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現実1 いのりの思い出の中の瞬
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ある冬の日。瞬は、舞台最終日を無事終えて1次会を終えて駅へと向かう。先ほどまで、同じ舞台に出演していた女優の祈(いのり)に会う。
いのり「あ。お疲れ!」
瞬「ども。お疲れっす」途中まで一緒に帰る。
いのり「私、役者は今日で辞めようかなって」
「そっすか」
「顔もスタイルもパッとしないし。河本くん、いくつ?」
「20歳っす」
「えー。マジ? 羨ま」大袈裟に嘆いてみせるいのりからは、フワッとフローラルの香りがした。
「そちらは、いくつなんですか?」
「えー。それ、聞いちゃう? 27だよー」
「婚活でもした方がいいんじゃないっすか」
「だよねー。田舎帰ってお見合いでもしよっかなー」
「はあ」
「河本くんて、彼女とかいるの?」
「フリーですね」
「フーン。うち、来ない?」
瞬は、無言になっていのりを見る。
いのり「……イイなって思ってた。……ダメ?」
「……病気とか、男とか__大丈夫っすか?」
「ナイナイ! あのね……」そっと瞬に耳打ちする。
「ウソーー」
「アハハ。そう思われても、仕方ないけど。田舎に帰る前にさ、思い出くれない? ご飯奢るよ!」
「寿司奢ってくれるなら」
「おし。決まり!ありがとー。いこ!」こんな年上で大丈夫かな……。ヤじゃないかな。なんか、テンション低いし、無愛想だし。はーー。へこみそうだな。__だけど、明日になったら、来年になったらまた年月は過ぎてゆく。ファイト!いのり。年下くんと……。別に付き合いたいとか、恋人になりたいとか、分不相応なことは思ってないよ。彼女がいないなら、少しだけ。少しだけでいい。
「なんか男前っすね」
「そ? 1人で生きてけそーってよく言われるよ」こんなの空元気だよ。7歳も上で、元気がなかったら、やっぱナイなって思うでしょ? どうせなら、キミにも楽しんで欲しいよ。別れを惜しんで欲しいよ。だから、弱気な自分は隠して。本当の私なんて知らなくていい__誰にも知られなくていい__
©️石川 直生 2023.
いのり「あ。お疲れ!」
瞬「ども。お疲れっす」途中まで一緒に帰る。
いのり「私、役者は今日で辞めようかなって」
「そっすか」
「顔もスタイルもパッとしないし。河本くん、いくつ?」
「20歳っす」
「えー。マジ? 羨ま」大袈裟に嘆いてみせるいのりからは、フワッとフローラルの香りがした。
「そちらは、いくつなんですか?」
「えー。それ、聞いちゃう? 27だよー」
「婚活でもした方がいいんじゃないっすか」
「だよねー。田舎帰ってお見合いでもしよっかなー」
「はあ」
「河本くんて、彼女とかいるの?」
「フリーですね」
「フーン。うち、来ない?」
瞬は、無言になっていのりを見る。
いのり「……イイなって思ってた。……ダメ?」
「……病気とか、男とか__大丈夫っすか?」
「ナイナイ! あのね……」そっと瞬に耳打ちする。
「ウソーー」
「アハハ。そう思われても、仕方ないけど。田舎に帰る前にさ、思い出くれない? ご飯奢るよ!」
「寿司奢ってくれるなら」
「おし。決まり!ありがとー。いこ!」こんな年上で大丈夫かな……。ヤじゃないかな。なんか、テンション低いし、無愛想だし。はーー。へこみそうだな。__だけど、明日になったら、来年になったらまた年月は過ぎてゆく。ファイト!いのり。年下くんと……。別に付き合いたいとか、恋人になりたいとか、分不相応なことは思ってないよ。彼女がいないなら、少しだけ。少しだけでいい。
「なんか男前っすね」
「そ? 1人で生きてけそーってよく言われるよ」こんなの空元気だよ。7歳も上で、元気がなかったら、やっぱナイなって思うでしょ? どうせなら、キミにも楽しんで欲しいよ。別れを惜しんで欲しいよ。だから、弱気な自分は隠して。本当の私なんて知らなくていい__誰にも知られなくていい__
©️石川 直生 2023.
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