魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした

月影みるく

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第24話 それぞれの思惑

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舞踏会の夜が明けても、
世界は静かだった。

――表向きは。

* * *

レオニス帝国・皇城。

「……魔界の姫、か」

カイゼル・レオニスは、窓辺で腕を組んでいた。

「十歳にして、あの存在感」

側近が慎重に口を開く。

「帝国として、どう動かれますか」

カイゼルは、迷わなかった。

「婚姻を視野に入れる」

「正式にだ」

「……帝国の未来を賭ける価値がある」

それは、恋ではない。

だが、確かな“選択”だった。

* * *

エルディア魔導王国・白の塔。

書物に囲まれた部屋で、
リュシアン・エルディアは静かに指を止めた。

(魔王の血)

(だが、あれほど穏やかな魔力……)

舞踏会で見た少女の姿が、脳裏に浮かぶ。

「……知りたい」

隣にいた魔導士が顔を上げる。

「何を、ですか?」

「彼女が、なぜ世界を壊さずにいられるのか」

リュシアンの瞳は、静かに熱を帯びていた。

それは、研究者として。

そして、男として。

* * *

セレナイト王国・客間。

「いやー、可愛かったなぁ」

フィオレ・セレナイトは、ベッドに転がっていた。

「大人ぶってるのに、目が素直で」

護衛が呆れた声を出す。

「殿下、本気ですか?」

「本気だよ」

くるりと起き上がり、笑う。

「だってさ」

「守られてる自覚、全然ないんだもん」

「放っておけないでしょ?」

それは、最も危うい種類の好意だった。

* * *

魔界・深層。

闇の中で、
一人の男が、ゆっくりと目を開ける。

「……社交界、か」

ルシアス・ヴァルディオス。

かつて、世界を敵に回してでも
一人の姫を選ぼうとした男。

「……もう」

「檻の中の姫じゃない、か」

口元が、わずかに歪む。

「それでも」

「俺は、諦めない」

静かに、誓いが落ちた。

* * *

魔界城・庭園。

「……あ」

セラフィナは、花の前でしゃがみこんでいた。

「また咲いた」

小さな白い花。

舞踏会のことも、王子たちの思惑も。

知らない。

「クロウ、これ見て」

「はい、姫君」

クロウ・フェルゼンは、一歩後ろから答える。

「綺麗に咲いておりますね」

「……うん」

セラフィナは、微笑む。

(静か)

(平和)

その背後で。

世界は、確実に動いているとも知らずに。

* * *

それぞれが、思う。

手に入れたい。
守りたい。
知りたい。
独占したい。

ただ一人。

魔界の姫だけが。

何も知らず、花を見ていた。

――嵐は、まだ来ない。

だが。

確実に、近づいていた。
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