Machine& Mercenary

タクティカルおじさん

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『Machine& Mercenary』
地続きの世界で繰り広げられる大戦争。
巨大人型兵器が決戦兵器として存在するその戦場で、一人の人間として生き抜く最新のVRタイトル。
その世界観がまた素敵で、咽返るような戦場を練り歩く歩兵や陸戦兵器、そしてこのタイトルの顔とも言うべき人型機動兵器『メタルドール』
それらが一体となって戦場を駆け回る様は思わず脳が震えた。
戦場も自然地帯は当然として市街地での戦闘や廃墟となった都市、地下施設に地下都市、果てには衛星内部みたいな映像もあってそれはもう私の中の魂とも言える物が搔き立てられたものだ。

このゲームの面白い所はなんとHPやMPという概念は存在するが、それが部位ごとに分けられていて更に表示が無いのだ。
HPが多ければ耐えられる?防御力が高ければ装備が無くても攻撃を弾ける?
そんな事は無い。
生身で銃を撃たれれば死ぬし、HPなんて関係なく頭を撃たれれば死ぬ。
銃創も切創も放っとけば出血で気絶するし死亡する。
そんなシビアな、もといリアル寄りなゲームシステムをしているのだ。
流石に"死亡したらキャラデータロスト"という感じのものではないが、傷を受ければスタミナの減りが急激に早くなって息切れし易くなるとか、目を潰されたら視界の一部が無くなったりとバッドステータスの作り込みも尋常ではない。

戦争なんてしてしまっているが、正にもう一つの世界とも言うべきゲームになっている。
当然だが私は手に入れた。
セッティングも終わって後はログインするだけだ。
こんなロボゲー、知ってしまったら買うしかないじゃん。

私はフルダイブ機器であるメットを被り、両腕両足にスキャニングリングを装着して寝転がる。
スキャニングリングとの同調が完了し、メットのモニターに【Lady?】の表示が出た。
準備は完了。
後は起動コードを音声入力するだけ。
私はマイクが集音できるように出来るだけはっきりとコードを唱える。

「ダイブ」


電子の世界に飛ばされた私は真っ白な、地面も何もかもが真っ白な場所に転送された。
恰好は・・・・・・私の部屋着だ。
白いダボシャツに青いショートパンツ。
ショートの茶髪も相変わらず。
ちなみに染めてないよ。地毛だよ。

『"Machine& Mercenary"へようこそ。これより初期設定を行います』
『まずはプレイヤーネームを設定してください』

ピポッと電子音と共に空間投影型ディスプレイが現れる。
キーボードもそんな感じだ。
自分の名前から一文字取ってユキと入力して決定する。

『プレイヤー"ユキ"様、次は外観の設定をしてください』

自分の分身と思われる棒立ちのアバターが現れる。
他にも色んなパラメーターの付いたディスプレイも登場。
私は髪の部分をタッチしてカラーパレットを弄り、髪色を淡い青色に変更。
変に弄って感覚崩すよりこっちのが良いだろう。
それで決定。

『外観設定が終わりました』
『次は兵科を設定して下さい』

検索エンジンとリストかな。
あとこのゲーム、兵科なんて言ってるが要は職業選択である。
当然兵科もあるが、他にも生産職や娯楽系の職業だって存在する。
まぁ、私は兵科からだね。
機械化歩兵を選択して決定する。

機械化歩兵というのは別に改造人間ってわけじゃなくて、簡単に言えば戦車とかヘリとかに携わる兵科の事だ。
これにしないとパイロット系のツリーが解放されないという罠がある。
事前に調べてなかったら絶対突撃兵アサルト選んでたわ。

『プレイヤー"ユキ"様、以上で設定は完了です』
『引き続き"Machine& Mercenary"の世界をお楽しみ下さい』

その直後に転送されたのか、一気に視界が切り替わる。

いきなり放り出されたのはビルの立ち並ぶ都市。
それも――

「・・・・・・凄い。天井がある」

ジャンプして届くような距離ではないが、そこに空は無く幾層もの金属のブロックが合わさって出来た天井が広がっていた。
プレイヤーの初期リスポーン地点が巨大な地下都市とは恐れ入った。
いきなり世界観の違いを見せ付けられたねこりゃ。

私自身、他のVRゲームの経験が無いわけじゃない。
当然だが他のミリゲーもやったし、RPGも経験がある。
ただSF系のゲームはこいつが初めて触れるタイトルになるが・・・・・・圧倒されるな。
他のゲームだって絶景や大きな街ってのは存在する。
だがこれは規模が違い過ぎる。
こんな地下都市が一つの地方に過ぎないなんてなんの冗談だ。
こりゃ、何かしら移動手段を確保しないと移動だけで時間が掛かりそうだ。

さて、気を取り直して。
私の恰好だけど、どこにでもいそうなラフでボーイッシュな服装って感じ。
白いシャツにジーパンっぽい青いズボンだ。
そんで腕に付いてた腕時計っぽい端末が先程から音を鳴らして自己主張している。
見れば腕時計の左端に矢印が出ている。
チュートリアルかな?
多分他のNPCやプレイヤーには見えてないんだろうな。
よくよく周りを見れば、他のプレイヤーを思わしき人たちが腕時計を睨んでるのが分かった。
私もそろそろ動くか。

マーカーの指示通りにスイッチを押す。
すると腕時計の直上に投影型のモニターが表示される。
一部がさっきみたいに自己主張してるし、多分だがタッチスクリーンでもあるのだろう。
はえー、すっごい高性能。

『この腕時計"MTT"でプレイヤーのステータスや現在の持ち物、各種健康パラメーターを参照できます』
『マーカーの指示通り、スクリーンをタッチして下さい』

チョンと指で触れるとそこから更に展開され、自身のものと思われる人体図が表示された。

『この画面を使用する事で装備品の着脱、怪我の有無や健康状態の詳細な確認等々が可能になります』

指示が更新されたので"Back"に触れて"MAP"に切り替える。
すると大きめの画面で周辺地図が表示された。

『MAPをタッチする事で周辺の地形情報を確認可能です』
『指でスワイプする事で拡大し、更に詳細な地形情報を表示可能です』
『また検索機能を利用する事で所在地や目的地をマークする事も可能です』
『目的地に対してルートガイドを選択する事で目標地点までの道案内をしてくれます』
『現在登録されている地形情報は現在地周辺の"ラットホール領域"のみとなります』
『新たに地形情報を所得するにはその周辺地点の傭兵会社、もしくはシティーホールにあるRADにアクセスして情報を更新してください』

はいはい指示更新ね。
また同じように切り替えて今度は"Tree"のパネルに触れる。
すると別画面が開いて蜘蛛の巣のような無数の球体と糸が繋がった図面が現れた。

『こちらはスキル所得の為の樹形図になります』
『"SP"を消費する事で各種スキルを所得可能です』
『所得するには球体に一度触れる事で詳細を確認、もう一度触れる事でそのスキルを所得できます』
『SPは依頼を完了する事で報酬と共に所得されます』
『スタートボーナスとして10P、更にユキ様は予約特典として更に10P利用可能です』

お、ここで予約特典が来たか。
最初から持ってる状態なんだね、へぇ・・・・・・
あぁ、予約特典ってのはゲーマーならみんな知ってるよね。
私は特定店舗で予約して特典を頂きました。
SP+10ってスタートダッシュでかなり優位だと思うんだよね。

このゲームにはレベルが存在しない。
その代わり豊富なスキルで他のプレイヤーとの差異を付ける事が出来る。
スキルと言っても魔法とかみたいな特別な力とかそんなんじゃなくて、仕事とかしてると身に付く技術みたいなもんだ。
後は・・・・・・トレーニングによる成長とかそんなん。

他にもこの腕時計、フレンド同士の通信とか緊急任務の受信、受諾。
任務に必要な情報の所得とか色々な機能を備えてる模様。
多機能すぎる。

『――以上でチュートリアルを終了します。必要な場合は"Tiyps"で再度情報の確認が可能です』
『それでは良いセカンドライフを』

チュートリアルが終わったからか、画面が自動で全て閉じた。
頭で情報の整理をしつつ、一息ついてMAPを開く。
目的地を設定してガイド機能を使用する。
そして最後に所持品確認。
あっ、電子マネー入ってる。
ついでにメール。
メールを確認したら残りの特典が入ってた。
10万bisに残りの特典は初期ホームの収納に送られたという通達だ。
10万bisは電子マネーだからこの場で所得扱いのようだ。
お小遣いは素直に嬉しいなぁ。
ちなみにこのゲーム、全てのプレイヤーにホームが与えられるようだ。
あくまでこの世界の住人、という事を意識させるための仕様なんだとか。
こういうの好きだよ。

「さて、行きますか」

私は設定したガイドに従って歩き始める。
当然ながら目的地は――傭兵会社だ。


他の人は歩いてたみたいだけど私は定期バスで高速移動。
最初からお金が沢山あるのは良い事ね。
心に余裕ができる。
でもこのお金、装備品とか買い漁ったらあっという間に枯渇するんだろうなぁ……
MDなんて手に入れた日には維持費だけでどれだけ掛かるか。
お仕事頑張らないと。

そんなお仕事を貰える場所、傭兵をやるならこの傭兵会社で登録しないといけない。
見た目はリアルでありそうな軍事基地のでかい版だ。
多分だが、戦車や航空機以外にもMDという人型兵器があるからその分大きくなったんだろうな。
各所にMD運搬用らしきトレーラーが停車している。

先ずは手前に見える建物だ。
ここから後ろに施設があるから、ここで以来の受付や登録等々の事務的手続きが行えるのだろう。
見た感じは箱状だが、柱状のガラスだったりパネルラインだったりと近未来感出している。
構造としては幾つもの金属パネルを箱組してボルトで留めてるのかな?
すぐに組み立てできそうな構造だ。
多分、強度とかは見た目以上なんだろうけどね。
確かめる術は無い。

観察しながらも建物の中に入る。
自動のガラス戸なのに滅茶滅茶分厚い。
防弾仕様か。
扉の奥は二層になっていて、ワンクッション置いてもう一つ奥に扉があった。
寒い国とかだとよくこうなってるよね。
後は治安の悪い国の集合住宅とか。
そこを潜れば大きなロビーに到着。
病院みたいに沢山の長椅子が並べてあって、他にも自販機やテレビなんかも置いてある。
正面奥には受付と思われる場所にお姉さんが五人くらい立っている。

空いてるのは・・・・・・右端かな。
私は右端の背の高い金髪のお姉さんに声を掛ける。

「あの、すみません」
「"傭兵会社ドッグオーダーズ"へようこそ。どのようなご用件でしょうか?」
「傭兵登録したいんだけど」
「登録、ですか?それでは身分証を提示して下さい」

身分証?
そんな物貰ってないような・・・・・・と思ったらMTTが光ってるわ。
光ってる所をタップしたらなんか表示された。

「ありがとうございます。こちらで読み取りまずので少々お待ちください」

すると女性は手元にあると思われる端末を叩き出し、幾つものグラフィックモニターが表示されていく。
二十か三十秒くらいで操作が終わったのか此方に向き直った。

「確認しました。ユキさん、ようこそドッグオーダーズへ。先ずは試験を執り行いますので案内に従って会場へ向かってください」
「試験?」
「はい。傭兵となる前に試験を執り行い適正を見ます」

するといきなりポーンという音が鳴った。
少し驚いて左右を見渡すが、他の人はそんな音が鳴った事には気付いていないのか不思議そうな目をしている。

『それぞれの職業にはプレイヤーの為に試験という名目でチュートリアルがあります』
『これらで要求される項目をクリアし、職業ごとのアクションに慣れましょう』
『なおこれらのチュートリアルは自室のベッド上でMTTに追加される"チュートリアル"でいつでも確認可能です』
「なるほど、チュートリアル・・・・・・」

ならさくっと終わらせるかね。
MTTから出た矢印に従って歩いてくと外に出た。
矢印の先から銃声が聞こえてくる。
多分だが、あそこでやるんだろうな。

迷わずそこまで移動すると、角刈りの強面マッスルが扉の前に立っていた。
迷彩ズボンにオリーブドラブのタンクトップて、典型的な軍曹スタイルかい。

「お前が新しく入隊志願したって奴か・・・・・・女か」
「なに?悪い?」
「いや、使えるなら性別なんぞ知らん。とりあえず試験を一通り行うから付いてこい」

大男は特に気にする事も無く扉を開けて奥へと消える。
私もその後を追って入ると、中は広い射撃場になっていた。
男が一つのレーンに立って腕組んで待っている。

「最初は射撃適正を見る。そこに銃があるから全部使え」
「全部?」
「銃は物によって特性が違う。だから一通り撃って知ってもらうのが目的だ。とりあえずカテゴリー別に分けてある・・・・・・流石にカテゴリーごとに全部撃ってたら日が暮れるんでな、そこそこ普及してる奴だけだ」

男――教官って呼ぶか。
教官の近くのテーブルに幾つか銃が置いてある。
視界端にミッションの表示も出た・・・・・・って多いな。
この銃、ほんとに全部撃つのか。
でもロケット砲とかは無いんだね。

「ランチャーの類は屋外で行う。今はそんだけだ」

うん、まぁ順当な所だね。
バックブラストとか爆風とか破片とか地形被害が半端ないから仕方ない。
私は先ず手頃な物から手に取った。
アサルトライフル、私の知ってる米国主力ライフルことM4と世界に普及した銃ことAKを混ぜたようなデザインだ。
SR-47ってのに近いか?ただマガジンはバナナじゃなくて箱だ。
ケースサイズは5mm標準の大きさだけど、口径は7mmくらいありそうだ。
マグを外して中身を確認・・・・・・弾頭サイズは7だけどサイズが小さいというか短いな。
弾頭が見えないし所謂CT弾って奴か。だとすると約7mmってところね。
装填し直してハンドルを引き、銃床を肩に当てて脇を閉めしっかりとホールドする。
光学照準器の類は載ってないけどこのアイアンサイトは狙い易いから・・・・・・

トリガーを引くと少し聴き慣れない高めの銃声が鳴り響き薬莢が弾き出される。
反動は大きくない。
マズルジャンプが控えめでフラッシュは大きめ。
ただグルーピングはそこそこ。
セミなら外す事はそうそう無いだろう。
距離を開ければ推進力が無くなるのか少しバラけるが許容範囲内。
良さげな武器だね。

撃ち切ったのでセイフティを掛けて元の位置に置く。
次はショットガン。
でもこれ、マガジン式のセミオートショットガンだね。
とりあえず撃ってみれば予想通りと言ったところ。
中に入ってるのはスラッグ弾、グルーピングは流石の狩猟用ライフルか。
けど弾丸が大きく炸薬量も多いからジャンプがキツイ。

次はライフル。
これはボルトアクションだが口径でっか。
12.7mmか?
なのに海外で撃ったバレットより遥かに軽いな。
マガジン装填式で十発くらい。
マズルブレーキも細目でピストルグリップだから握り易い。
しかもバイポッドとトライポッドも付いてる。
狙撃時の安定性は格別だな。
流石にスコープが載ってるのでそれを覗きながら射撃開始。
音もデカいし反動もキツイ・・・・・・が、マズルフラッシュはマズルブレーキの形状のお陰で気にならないしジャンプも殆ど無い。
命中率もピカ一だ。

次は軽機関銃だがこれは特に言う事の無い性能だ。
簡単に言えば重い、いっぱい撃てる、ジャンプ軽め、グルーピングいまいちって感じかな。
私が握る事は無さそうだ。

マシンピストルは軽いし多弾数。
装弾数はM11などでお馴染みの細い棒型マガジンなのに、45口径で六十発だった。
レイルも付いてるしマズルアタッチメントも付けれそうだからマズルジャンプに関しては補えそうな感じ。
精度もそこそこ良かったしね。
装備候補に入るかもだ。

ハンドガンは余り変わり無さそう。
ただCT弾に代わってるからか弾数が多く、拳銃にしては精度も良かった感じだ。
口径は9mmだったけどね。

「お前、結構慣れてるのか?」

と一通り銃を撃ってたら教官に声掛けられた。
どうせNPCだし適当に答えとこ。

「まぁそれなりに」

これでも色んなFPSやらロボゲーやらのVR体験してきてるからね。
経験値で言えば完全な初心者よりはリードしてると思う。
そんなのこの教官は知らんからな。

とりあえず総じて撃ってみて思ったのは現代銃っぽい見た目ながら、現代では普及し切ってない技術盛り沢山で不思議な感覚だった。
これらの銃って多分初期武器っていうか、序盤で手に入り易い武器だと思うからまだ他にもあるんだろうね。
もしかしたらSF名物武器のレーザーライフルとかもあるかもだ。
だからここの銃だけじゃなんとも言えないってのが感想かな。

ちなみにこの後はハッキングの仕方(ツール当てたり配線弄ったり)。
ムービングテクニック(移動とか走り方、物陰に隠れたりとか)。
ラペリングのやり方とか色々通って五時間強掛かったぞ。
このゲーム一日で30分ってくらいの時間加速入ってるらしいからまだ良いが、これだけでダレる奴出てきそうだ。
まぁ傭兵やる上では大切な事なんだけどさ。
だが次の訓練は中々に面白そうだった。
次の訓練はなんと――ビークル類の操縦訓練だ。



**************************

追記
一部下書き段階の単語が混じっていたので修正
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