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第1章

第二十五話 「スイーツ大会!」

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そして、大会当日。
大会はヴァンパイアアリーナで行なわれている。
プリンちゃんのスイーツ、早く食べたいなぁ。
あ、私、食べられないんだった。
それにしても、会場はすごいよぉ~。
広々したキッチンがあって、それに、大勢のパティシエ志望者がいるし。
おまけに、審査員の人なんか、ものすごい有名なパティシエの人がいるし。

「ちょっと、ここ、いいかい?」

あっ、はい、いいですよっ。
黄色いひげの男の人のとなりにすわった。
この人、すっごいえらそうだねぇ。

「実はこの大会に、私の弟子が出場してるんですよ。」

へぇー。そうなんですかぁ。

「その弟子は、あまりに不器用すぎてなぁ。出場するって聞いた時、びっくりしたよ。」

そ、そうなんですかぁ。
もしかして、プリンちゃんの事かなぁ?

「真莉亜様ぁ~!」

あ、プリンちゃん!

「!?」

「いよいよだねっ。」

「はいっ。」

ちゃんと、気合い入れて、がんばってねっ。

「はいっ!」

プリンちゃんはうなずいた。

「プリン!」

あ、さっきのおじさん。

「師匠!」

え~!?この二人、師弟関係だったのぉ~!?
しかも、さっきのおじさんが、プリンちゃんの師匠だったなんて!

「真莉亜、どーしたんだ?」

ジュンブライト!
い、いやぁ、なんでもないよぉ。アハハハハ!

「ふーん。それよりさ、見てくれよ!このスイーツの数!」

うわあ~。いっぱい買ったねぇ~。

「あぁ!」

ジュンブライトは、ニカッと笑った。
ていうか、あの二人の雰囲気、ヤバくなってきたぞぉ。

「師匠、私、勝ってみせますっ。勝って、ヴァンパイア界一のパティシエになってみせますっ。」

「ほほう。せいせい、がんばれよ。どーせ、負けると思うし。」
 
な、なんてひどいことを言うの!?

「あ、あの!」

私、思わず立っちゃった。

「なんだ。」

「その言い方、ひどすぎますっ!プリンちゃんは私達のところで、たくさん、修行したんだから、甘く見るんじゃないよ!」

最後、テレサさん風に言ってみましたぁ~。

「……ふーん。ちょっとトイレに行って来る。」

プリンちゃんの師匠は立ち上がって、私の横をとおっていった。
プリンちゃん、大丈夫?

「えぇ。大丈夫です。師匠はこー見えて、毒舌ですからねぇ。」

あ、そうなんだ。
それより、がんばってね。
私、信じてるから!

「ありがとうございますっ!真莉亜様がつくってくれたお守りを持って、がんばりますっ!」

プリンちゃんは、お守りをぎゅっとにぎった。

「じゃあ、いってきます!」

いってらっしゃ~い!がんばってねぇ~!
プリンちゃんはもう、行っちゃった。


                                   ☆


パーン、パーン!

「『ただいまより、スイーツ大会を開始いたしますっ!制限時間は50分。優勝した方は、ヴァンパイア界一のパティシエになれますっ!それではよーい、始めっ。』」

そのとたん、パティシエ候補者達が、いっせいに動き出した。
がんばれ、プリンちゃん!
プリンちゃんは、卵を3つ割ってかきまぜて、牛乳を入れて、またかきまぜて、小麦粉を入れて、またかきまぜての作業を繰り返している。
そして、はちみつを入れ、またかきまぜた。
そして、生地を型に入れ、オーブンに入れた。
そして、何分か経つと、生地がふっくらして、生地をひっくり返した。
そして、生クリームをぬって、キウイ、オレンジ、イチゴ、ミントをケーキの上にかざして、ケーキが完成した!

「よしっ!」

「やめっ。それでは、審査委員のみなさんは、ケーキを食してください。そして、出場者のみなさんは、控え室へ戻ってください。」  

出場者のみんなは、ゾロゾロと、控え室に戻ってゆく。

「ん~!どれもこれも、おいしいぜ!」

もう、ジュンブライトったら。スイーツをバクバク食べちゃって。

「ん?」

ジュンブライトが、プリンちゃんのスイーツに目を止め、ぱくりと食べた。

「ん~!おいし~い!真莉亜!これ、お前食べれるぞ!」

え~?そうかなぁ~?

「本当だってばぁ!虫なんか入ってねぇ!さ、早く食べろ!」

はいはい。
食べればいいでしょ?食べれば。
私は、ケーキをぱくりと食べると……。
ん!おいし~い!
本当に、私でも食べれるぅ~!

「だろ?」

うん。

「ちょっといいか?」

プリンちゃんの師匠が、ケーキをのせた皿をぱっと取り上げ、ぱくっと食べた。

「……!こ、これは……!」

「どうしたんです?」

「……う、うまい。確かに、人間のお妃様でも食べられるし、それに、甘いし。」

「確かに。」

「虫料理が苦手な私でも、食べられます。」

「これは……どうします?」

「う~ん……。」


                                     ☆


そして、結果発表の時がやって来た。
はぁ~、ドキドキするよぉ~。
プリンちゃんでもないのに~。
司会者が、ゴホン!とせきばらいをした。

「『えー、ただいまより、結果発表をいたします。第二十回スイーツ大会、第3位、サクラさん!』」

「やったぁ~!」

あとは1位と2位だけ!
プリンちゃん、優勝して!

「『第2位、バーバラさん!』」

「やったわ!ま、準優勝だけど。」

いよいよ、第1位の発表だよ!
プリンちゃん、お願い!優勝して!

「『いよいよ、第1位の発表です。第二十回スイーツ大会、優勝者は!』」

会場が真っ暗になり、ドラムロールが流された。
プリンちゃん、お願い!
えっ?ドラムロールが終わった?
って、あれっ?ライトがプリンちゃんを照らしてる!
ってことはやっぱり!

「『プリンさんです!』」

パーン、パーン!
その時、会場が明るくなり、紙吹雪が出た。
パチパチパチパチ。
プリンちゃん、おめでとー!

「うそ……この私が、優勝するなんて……ゔぅ、うわ~ん!」

プリンちゃん、大号泣しちゃって。
私も、泣きそうだよ。

「『おめでとうございますっ!あなたには、パティシエの資格を贈呈しますっ!』」

女のパティシエ専門学校の生徒がプリンちゃんに金のパティシエの帽子をかぶして、金のエプロン、金の泡立て器を渡した。

「『あ、ありがとうございますっ!本当に、ありがとうございますぅ!』」

プリンちゃんったら、まだ泣いてるし。

「よかったな。」

うん。
私はうなずいた。
あれっ?プリンちゃんの師匠が、プリンちゃんの方へ向かってる!
一体、なにをするんだろ。

「おじいちゃん、私、優勝したよ!」

えっ!?おじいちゃん!?
プリンちゃんの師匠って、おじいちゃんだったのぉ~!?
ところが、プリンちゃんのおじいさんは、全く反応なし。
どうしたんだろ。

「……。」

おじいさんはだまったまま。

「あのケーキ、覚えてる?私が小さいころ、おじいちゃんが虫料理が嫌いだった私につくったケーキ。」

「!?」

おじいさんは、目を見開いた。

「あのケーキの味が、今でも忘れなくて、つくったんだ。私、おじいちゃんがつくったケーキが、とてもおいしかった!また、私にいろんなケーキを食べさせてねっ!いや、今度は私が、おじいちゃんにケーキを食べさせてあげる!」

「プリン……。」

おじいさんは、プリンちゃんをだきしめた。

「OK~♡次はマカロン、つくってぇ~♡」

「あだーっ!」

……おじいさん、プリンちゃんきメロメロです。
けどよかった。優勝して。


                      
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