見捨てられ王女……兄の代わりに異国の地で花婿となる☆彡

高牧 まき

文字の大きさ
1 / 25

プロローグ 

しおりを挟む
自作品をベースに全く違う話を作ってみました☆

中盤以降は全く違う展開になる……はず!!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その日、私は宮廷の庭園のそのまた奥、ほとんど森、と言っていいくらいに宮殿から離れているその場所に小さく作った私専用の花壇の前で、一人紅茶を堪能していた。

 ほんとに小さい花壇だけど、私が手塩にかけた花々と、おいしい野菜も植え付けられている。

 もっとも植え付けた花はキレイなだけじゃなく、全部球根が食べられる品種だけどね。

 私がそこでそうやってのんびりしているのも、異常に食べ物へ執着しているのも、同じ理由からだった。

 私、こう見えてもこの国の王女だ。

 私の父は間違いなくブーデリアの国王ギルバートなのだから、一応、という言葉は、ちょっと不思議に感じるかもしれない。

 だけど精力絶倫の父ギルバートには、36人……間もなく37人になる予定……の子供がいる。

 私はちょうどその20番目の子供で、第8王女。

 母メリッサは第五夫人イリアンダの侍女で身分が低いうえに産褥で私が生まれてすぐに亡くなり、私はイリアンダの同情によるわずかな庇護をうけて、宮廷で息をひそめるように過ごしていた。

 だがイリアンダの庇護はとても気まぐれで、私は8歳になるまでは、満足な食事も与えられず、ただ静かに本を読み、庭園の花を見ることだけが楽しみの、少女だった。

 今考えても、正直餓死しなかったのが、自分でも不思議だ。

 当時私は驚くほどやせていて、宮廷の人たちからガリガリ王女と呼ばれていたからだ。

 そんな私の生活が一変したのは、イリアンダの息子で、私より2つ年上のガルディア兄さんとの出会いだった。

 ガルディア兄さんは美しい容貌と活発な性格で皆から愛される第3王子だったが、兄さんは壊滅的に頭が悪かった。

 そして貞操観念が著しく低く、よく我が国の貴族の娘と浮名を流していた。

 もちろんそんなガルディア兄さんと、私にはなんの接点もあろうはずもなく、ある朝王宮の回廊でばったり遭遇するまで、会ったことすらなかった。

 兄さんと初めて会った朝、私は母さんと親しかったというイリアンダの侍女、ギューリーの姿を探していた。

 ギューリーは私のことをとても気にかけていて、私が訪ねていくと必ず食べ物をくれた。

 毎日はとても無理だが、私はひもじくてどうしようもなくなった時は、ギューリーの姿を探したものだ。

 もしその頃の私が、庭園の花の中には食べられる品種があると知っていたならば、迷わず食べていただろう。

 だが当時の私にはそんな知識はなく、優しく恵んでくれる大人たちを順番に巡っては、食べ物をねだる毎日だった。

 優しいギューリーは私の姿を見ると、廊下の隅で待っていなさい、と部屋に戻った。

 今日は何の食べ物がもらえるのかな? 心躍らせながら待つ私の前に突然現れたのは、ガルディア兄さんだ。

「なんだ、このガリガリは!
 どこから湧いて出た?
 一体何処の者だ?」

 言い忘れていたが、兄さんはとても口が悪い。

 悪気があるわけではない。

 ちょっとばかり、本音を言いすぎてしまうだけだ。

「え? わ…私?
 アルメリアですが……?」

 私はそんな風にあけすけに尋ねられたことがなく、とにかく驚いてそう言った。

 皆、面倒ごとにはかかわりを持ちたがらない。

 私の姿を見ても、大抵の人たちは、あのガリガリ王女……という視線を送ってくるばかりだ。

「アルメリア?
 ああ、お前か?
 母上が気まぐれで面倒見てる子は!」

「もしかして………ガルディア兄さん?」

 私は初めて見る兄にすっかり興奮してそう尋ねた。

 美少女に間違られるほど美しいって噂は、決して過剰な噂ではなかった。

 自分の腹違いの兄さんとは思えないほど美しい少年だ。

「兄さんって呼んでいいと、いったい誰が許可をした?
 生意気な奴だな!
 ところでお前、ここで何してるんだ?」

 まさか食べ物を恵んでもらうために待っていたとも言えず、私は口ごもった。

「あ……何も……」

「え?
 お前、何もしなくていいの?
 いいな!
 俺なんか、毎日勉強ばかりで退屈してるっていうのに!」

 ガルディア兄さんは心底羨ましそうにそう言った。

 何もしなくていいのは正しいけど、その代わり年中飢え飢え状態なんですけど……。

 と、言えたらいいのだが、怖がりで気が弱い私に言えるはずもない。

「今日なんか、覚えられるはずもない年表を覚えさせられて……。
 だいたい、コッタンの戦いと、クッタンの戦いがいつだなんて、答えられるか?」

「太陽白歴204年と、太陽黒歴383年ですけど……」

「そうだよな! 答えられるはずが……え?
 お前、何で知ってるの?」

「私、本読むの、好き、だから……」

「じゃあ、メンドクセエナの改革は?」

 面倒くせえなの改革って……。

 面倒くさい改革ならしなきゃいいじゃん、と突っ込みたくなる。

 違う意味で凄い記憶力だな…と、私は感嘆して兄さんを見た。

「……メンドラクッセの改革ですよね?
 太陽白歴28年、メンドラクッセが提唱した農業改革で、我が国の農産物は飛躍的な発展を遂げた……」

 私がそう答えた瞬間、ガルディア兄さんは私の腕をガッシと掴んだ。

 そうして私は、兄さんのお陰で飢餓状態から脱出することが出来た。

 そう……私は、兄さんの学習面での影武者になったのだ。

 もちろん最初は、机の下に隠れて正解を教える………という役目だったのだが、ガルディア兄さんから十分な食事を与えられるようになると、私はすくすくと成長し、そして自分でも驚くべきほど兄さんにそっくりに育ち……………もしかしたらそれは私の生存をかけた進化だったのかもしれない…………とにかく私は文字通り兄さんの影武者となり、兄さんの代わりに授業を受け、兄さんの代わりに王子修業に勤しんだ。

 笑える話だが、宮廷の教師たちによると私はどこに出してもおかしくない気品ある紳士だそうだ。

 私の王子修業は兄さんが成人を迎える16歳までの6年間、休みなく毎日続けられた。

 修業が終わると、時折外国語の喋れない兄さんの身代わりを務めることはあったものの、基本的には十分な食事を与えられながらほとんど自由で、私は毎日大好きな読書をして過ごすという、つつましくも日陰の生活を送っていた。

 そんな私のもとに、兄さんの縁談の話が聞かされたのは、つい3か月前のことだ。

 隣国のベリアモルゼの女王に嫁ぐという。

 ベリアモルゼの女王って、たしか56歳……しかも少女趣味って噂の……。

 兄さんの影武者と読書しかしていない生活のせいで、私は男女の恋愛事情などなどの性的な分野の知識がまるで欠落している。

 少女趣味、という言葉の意味が良く分からなかったものの、兄さんに直接聞くのもはばかられ、私はガルディア兄さんの侍女のレンタールにその意味を聞いた。

 レンタールは私と兄さんの秘密を知る唯一の侍女である。

「殿下……。
 少女趣味というのはですね……。
 うら若き少女、そう、言うならばぷりっぷりのお肌にまん丸お目目めめ可愛らしい少女の!」

「少女の?」

「そう! その少女の体を!」

「体を?」

「思うさま舐め尽し!」

「なな、なめっ? からだをっ……!!!!!」

「こともあろうに太くて!」

「!!!!!!」

なが~~~~い棒を!」

「!!!!!!!」

「穴という穴に!!」

「あ、穴?」

「これでもかとぶっ刺しまくる、趣味にゴザイマス」

 な、な……んて恐ろしい趣味なんだ!!!!!

 私は恐ろしさのあまり、顔面蒼白、涙目になってレンタールに訴えた。

「そそそそそ……そんなこっわいおばさんのところにお婿に行って、ガルディア兄さん、大丈夫なの???」

「殿下、大丈夫でございます。
 少女、趣味でございますから」

「え?
 兄さんは少女じゃないよ?」

「左様にゴザイマス」

「あくまでも、少女……。
 ガルディア殿下がいくら女性のような柔和な顔立ちで、可愛らしいと言っても、あくまで男性……。
 余計なものが体についておりますからね。ほほ……安心でございます」

 余計なものって何だろうと思ったけど、私は兄さんがとりあえずは大丈夫なのだと安心して、ため息をついた。

 それにしても、兄さん、王子修業おこたってたから全然ベリアモルゼ語喋れないけど大丈夫かな?

 あ、それより、ガルディア兄さんがいなくなったら、私にご飯をくれる人がいなくなる!

 ほんと、人の心配より、自分の心配だよね。

 そうだな……とりあえず今ある畑を拡張して、食べられるものをもっと栽培しておこう!

 目指せ自給自足!!

 私は聞いただけでも恐ろしい隣国ベリアモルゼと、先行き不安な将来におびえながら、自室に下がった。

 それからあっと言う間に3か月たち、明日はとうとうガルディア兄さんがベリアモルゼに出立する日だ。

 兄さんの影武者を務めるのは大変だったけど、これでおいしいご飯が食べられるのもの最後なのかと寂しくもある。

 私はぼんやりとため息をつきながら、自作の紅茶を堪能していた。

 私は3か月という準備期間を無駄にはしなかった。

 宮廷中の植物を調べ、食べられるものは栽培方法を記録し、季節が適合するものに関しては実際に栽培に着手した。

 それから野草の知識をとその料理法、はたまた動物を罠に仕掛ける方法やそのさばき方までサバイバル情報を豊富にし、もし万が一宮廷を追い出されても大丈夫な知識と技術を手に入れていたのだ。

 取りあえず、一人で何とか食べていけるよね?

 今まで、ガルディア兄さん、本当にありがとう!

 私はそれから何が起こるのかも知らず、ガルディア兄さんの健康と幸福を願って青空を見上げていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

戸を開いたその先に。~捨てられ縫い姫は、貧乏進士(実は皇帝)に溺愛される~

若松だんご
恋愛
――すまない! 少し休ませてもらえないか! 今日は、門の前で訪れる男性を待つ日。「婿取りの儀式」 門を開け、招き入れた男性を夫とする。 そんなしきたりに従って、家の裏門で訪れる予定もない相手を待っていたのだけれど。 ――すまない。連れの具合が良くないんだ。 やや強引に、ぐったりした連れの少年を抱えて入ってきた青年。 十のときに母が亡くなり、父が連れてきた義母と異母姉。 実の娘なのに、屋敷の隅に追いやられ、もっぱら縫い物ばかりさせられていた。 その上、幼い頃からの許嫁だった人からも婚約破棄され、彼は異母姉の夫となった。 「こんな男を夫にするのか!」 彼らに出会ったことで、父親から勘当されたリファ。 そんな彼女を助けてくれたのは、今日が婿取りの儀式だと知らず飛び込んできた青年。 ――身の振り方が決まるまで。 妻にする気はない。自由にして構わない。 セイランと名乗った青年は、頼る先のないリファに、とりあえずの暮らすところを提供してくれた。 地方から省試を受けるため上京してきたというセイラン。彼の従者で、弟みたいな少年、ハクエイ。 彼らと暮らしながら、少しずつ自立のために縫い物仕事を引き受けたり、彼らのために家事に勤しんだり。 家族に捨てられ、婚約者からも見捨てられ。 悲しみに、絶望しかけていたリファは、彼らと暮らすことで、少しずつその心を癒やしていくけれど。 ――自立。 いつかは、彼らと別れて一人で暮らしていかなくては。いつまでも厚情に甘えてばかりいられない。 そう思うのに。 ずっとここで暮らしていたい。ハクエイと、……セイランさんといっしょに。 ――彼女の境遇に同情しただけ。助けたのは、ちょっとした義侠心。 自分の運命に、誰かを巻き込みたくない。誰かを愛するなんてことはしない。 そう思うのに。 ずっとここで暮らしていたい。ただの進士として、……彼女といっしょに。 リファとセイラン。 互いに知らず惹かれ合う。相手を知れば知るほど、その想いは深まって――。 門を開けたことで、門をくぐったことで始まる、二人の恋の物語。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...