TAXI戦記 日本崩壊の序曲

自由言論社

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#8 書類の運び屋

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「そうだな。とりあえず書類を運んでもらおうか」

 スーツ姿の客が「仕事」の内容を明かした。

「おまえさんはそれを指定した目的地まで送り届ける。それが業務だ」

「ひとではなくて書類を運ぶんですか?」

「いまあんた、そんなのメールで送ればいいだろって心のなかで思ったろ?」

「ええ、まあ……」

「書類をマンツーマンで直接手渡しするのが一番確実な方法なんだよ。スパイとかハッカーなんてそこらじゅうにウヨウヨいる。メールの受け手がいつの間にかすり替わっていたなんてことは、この世界じゃ日常茶飯事だ」

 負傷していた前の客は、運搬途中の書類をどこかで不当に手に入れたのではないかという疑念が出雲の脳裏をよぎる。
 だとするのならば、書類の運び屋業務も安全な仕事とはいえない。

「さあ、とっとと預かったものをこちらに渡してくれないか。それから具体的な仕事の話に移ろう」

 スーツ姿の客はすっかり出雲が了承したものだとばかり思い込んでいる。

「こう見えてもわたしは職務に忠実な人間でしてね。お客様の忘れものを他のお客様に渡すことはありえません」

「なんだと!?」

 客の声が尖った。バックミラーを見ると、再びスーツの内側に手を差し入れている。今度はどうもシガレットケースではなさそうだ。

「おれをからかっているのか?」

 その瞬間、出雲はサイドブレーキを引き、車体を右に振った。
 やっぱりだ。拳銃を持っている。
 スーツ姿の客はドアの内側に肘を打ちつけ、取りだした拳銃の銃口が逸れた。
 出雲はそれを素早く奪いとる。
 銃口を客に向けた。
 路面を削った白い煙が硝煙のように車体をつつんでいる。

 客が出雲に向かっていった。

「おまえこそ、何者だ?」



   次回へつづく

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