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48話
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(フランシス様……)
互いの熱を交わす。
今、私はフランシス様と口付けを交わしている。
ずっと望んでいた。
愛する人との抱擁を、そして口付けを。
(もっと、フランシス様を感じたい、もっと……)
ああ、身体が熱い。
燃える様に熱くて、そして官能的な薔薇の薫りに思考が蕩けてしまう。
フランシス様が欲しい。
もっと私に触れて……。
どくんどくん。
心臓の薔薇が脈打ち、濃厚な薫りを漂ってくる。
ああ、フランシス様に抱かれたい。
彼の方に全てを捧げて、一つに交わりたい。
だって、彼の人は私のモノ、彼の人の全てが欲しい。
「もっと、私に触れて!
私を強く抱き締めて!」
そう、私を愛して。
貴方は私の対なる君。
だから、貴方は私のモノ。
貴方が私と一つに結ばれるのは呪いの決めた……。
とくん。
とくん、とくん。
(今、私は何を考えていたの?
フランシス様にこうして触れられたいのは、対なる君だから、と……)
対なる君だからフランシス様に触れられたいの?
抱き締められ、口付けをされたいの?
(違う、私は……)
「クリスティアーナ……」
そっと、私の頬に触れる。
蠱惑的な瞳で私に微笑んで、私に触れる。
ねえ、フランシス様……。
今の貴方は対なる君の呪いで私に触れているの?
貴方の瞳に宿る熱は、私に恋焦がれての事なの?
「フランシスさ、ま」
対なる君の呪いが私の心を、思考を棘で囲おうとする。
対なる君の呪いが発動してフランシス様との交わりを求めている。
彼の方に私の全てに触れて欲しい。
彼が欲しい。
彼と一つになりたい。
でも、これが私が求めていた、フランシス様との愛では、ない……。
朦朧とする意識の中で私は、ふっと、幼い頃の出来事を思い出していた。
初めてフランシス様に会った時のトキメキ。
一瞬にて恋に落ちた。
初めての、恋。
対なる君の呪いでは、なく、クリスティアーナとしての恋。
例えフランシス様にとって、私との婚約が義務であったとしても私は……。
私は貴方に恋をしたの。
対なる君ではない、フランシス・シェイラーズ様に私は恋をしたの。
(ああ、クリストファー。
貴方の気持ちが、理解、出来る……)
対なる君ではないマリアンヌ嬢を愛した、と。
呪いでの恋ではない、真実、彼女に心惹かれ愛を抱いたと。
呪いで愛を抱くなんて、そんな不純な愛を認めない、と。
クリストファー。
私も貴方と同じ。
フランシス様に心ときめいて、愛を抱いて。
唯一、心を捧げる方だと私は思って。
(こ、こんな、呪いの所為で、私の想いを、穢すの?
私の恋心は、対なる君の、呪いが、全て、奪おうと、しているの?
フランシス様に対する愛が……)
対なる君の呪いの所為で……。
「い、いやっ!」
「クリスティアーナ……」
フランシス様の抱擁から逃れる様に、私はフランシス様の身体を退けていた。
ボロボロと涙が出た。
先程、フランシス様との再会を喜んでいた涙とは違う。
哀しみの涙。
今まで、ずっと、感じていなかった想い。
対なる君の呪いを本当の意味で知らなかった。
思考を蕩かせ相手の全てを求める。
自分の意思では無い、ううん、自分の奥底に隠された想いであるかもしれないけど。
でも、それは、呪いが関与するモノでは、無い……。
愛する人との愛を交わし、ひとつになりたい。
それは恋をすれば愛を抱けば、自ずと相手を求め、欲してしまう。
愛されたい。
相愛になりたい。
想いが重なり、互いが求める気持ちが一つになって、そして結ばれて。
私はそんな恋を、愛を、フランシス様に求めたの。
彼の方にそう、愛されたいと願って。
(フランシス様……)
フランシス様に抱擁され、口付けを交わして。
これが呪いが関与してなかったら、どんなに嬉しかっただろう……。
彼の方に一人の女性として愛されていたら。
「クリスティアーナ」
「フランシス様。
今、貴方の瞳に、私はどんな風に映っているの……」
ふわりと薔薇の香りが漂ってくる。
濃厚な薔薇の香り。
最初、私が感じたミルラとティーの薫りではなく、官能的な。
「……」
「ねえ、答えて……」
対なる君の呪いの薔薇が私の思考を妨げようとする。
薔薇の香りが強くなる。
フランシス様から漂う、ううん、違う。
これは私のアザから発動している薫り。
フランシス様はただ、私の呪いに反応しているだけ。
呼応して私を求めているに過ぎない。
一瞬、フランシス様の瞳が躊躇いが過った。
何かを語ろうとするフランシス様の身体に揺らぎが生じ、私の目の前から消えていく。
「フランシス様……」
身体から呪いの発光が収まっていく。
淡い光は消え去り、身体の力が抜けていく。
意識が遠のく間際に私は呟いていた。
フランシス様、貴方を、愛している、と……。
互いの熱を交わす。
今、私はフランシス様と口付けを交わしている。
ずっと望んでいた。
愛する人との抱擁を、そして口付けを。
(もっと、フランシス様を感じたい、もっと……)
ああ、身体が熱い。
燃える様に熱くて、そして官能的な薔薇の薫りに思考が蕩けてしまう。
フランシス様が欲しい。
もっと私に触れて……。
どくんどくん。
心臓の薔薇が脈打ち、濃厚な薫りを漂ってくる。
ああ、フランシス様に抱かれたい。
彼の方に全てを捧げて、一つに交わりたい。
だって、彼の人は私のモノ、彼の人の全てが欲しい。
「もっと、私に触れて!
私を強く抱き締めて!」
そう、私を愛して。
貴方は私の対なる君。
だから、貴方は私のモノ。
貴方が私と一つに結ばれるのは呪いの決めた……。
とくん。
とくん、とくん。
(今、私は何を考えていたの?
フランシス様にこうして触れられたいのは、対なる君だから、と……)
対なる君だからフランシス様に触れられたいの?
抱き締められ、口付けをされたいの?
(違う、私は……)
「クリスティアーナ……」
そっと、私の頬に触れる。
蠱惑的な瞳で私に微笑んで、私に触れる。
ねえ、フランシス様……。
今の貴方は対なる君の呪いで私に触れているの?
貴方の瞳に宿る熱は、私に恋焦がれての事なの?
「フランシスさ、ま」
対なる君の呪いが私の心を、思考を棘で囲おうとする。
対なる君の呪いが発動してフランシス様との交わりを求めている。
彼の方に私の全てに触れて欲しい。
彼が欲しい。
彼と一つになりたい。
でも、これが私が求めていた、フランシス様との愛では、ない……。
朦朧とする意識の中で私は、ふっと、幼い頃の出来事を思い出していた。
初めてフランシス様に会った時のトキメキ。
一瞬にて恋に落ちた。
初めての、恋。
対なる君の呪いでは、なく、クリスティアーナとしての恋。
例えフランシス様にとって、私との婚約が義務であったとしても私は……。
私は貴方に恋をしたの。
対なる君ではない、フランシス・シェイラーズ様に私は恋をしたの。
(ああ、クリストファー。
貴方の気持ちが、理解、出来る……)
対なる君ではないマリアンヌ嬢を愛した、と。
呪いでの恋ではない、真実、彼女に心惹かれ愛を抱いたと。
呪いで愛を抱くなんて、そんな不純な愛を認めない、と。
クリストファー。
私も貴方と同じ。
フランシス様に心ときめいて、愛を抱いて。
唯一、心を捧げる方だと私は思って。
(こ、こんな、呪いの所為で、私の想いを、穢すの?
私の恋心は、対なる君の、呪いが、全て、奪おうと、しているの?
フランシス様に対する愛が……)
対なる君の呪いの所為で……。
「い、いやっ!」
「クリスティアーナ……」
フランシス様の抱擁から逃れる様に、私はフランシス様の身体を退けていた。
ボロボロと涙が出た。
先程、フランシス様との再会を喜んでいた涙とは違う。
哀しみの涙。
今まで、ずっと、感じていなかった想い。
対なる君の呪いを本当の意味で知らなかった。
思考を蕩かせ相手の全てを求める。
自分の意思では無い、ううん、自分の奥底に隠された想いであるかもしれないけど。
でも、それは、呪いが関与するモノでは、無い……。
愛する人との愛を交わし、ひとつになりたい。
それは恋をすれば愛を抱けば、自ずと相手を求め、欲してしまう。
愛されたい。
相愛になりたい。
想いが重なり、互いが求める気持ちが一つになって、そして結ばれて。
私はそんな恋を、愛を、フランシス様に求めたの。
彼の方にそう、愛されたいと願って。
(フランシス様……)
フランシス様に抱擁され、口付けを交わして。
これが呪いが関与してなかったら、どんなに嬉しかっただろう……。
彼の方に一人の女性として愛されていたら。
「クリスティアーナ」
「フランシス様。
今、貴方の瞳に、私はどんな風に映っているの……」
ふわりと薔薇の香りが漂ってくる。
濃厚な薔薇の香り。
最初、私が感じたミルラとティーの薫りではなく、官能的な。
「……」
「ねえ、答えて……」
対なる君の呪いの薔薇が私の思考を妨げようとする。
薔薇の香りが強くなる。
フランシス様から漂う、ううん、違う。
これは私のアザから発動している薫り。
フランシス様はただ、私の呪いに反応しているだけ。
呼応して私を求めているに過ぎない。
一瞬、フランシス様の瞳が躊躇いが過った。
何かを語ろうとするフランシス様の身体に揺らぎが生じ、私の目の前から消えていく。
「フランシス様……」
身体から呪いの発光が収まっていく。
淡い光は消え去り、身体の力が抜けていく。
意識が遠のく間際に私は呟いていた。
フランシス様、貴方を、愛している、と……。
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