見捨てられ王女……兄の代わりに異国の地で花婿となる☆彡

高牧 まき

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女王ドリモアの謁見

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「うん、まぁぁぁ!!
 どうしたことです、アルメリア様!!」

 女王と謁見のため、正装に着替えようと服を脱いだ私に、レンタールは大きな声を上げた。

「え?
 どしたの?
 レンタール?」

「どうしたの、ではございません。
 アルメリア様!!」

 レンタールは急に、私の胸元に手を伸ばし、きゅっ、とそのふくらみを握りしめた。

「はぅ!
 レンタール!!
 い、たいー!!!」

「痛がっている場合ではございませんよ、アルメリア様!!

 先日お着替えをさせていただいた時は伏せておられましたので、まさかこれほどお育ちとは気づきませんでしたが……!!

 ……お胸が育ちすぎです!!

 どうしてこのような、たわわに実った果実のようなお胸になってしまわれたのですか?」

「ふにゃ……レンタールぅ!!
 やめて!! 
 揉まないで?」

 確かにこの一年というもの、兄様の影武者も減り、安心しきった結果、ささやかだった胸部が自己主張を始めていた。

 それにこの三か月は食事を自分で確保するために何かと身体を動かすことが多かったから、ウエストもだいぶんくびれてきて……余計にバストが目立ってしまっている。

 少しずつ大人の女性の体に近づいていることがうれしくもあったのだけど、まさか今更兄さんの影武者をするなんて思わなかったから、不可抗力だと思う。

「そうは申しましても、きちんと大きさが測れませんと、変装も難しゅうございますし」

 レンタールはそう言いながら、二つのふくらみを両手で持ち上げた。

 私は生まれて初めて感じるふわふわした感覚を覚えて、「くぬふ……」と、涙目になって吐息を漏らした。

 レンタールはしばらくそうして私の胸の感触を堪能していたけれど、しばらくすると飽きたのか、ようやくさらしを胸に巻くのを手伝ってくれた。

「ふ……!!
 レンタール!!
 きつ……い!!」

 さらしがきつくて呼吸が浅くなり、私は思わず不満の声を上げた。

「ふふ……エロ……」

「え? なんか、言った? レンタール」

「いいえ。
 気合を入れていただけにございます。
 ……もう少し、ご辛抱なさいませ、アルメリア様。
 これではダンスを踊られる時にも、剣の腕を披露なられる時にも、豊満なお胸が揺れてしまい、邪魔になってしまいますからね!」

「ふわう!!
 くるしー!!
 レンタール!!」

 もう限界と思っていたところから、さらに締め付けられ、私は思わず声を上げた。

「本当にどうしてたった一年でこのように。
 ……もしかしていずれかの殿方に弄ばれ??
 あ、トム??
 庭師のトムですか???」

「トムが、そんなことするわけ……!!
 ふぁ……ん!!
 レンタール!!
 苦しいっ!!」

 レンタールはしゃべっていて興奮してきたのか、無意識にきゅむきゅむと思いっきり締め付けるようにさらしを巻いた。

 それが息もできないくらい苦しい。

「ふわん……ぐす……レンタール!!
 痛くしないで……??」

「あら! まぁ、うふふふ。
 可愛らしいですわ、殿下。
 でもしっかり巻かなくては。
 ……バレタラ、少女趣味、ですわよ??」

 そういうと、レンタールはもう一度きゅむ、と、さらしを巻いた。






 レンタールによって支度された私の姿は、どこをどう見てもカルディア兄様である(太る前の)。

 身長だけはシークレットブーツによって5センチほどかさ上げされているものの、それ以外はかんっぺきに兄様である。

 レンタールに言わせると、『アルメリア様の方が唇がぽてっとしてて、いやら……こほん、いえ、可愛らしい』そうなのだけど、はっきり言って鏡に立つ自分から見てもカルディア兄様そのもので、唇云々の違いは分からない。

 レンタールが薄く化粧してくれているせいかもしれないけど。

 もともとブーデリアの貴族は男性であっても化粧する習慣があるから、もし化粧がバレてしまっても問題はないのだ。

 ここベリアモルゼの男性に化粧の習慣はないようだけど。

 そんな感じで完璧に仕上がった私は、初めて会う兄さんの妻となる、ドリモア女王に会うべく謁見への間へと向かった。

 さすがにベリアモルゼ、ブーデリアの王宮とは比べ物にならないくらいに大きく広い。

 謁見の間も、思わず見上げたくなる(けどできない)ほど天井が高く、様々な装飾が施されていた。

 すごいなー。

 柱一つとってもブーデリアの百倍くらい緻密な意匠が施されてる!

 作るのに相当お金かかっただろうなー。

 あ、あっちは金箔が施されてる! あれだけで一年分くらいのパンが買えるんじゃない??

 私はきょろきょろしないよう努めながらも、初めて見る異国の王宮の内装に興味津々で、視界の端にうつるそれらを見ていると気付かれないように注意しながら眺めていた。

「ガルディアと申したな」

 玉座と思しき朱色の大きな椅子に腰かけた女性に声をかけられ、私ははっとして、その人に注意を向けた。

 ぼんやりしている間に、侍従の説明が終わっていたらしい。

「は……はい」

 ドリモア女王は、非常にやせ細っているのに目はギラギラと何かに枯渇しているように輝いていて、想像以上に怖かった。

 噂にたがわぬ趣味らしく、周囲には容姿が整った美しい少女たちが立ち並んでいた。

「噂には聞いておったが、なるほど美形じゃ」

「……おほめ頂き、光栄にございます」

 喉はカラカラなのに、冷や汗が首筋を伝う。

「まこと、男とは、残念じゃ……」

 ため息と共に、ドリモア女王の声が落ちた。

 よよよよ、よかった!!

 兄様のかっこで!!!

「しかしこれほど美形なら傍においても……」

 !!!

 ううううう、嘘!!

 やだ!!

 無理ーーーーーー!!!

 死んじゃう!!

 絶対死んじゃうから!!!

 息苦しさも相まってショックでクラクラと頭が揺れた。

「まぁ陛下、ブーデリアのガルディア王子と言えば、女性のような優しい面立ちで、数々の女性を泣かせてきた女ったらしで有名な方ではありませんか!!
 そんな方が、我々と一緒に後宮にいらっしゃるのですか?
 エリザベスは、そんな方と、ご一緒したくはありません!!」

 女王に一番近い場所に陣取る、とりわけ天使のように美しい少女が声を上げた。

 思わず、そうです、その通りです、と同意しそうになったけれど、少女の毛虫を見るような冷たい視線を感じて動きを止めた。

「ふむ……べスが言うなら仕方あるまいの……。
 もとより形だけの夫。
 それにしてもさほどに女好きなら、わらわの『輝き隊』も危険であろう。
 仕方あるまい。
 そなたには、黒宮に入ってもらうこととする」

 輝き隊???

 黒宮……???

 聞きなれない言葉が多くて意味が分からないけど、とりあえず後宮入りは免れたみたい。

 よ、良かったーーーー!!!
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