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第三章 クラス丸ごと異世界転生!? 追放された野獣が進む、復讐の道は怒りのデスロード!
3-220.クトリア議会議長、レイフィアス・ケラー(75)「なんなんすか君ら?」
しおりを挟むてんやわんや、である。
死語か! うん、死語だね。
とにかく、てんやわんやである。
ボバーシオからの報告は、確かにリカトリジオス軍の動向を知る上でかなり有用だった。けれども同時に、かなり危機感の持てる内容でもあり、正直な話、今は何とか持ちこたえてはいるものの、いずれはリカトリジオス軍により陥落させられるのは目に見えている。ならば、と、こちらから援軍を送れるかと言えばそれも無理で、防衛組織すらままならない現状じゃあ、とてもじゃないが援軍など夢のまた夢……というものだ。
正直に言う。“生ける石イアン”により王権の代理人とされ、これも何かの縁とクトリア共和国として建て直すことを決めたときには、まさかこんなにも早くにリカトリジオス軍との戦いになるとは思ってもいなかった。
甘かった。返す返すも甘かった。甘々のだるだるであった。
当たり前のこと言いますけどね、僕、戦争なんかしたくないんですよ! したくないんですよっ! ゲームや物語の戦争シーンがワクワクしたり楽しかったりするのは、そりゃあくまでゲームや物語の中の出来事だからです。マジ実際リアルガチに自分の住んでる場所や自分が関わってる国が戦争になるなんてことは、絶対的に回避したいのですよ!
なんですかあのユリウスとかいうやーつー!? 自分から率先して戦争おっぱじめようとしたり、覇権だの下克上だの……頭おっかしーんじゃねえの!? ゲームみたいな異世界に来たからつって、ゲーム感覚で戦争だヒャッハー! とか、ば~~~~っかじゃねぇの!? マジで、マジで!
───と、言うワケで、まずは何よりもティフツデイル王国との同盟。これを無事、なんとしても、締結しなければならないワケなのですよ、ええ、ええ。
とにかく今のこのクトリア共和国の最大の不安要素は、防衛戦力にある。
確かに、この貴族街を中心に守っている古代ドワーフのからくり人形式ゴーレム軍団は強い。恐らくは、正面からのぶつかり合いで言えば一体で帝国式の十人隊を蹴散らすことぐらいは容易い。巧くすれば百人隊すら半壊させらせるかもしれない。
けれども全体の総数としては、300体ほどしかないのだ。
つまり、単純計算では3000人ぐらいの兵力と換算出来る。
JBからの報告では、シーリオに常駐し、ボバーシオ攻めをしている部隊は約一万。奴隷兵も含めての数だそうだし、またその全軍がボバーシオ陥落後にクトリア攻めに転じるとは限らないが、三大ファミリーや、元“王の守護者”などを動員してもクトリア市街地の戦力はだいたい1000人いくかどうか。そこに東地区、ボーマ城塞、モロシタテムにグッドコーヴ諸々の勢力でまあ500、カーングンスが協力してくれればさらに騎兵500くらい……と、そこまで行ってもまだ足りない。
しかも、リカトリジオス軍がひとつの軍として徹底した練兵をしてきたのに対し、こちらはどうあっても寄せ集め。
数でも練度でも敵わない。
ボバーシオでの包囲戦は、もしかしたら対クトリアを想定した攻城戦の練兵かもしれない……と言うのは、JBとボーノによる推察。だけどもイベンダーも僕も、その話には確かにあり得る、と思わざるをえない。
元々リカトリジオス軍に不足しているのは基本的に三つ。
一つは騎兵。彼らには乗馬という文化が無い。
もう一つは弓兵。リカトリジオスに限らず、猿獣人などを除いた多くの獣人種は、人間種よりも弓の扱いが上手くない。
そして最後は城。犬獣人には城を築くという文化がないため、城での守りも、城への攻めも、彼らには経験があまりない。
しかし、帝国で奴隷兵とされた犬獣人部族の者たちは、そのときに帝国式の用兵のみならず、騎兵の威力や、弓による戦術、そして攻城戦、防衛戦の経験がある。
そしてそう言う、元帝国の奴隷兵だった部族の者たちが中心となって組織されたリカトリジオス軍は、それらの経験を元に、それまでに無かった犬獣人の軍を作り出し、発展させてきた。
その総仕上げとしての攻城戦の実施訓練……。
考えられなくはない話なんだよねぇ。
で、その対リカトリジオス軍を想定したクトリア防衛で重要なのは二点。
一つは、カロド河を渡河させない、と言うこと。もう一つが、やはり王国との同盟関係。
なんだかんだ言っても腐っても王国軍は、兵の練度が高い。
組織だったリカトリジオス軍に対抗する上で、やはり同じく組織だった練兵のされた王国軍の支援は必須。
なので、話は最初のところに戻る。
是が非でも王国との同盟関係を固持、強化しなければならないのだ……!
◇ ◆ ◇
「───では、これにてティフツデイル王国とクトリア共和国との新たな同盟の条約を更新した、という事で……」
あれ?
と、思わずそう口から出かねないくらいにあっさりと、同盟の締結、更新が終わった。
あれ? あれれ?
帝国復興主義で、対クトリア強硬派最右翼と思われていたレオン・クリオーネ氏ですらも一切の異議不満など挟まない、何の障害もないあっさりとした外交交渉。
あれれ~?
“妖術師の塔”へと戻ってからも、かなーりの時間ボケーッとしてしまっていたと思う。
「……なんで!?」
そのぼんやりタイムからあけての第一声。
いや本当に、なんで?
「はいはい、それでは状況の分析結果をお伝えしま~す」
そこへひょっこりはんしてきたのは、ケルアディード郷外交官見習いのデュアン。
「まず、恐らくは三つの要素が関係あります。
一つは、クトリア共和国とカーングンスとの関係。
カーングンス遊牧騎兵への畏怖心は旧帝国領の人々からはそうは抜けきっていませんから、カーングンス外交官アーロフがクトリア共和国に常駐する事になったことは、本国の強硬派にも警戒心を抱かせたでしょう」
むむむ、と。まあ言われてみればその通り。けど、多分それはそんなに大きな要素ではなかろう。
「次は、やはり我々もそうであったように、リカトリジオス軍の動きが予想よりも早いこと。ボバーシオが陥落間際との報告は、もはやクトリア征伐などしている場合ではない、との本国での融和派の主張を補強しました」
これも、確かにその通り。だが、これら二つの論点は、改めて考えてみれば取り立てて大きな新情報でもない。
「で、最後の一つなのですが……」
そう、ここだ。ここに、何かがある。
「ヴェーナ領、プント・アテジオ陥落、です」
「ふぇ? 何それ?」
えーと……、ヴェーナ領って、今、ガンボンとかJBが行ってるとこだよね? 何か分かんないけど、巻き込まれてたりしちゃってたりしない? すんげー不安!!
「プント・アテジオは、ヴェーナ領南岸部、マレイラ海に面する港湾都市ですが、シーエルフと揉めて以降、交易は殆ど出来て居ません。その代わり、現在は奴隷売買の拠点となっており、今回その奴隷たちの反乱があったようで」
う~む、それはまた……。いや、けどまあ……、いやいや……。
「……嫌な名前を耳にしたんだがな」
と、そこに横から割って入るのはエヴリンド。
「その、反乱奴隷の指揮を執っていた賊の連中、“闇エルフ団”なんぞと名乗っていたそうだが……」
「うぇ、何で?」
忌々しげに言うエヴリンドだが、その気持ちは分かる。いや、単に僕らダークエルフ的に不名誉と言うたけでなく、その名前は以前エヴリンドから聞かされた、かつて母ナナイが手助けした孤児達が、20年ほど後にその名を名乗り、また母の与えた魔導具、魔力の込められた装備や道具を使って、周りの村々を襲う凶悪な山賊団となっていた……と言う話と繋がるからだ。
「あぁ~、その話、どこで?」
デュアンがそう聞くと、エヴリンドは指だけをくいっと動かし、入り口を指し示す。
「よう、久し振り」
そこには旅の疲れもあまり見せずに立っているJBの姿。
「今の話の詳細、聞けるらしいぞ」
いつも通り……と言うにはちょっと険しすぎる、いつも以上の嫌そうな顔で、エヴリンドが言った。
◇ ◆ ◇
「うっそぉ~ん……?」
「いや、これがまたマジな話なんだよな」
本日二度目の「ぽかーん」である。
いやもう、なんなんすか、なんなんすか君? いや、なんなんすか君ら? JBだけじゃないよ、ガンボンもそう! いったい何がどうしてどうなって、仲間探しの旅が、一都市を陥落し占領する反乱軍に加わって手助けするって話になっちゃうの!? しかも、長らく地上と交流を絶っていたシーエルフ達と一時的とは言え協力関係を作ったり、それにそこに“災厄の美妃”の持ち手までいたりとか……どーゆー事!?
「ごめん、とりあえず頭が全く追いつかない」
「……ま、だよな」
自分自身、まるで絵空事を話しているかの顔でそう言うJB。
呆然とする僕よりもさらに食いついてるのは当然デュアンで、JBの長い話を聞きながらメモをしつつ、さらに細かい事を聞こうとしている。
「あ~、デュアン、悪いが細かいトコはちと後回しにしてもらってよ。……レイフ」
そこで、JBはやや気を引き締めたかの表情で向き直り、
「ちょっとばかし頼みてぇことがあるんだよな」
と言う。
「え~、何ですか?」
「まず、下に来て貰って、会ってもらいてぇ人が居るんだ」
ふむ? とは思いつつ、でもまあ、話の流れからすれば見当はつくかな。
執務室を4人で出て、魔導エレベーターで2階エントランスまで。
普段は読み解き会面子のお付きの人たちや、その他面談希望者の待機場所となっているが、今日は王国との外交交渉の日という事で読み解き会も面談もお休み。なので本来なら誰も居ないはずのその場所に、2人の南方人が待って居た。
「こっちの背の高い女がルチア。俺と同じ村の出身で、以前は“砂漠の咆哮”に所属していたが、知っての通りその後プント・アテジオに売られ、支配の術を使われて奴隷闘士となっていた」
すらりと背の高い、筋肉質な褐色肌の女性。上に日除けのトーガを纏ってはいるが、その下にはやや露出の多い黒革の鎧を着ている。
「ルチアだ。JBが世話になって居るらしいな」
素っ気ないくらいの簡単な挨拶。うむ、エヴリンドと気が合いそうだ。
「で、こっちはその奴隷闘技場の支配人をしていた奴隷頭、ポロ・ガロ。だが元々は俺たち南方人の部族に、加護の入れ墨を入れて回っていた呪術師の一員だ」
こちらは言葉もなく無言のまま、帝国流の右の心臓の上に手を当てて軽く頭を下げる挨拶。
「初めまして。私は闇の森ダークエルフ、ケルアディード郷のレイフィアス・ケラーです。今はクトリア共和国議会の議長を勤めてます」
同じく、帝国流での挨拶を返す。
紹介してもらったのは分かるのだけど、さてさて、何故JBは今ここでそれを? と、疑問に思っていると、
「で、な。
まあ、色々考えたし、話し合ったりもしたんだがよ」
と、JBがそう続けてくる。
「この二人、クトリア共和国の防衛軍に入れられないか?」
んん? んんんん?
いや、それは……アリか?
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