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10.縁と命はつながれぬ
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開封後の封筒と父親が書き綴った手紙が風にくすぐられなびく
その側で墓標に寄り添い眠りにつく少女の姿があった
「っ…。」
映像が終了し目を覚ました私の目には涙が泳いでいた
溢れ出てくる涙は蛇口を全開にして流した水のように止まらず出続ける
「ハッピーエンドなんかじゃ…なかった…。」
私はいつもより早く病院に向かっている
いつもなら歩きながら町並みを見て気持ち良く朝を感じながら病院へ向かっていたが、今の私にそんな悠長なことはしていられない
こんなに走ったのはいつぶりだろうか
学生の頃?
研修時代?
夜勤の時?
心臓がバクバクしてる
心臓が朝からフル回転して全身に血がめぐる
更衣室に行きいつもの倍速で着替えをし、状況報告する前に807号室に走る
院内は走らないでください、そんなアナウンスは無視だ
誰も守っていないし緊急時は別枠だ
ガラッ
ドアを開けて少女を確認する
少女は昨日と変わりがないように見える
はあはあと息を切らしながらバイタル測定器を確認する
「…、安定してる。良かった…」
ほっとしているとバイタル測定器の機械音が変わっていく
一定リズムで音を刻んでいたはずなのに、だんだんテンポが早まる
バイタルが急激に下がっていく
「っえ!?」
そんな…なんで?
私は頭の中がパンクしそうになるが、必死に押さえてナースコールボタンを押す
「708号室の患者さんの容態が急変しました。すぐに先生を呼んでください!!」
しかしそんなことも虚しくピーーーーーーー、と心停止の音がなる
「そんな、ダメよ!!」
私は胸骨圧迫、心臓マッサージを行う
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13……………………
(お願い死なないで…)
そこには医師と追加で看護師がやってくる
圧迫を交換し手術室へと運ばれる
807号室の中にぽつりと1人残されたたずむ
(チームリーダーに、…報告、しなくちゃ…)
震える手を押さえて脚を動かす
「分かりました…。」
「リーダー…、807号室の…」
「今連絡があったわ。すでに手遅れで亡くなられたわ。」
「っえ…。」
「残念ね。でも、どうしようもないことよ。辛いとは思うけど報告書お願いできるかしら?」
無理そうなら、というリーダーに大丈夫です、やりますと答える
(救えなかった…)
報告書を書くために少女の資料を開く
時間と名前を記入する
(誕生日は4月30日…、ん?)
「リーダー、今日は何日ですか?」
「今日はね、4月30日よ。」
(今日が少女の18歳の誕生日…。物語の少女は807号室の少女と同一人物なんだわ…。)
どうしよう…と誰にも伝えることのできないこの想いを、この苦しみを、いったいどうすればいいの?
少女は物語を通して私に教えてくれた
日常的に受けられている母親からの暴力をちゃんと教えてくれた
(私…、そうとも知らず毎日のように面会にきていて感心していた。)
毎日…
「リーダー!」
リーダーを呼びヒヨコ饅頭をもらい監視室へ走る
「すいません、一昨日の807号室の所って見られますか?」
ヒヨコ饅頭を渡し監視映像を確認させてもらう
少女の母親が病室に入り私が出てくる
ぼそぼそっとなにかに音らしきものが聞こえた
「すいません、これ音を大きくする事ってできますか?」
できるよと、音量を上げてもらう
「「遥、…お願い、早く…」」
ここまでは病室前で聞こえていた
「「早く逝ってよ…。お金が入らないじゃない。」」
「…。」
最低だ…
「っあ、あの、昨日の同じ時間帯の映像も見せてもらえますか?」
はいよ、と素早い対応で映像が選択される
「「遥…、もうっ、……はぁ…。」」
ここも聞いていた
「「いい加減、早く死んでよ…。」」
(最初から少女の回復なんて望んでいなかったのね…)
私は結局何もできないまま少女の御葬式に参加した
母親が少女を死に追いやったと証言したいが証拠はない
夢で見たんです、なんて言ったら変人扱いされて誰にも取り合ってもらえない
喪服を着て続々と会場に大勢の人が来る
少女の母親は無言で少女の遺影を見つめている
遺影の写真は笑っていないものが使われていた
「すいません、」
母親はそう言うと席をたち人気のない場所へ
気になり着いていく
(亡くなってはじめて、悲しくなったのかしら…)
「はい…、それでもいつ頃ですか?」
(電話してる?)
「書類は揃ってます。今すぐにでもお金がいるんです。」
あまりの手際の良さに絶句した
「…、ええ、私よ。ありがとう、あなたのおかげで事がうまく進んだわ。どこで手に入れたのよ、あんな薬。証拠が残らないって最高ね。」
書類も揃えて毎日面会に行き、容態を確認しながら毒を盛っていたのね…
最初から殺すつもりだったんだ…
私は崩れ落ちそうな脚で席へ戻った
母親も戻ってきて再度少女の遺影と向き合う
私は何もできないまましょ少女の遺影を見ている
「…。」
入口から1人の若い女が入ってくる
「…!」
それは白いワンピースを着た茶色がかった髪の毛に華奢な体、くるくるとした髪の毛を鮮明に見えるほどの透き通った白い肌
それは紛れもなく807号室の少女だった
私はすぐに理解できた
少女は幽霊だった
少女はゆっくり遺影の方へ歩き出す
遺影の横でお通夜が終わり、告別式を見届ける
出棺の時間になる
少女はただひたすら見ている
生前苦しい想いをしたり憎しみをもった幽霊は怨霊となり、自分を苦しめた人に復習をしようとする
だが、少女はなにもしない
ただ見てる
(もう、火葬…)
別れの挨拶をし少女の遺体は火葬場へ入っていく
焼却ボタンを押し遺体を火葬する
すると少女は反応する
今まで無表情だった少女の顔は少し眉を下げ目に涙を浮かべていく
『…っ。』
ポロポロと目から涙を流す
しかし、少女の顔は笑みを見せていた
泣きながら笑っているのだった
手を使い瞳から流れ落ちる涙を必死に拭う
『…っ、…っと。』
『やっと…、やっと自由だ…。私、自由…っ。』
オレンジ色の花を髪に飾った儚い少女はそう言いながら泣き、そして笑った
私は、ただただ少女を見ていることしかできなかった…
おわり
その側で墓標に寄り添い眠りにつく少女の姿があった
「っ…。」
映像が終了し目を覚ました私の目には涙が泳いでいた
溢れ出てくる涙は蛇口を全開にして流した水のように止まらず出続ける
「ハッピーエンドなんかじゃ…なかった…。」
私はいつもより早く病院に向かっている
いつもなら歩きながら町並みを見て気持ち良く朝を感じながら病院へ向かっていたが、今の私にそんな悠長なことはしていられない
こんなに走ったのはいつぶりだろうか
学生の頃?
研修時代?
夜勤の時?
心臓がバクバクしてる
心臓が朝からフル回転して全身に血がめぐる
更衣室に行きいつもの倍速で着替えをし、状況報告する前に807号室に走る
院内は走らないでください、そんなアナウンスは無視だ
誰も守っていないし緊急時は別枠だ
ガラッ
ドアを開けて少女を確認する
少女は昨日と変わりがないように見える
はあはあと息を切らしながらバイタル測定器を確認する
「…、安定してる。良かった…」
ほっとしているとバイタル測定器の機械音が変わっていく
一定リズムで音を刻んでいたはずなのに、だんだんテンポが早まる
バイタルが急激に下がっていく
「っえ!?」
そんな…なんで?
私は頭の中がパンクしそうになるが、必死に押さえてナースコールボタンを押す
「708号室の患者さんの容態が急変しました。すぐに先生を呼んでください!!」
しかしそんなことも虚しくピーーーーーーー、と心停止の音がなる
「そんな、ダメよ!!」
私は胸骨圧迫、心臓マッサージを行う
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13……………………
(お願い死なないで…)
そこには医師と追加で看護師がやってくる
圧迫を交換し手術室へと運ばれる
807号室の中にぽつりと1人残されたたずむ
(チームリーダーに、…報告、しなくちゃ…)
震える手を押さえて脚を動かす
「分かりました…。」
「リーダー…、807号室の…」
「今連絡があったわ。すでに手遅れで亡くなられたわ。」
「っえ…。」
「残念ね。でも、どうしようもないことよ。辛いとは思うけど報告書お願いできるかしら?」
無理そうなら、というリーダーに大丈夫です、やりますと答える
(救えなかった…)
報告書を書くために少女の資料を開く
時間と名前を記入する
(誕生日は4月30日…、ん?)
「リーダー、今日は何日ですか?」
「今日はね、4月30日よ。」
(今日が少女の18歳の誕生日…。物語の少女は807号室の少女と同一人物なんだわ…。)
どうしよう…と誰にも伝えることのできないこの想いを、この苦しみを、いったいどうすればいいの?
少女は物語を通して私に教えてくれた
日常的に受けられている母親からの暴力をちゃんと教えてくれた
(私…、そうとも知らず毎日のように面会にきていて感心していた。)
毎日…
「リーダー!」
リーダーを呼びヒヨコ饅頭をもらい監視室へ走る
「すいません、一昨日の807号室の所って見られますか?」
ヒヨコ饅頭を渡し監視映像を確認させてもらう
少女の母親が病室に入り私が出てくる
ぼそぼそっとなにかに音らしきものが聞こえた
「すいません、これ音を大きくする事ってできますか?」
できるよと、音量を上げてもらう
「「遥、…お願い、早く…」」
ここまでは病室前で聞こえていた
「「早く逝ってよ…。お金が入らないじゃない。」」
「…。」
最低だ…
「っあ、あの、昨日の同じ時間帯の映像も見せてもらえますか?」
はいよ、と素早い対応で映像が選択される
「「遥…、もうっ、……はぁ…。」」
ここも聞いていた
「「いい加減、早く死んでよ…。」」
(最初から少女の回復なんて望んでいなかったのね…)
私は結局何もできないまま少女の御葬式に参加した
母親が少女を死に追いやったと証言したいが証拠はない
夢で見たんです、なんて言ったら変人扱いされて誰にも取り合ってもらえない
喪服を着て続々と会場に大勢の人が来る
少女の母親は無言で少女の遺影を見つめている
遺影の写真は笑っていないものが使われていた
「すいません、」
母親はそう言うと席をたち人気のない場所へ
気になり着いていく
(亡くなってはじめて、悲しくなったのかしら…)
「はい…、それでもいつ頃ですか?」
(電話してる?)
「書類は揃ってます。今すぐにでもお金がいるんです。」
あまりの手際の良さに絶句した
「…、ええ、私よ。ありがとう、あなたのおかげで事がうまく進んだわ。どこで手に入れたのよ、あんな薬。証拠が残らないって最高ね。」
書類も揃えて毎日面会に行き、容態を確認しながら毒を盛っていたのね…
最初から殺すつもりだったんだ…
私は崩れ落ちそうな脚で席へ戻った
母親も戻ってきて再度少女の遺影と向き合う
私は何もできないまましょ少女の遺影を見ている
「…。」
入口から1人の若い女が入ってくる
「…!」
それは白いワンピースを着た茶色がかった髪の毛に華奢な体、くるくるとした髪の毛を鮮明に見えるほどの透き通った白い肌
それは紛れもなく807号室の少女だった
私はすぐに理解できた
少女は幽霊だった
少女はゆっくり遺影の方へ歩き出す
遺影の横でお通夜が終わり、告別式を見届ける
出棺の時間になる
少女はただひたすら見ている
生前苦しい想いをしたり憎しみをもった幽霊は怨霊となり、自分を苦しめた人に復習をしようとする
だが、少女はなにもしない
ただ見てる
(もう、火葬…)
別れの挨拶をし少女の遺体は火葬場へ入っていく
焼却ボタンを押し遺体を火葬する
すると少女は反応する
今まで無表情だった少女の顔は少し眉を下げ目に涙を浮かべていく
『…っ。』
ポロポロと目から涙を流す
しかし、少女の顔は笑みを見せていた
泣きながら笑っているのだった
手を使い瞳から流れ落ちる涙を必死に拭う
『…っ、…っと。』
『やっと…、やっと自由だ…。私、自由…っ。』
オレンジ色の花を髪に飾った儚い少女はそう言いながら泣き、そして笑った
私は、ただただ少女を見ていることしかできなかった…
おわり
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