「すぐに整備を……!」
アルトは、拳を握りしめる。
(……泣かせたくない)
セラフィナは、父の腕の中で、
目をこすった。
「……もう、だいじょぶ」
「びっくり、しただけ」
そして。
小さく、笑った。
「……おはな、きれい」
その瞬間。
張りつめていた空気が、
ふっと、ほどけた。
* * *
帰りの馬車。
セラフィナは、父に抱かれたまま、
窓の外を見ていた。
「……にんげんかい」
「こわい?」
「……ううん」
少し考えてから。
「やさしい」
「みんな、あわててた」
ノエルとアルトは、深く頷く。
「当然です」
「当然だ」
セラフィナは、にこっと笑う。
「……また、くるね」
その約束は。
人間界にとって、
何より重い誓いだった。
――こうして。
魔界の姫は、転び、泣き、
それでも笑った。
そして人間界は。
守るべき存在を、心から理解した。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。
aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。
ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・
4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。
それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、
生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり
どんどんヤンデレ男になっていき・・・・
ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡
何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~
藤森瑠璃香
恋愛
連日の残業と終わらないプロジェクトの果てに、OLの佐藤美月は過労で意識を失う。次に目覚めた時、そこはアーサー王が治める国「キャメロット」だった。
森で魔物に襲われ絶体絶命の私を救ってくれたのは、「太陽の騎士」と呼ばれる最強の騎士ガウェイン。しかし彼は、強くて純粋だけど、少し子供っぽい脳筋騎士様だった!
「護衛だ!」と宣言しては一日中手を繋いで離さず、他の男性と話しただけであからさまに嫉妬したり……。その過保護で独占欲の強い愛情表現に戸惑いながらも、仕事に疲れた美月の心は、彼の太陽のような笑顔に癒されていく。
やがて王の顧問となった彼女は、現代知識とPMスキルを武器に「魔女」の嫌疑を乗り越え、国を救う「キャメロットの天使」へ。
不器用で一途な騎士様から贈られる、甘すぎるほどの溺愛に満ちた、異世界シンデレラストーリー、ここに開幕!
温泉聖女はスローライフを目指したい
皿うどん
恋愛
アラサーの咲希は、仕事帰りに酔っ払いに背中を押されて死にかけたことをきっかけに異世界へ召喚された。
一緒に召喚された三人は癒やしなど貴重なスキルを授かったが、咲希のスキルは「温泉」で、湯に浸かる習慣がないこの国では理解されなかった。
「温泉って最高のスキルじゃない!?」とうきうきだった咲希だが、「ハズレ聖女」「ハズレスキル」と陰口をたたかれて冷遇され、城を出ることを決意する。
王に見張りとして付けられたイケメンと共に、城を出ることを許された咲希。
咲希のスキルがちょっぴりチートなことは誰も知らないまま、聖女への道を駆け上がる咲希は銭湯を経営して温泉に浸かり放題のスローライフを目指すのだった。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる