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捕らえられたアルメリア
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遅くなりました&とりあえずあげときますが、多分ちょっと加筆します。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……お腹すいた……!!!
……リリアひどい……!!!!」
アルメリアはほろほろと涙をこぼしながら、一人王宮の豪華な部屋に連れてこられた。
危険の到来と同時にあっさりとアルメリアを差し出したリリアのことを考えると腹立たしいが、それでもリリアと引き離され、一人にされると不安で寂しくもあった。
「ふぐぅ……リリア……ほんとに、助けを呼んでくれるのかなぁ……」
給仕してくれる者もおらず、ハンカチすら手元にないアルメリアは、大きな寝台のシーツに顔を押し当て、涙とちょっぴり鼻水を拭いた。
お腹がぺったんこになりそうなくらい空腹だった。
このところ飽食状態にあったせいで、以前なら2、3日の絶食位ではびくともしなかったお腹が、今はたった1日にの絶食できゅるるるるるると、食べ物をよこせと盛んに主張している。
枕もとにはよくわからない油の瓶や、なんだか亀のようなそれでいて長細い変な形をしているグッズなどは置いてあるのに、肝心な食べ物が何一つなかった。
子供の頃はよく効いた、シーツの端をちゅぱちゅぱ舐めて空腹をやり過ごすという技も繰り出してみたが、お腹の音は鳴り止もうとはしなかった。
「ふわぁ……もぅダメ……」
しかしアルメリアが空腹のあまり気を失いかけたその時、不意に部屋の奥の壁が小さい音を立てながら、かぱりと開いた。
今から三百年前に流行った草木を意匠化した壁の装飾は、傍目からはただの壁にしか見えなかったのだが、そこには隠し扉が備え付けられていたのだ。
まさかこんなところに扉があったなんて……空腹も忘れて開いたばかりの扉に目を見開いたアルメリアは、その奥から姿を現した人物に、驚きの声を上げた。
「えぇ……!!
なんでっ??
ユーノス……!!!!!」
カルディアの護衛騎士、ユーノスの懐かしい顔を見てほっと安堵の息を漏らしたアルメリアだった。
でも、どうしてここにユーノスが?
リリアが助けを呼んでくれたのかな。
うん。
きっとそうだ。
そうでなければユーノスがここに来るはずがない。
残念ながら事実はそうではなかったが、アルメリアはそう勘違いした。
だから敢えて、ユーノスにそのことを尋ねたりはしなかった。
その勘違いのせいで、リリアは完全に忘れられてしまうのだが、それは今は置いておこう。
一方ユーノスはというと……彼は非常に、混乱していた。
昨夜遅く、カルディアはユーノスにある仕事を命じた。
今から妹姫で、「ザグリスのベーレン王子の婚約者であるアルメリア」が、ザグリスから浚われて来る。
その「アルメリア」を救出してくるように、と。
しかもカルディアは、秘密通路の存在まで明かし、そのおかげでユーノスはやすやすと王宮へと忍び込むことが出来たのだ。
王宮の隠し扉の存在をどうしてカルディアが知りえたのか、ユーノスは知らない。
だがここベリアモルゼでのカルディアを見ていると、自国にいた時とは違うカルディアの姿がそこにはあった。
確かに表面上は、何も変わっていない。
気ままに出歩いて、恐らくは様々な人と密会を重ねている。
明らかに体の関係があると察せられる人物も多かった。
しかしそれ相手が、一定の法則を持っていることに、ユーノスは気づいていた。
ここベリアモルゼに来た当初は、ドリモア女王の近くにいる女たち。
しかし最近は、ドリモア女王によって失脚させられた貴族や、兵士などが多かった。
そして近頃ベリアモルゼのあちこちで小さな暴動の噂を頻発に耳にするようになってきた。
それが偶然だろうか?
飄々としてその真意が見えないカルディアだが、ユーノスは、最近はっきりと感じていることがある。
カルディア様は、私に故意に、真の姿を隠している、のだと。
「何故」、などと思うのはおこがましいだろうか?
一介の護衛騎士にしか過ぎない自分が、不満に思うなんて、してはいけないことだと思う。
しかし、何故? と考えてしまう。
そして、もう一つ気がかりがあった。
ひょっとして、私が焦がれてやまない「あのカルディア様」も、偽りの姿の一つに過ぎないのではないかという危惧。
しかし、カルディアの命のままにアルメリアの救出に単身向かったユーノスは、その部屋で待つ『アルメリア』の姿を一目見たとたん、解けないパズルの答えを知った。
しかし今更分かったところで、どうしようもない。
アルメリア様は、「ザグリスのベーレン王子の婚約者であるアルメリア」様、なのだから。
わずかな時間で様々な感情がユーノスの心を吹き荒れた。
不思議なものだがユーノスは胸の痛みを感じると同時に笑みを浮かべた。
すると。
「ユーノスゥゥゥ!!!
うわぁぁぁぁ。
よかったぁぁぁぁ。
すっごく、怖かったからぁぁぁぁぁ!!!!!」
自分がいま、本来のアルメリアの姿なことなど、すっかり忘れたアルメリアは、ユーノスが前と同じにやさしい笑みをこぼしたのを目にした瞬間、ユーノスに泣きながら抱きついた。
ユーノスは戸惑いながらもアルメリアの体をきゅっ……と、抱きしめるのだった。
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「……お腹すいた……!!!
……リリアひどい……!!!!」
アルメリアはほろほろと涙をこぼしながら、一人王宮の豪華な部屋に連れてこられた。
危険の到来と同時にあっさりとアルメリアを差し出したリリアのことを考えると腹立たしいが、それでもリリアと引き離され、一人にされると不安で寂しくもあった。
「ふぐぅ……リリア……ほんとに、助けを呼んでくれるのかなぁ……」
給仕してくれる者もおらず、ハンカチすら手元にないアルメリアは、大きな寝台のシーツに顔を押し当て、涙とちょっぴり鼻水を拭いた。
お腹がぺったんこになりそうなくらい空腹だった。
このところ飽食状態にあったせいで、以前なら2、3日の絶食位ではびくともしなかったお腹が、今はたった1日にの絶食できゅるるるるるると、食べ物をよこせと盛んに主張している。
枕もとにはよくわからない油の瓶や、なんだか亀のようなそれでいて長細い変な形をしているグッズなどは置いてあるのに、肝心な食べ物が何一つなかった。
子供の頃はよく効いた、シーツの端をちゅぱちゅぱ舐めて空腹をやり過ごすという技も繰り出してみたが、お腹の音は鳴り止もうとはしなかった。
「ふわぁ……もぅダメ……」
しかしアルメリアが空腹のあまり気を失いかけたその時、不意に部屋の奥の壁が小さい音を立てながら、かぱりと開いた。
今から三百年前に流行った草木を意匠化した壁の装飾は、傍目からはただの壁にしか見えなかったのだが、そこには隠し扉が備え付けられていたのだ。
まさかこんなところに扉があったなんて……空腹も忘れて開いたばかりの扉に目を見開いたアルメリアは、その奥から姿を現した人物に、驚きの声を上げた。
「えぇ……!!
なんでっ??
ユーノス……!!!!!」
カルディアの護衛騎士、ユーノスの懐かしい顔を見てほっと安堵の息を漏らしたアルメリアだった。
でも、どうしてここにユーノスが?
リリアが助けを呼んでくれたのかな。
うん。
きっとそうだ。
そうでなければユーノスがここに来るはずがない。
残念ながら事実はそうではなかったが、アルメリアはそう勘違いした。
だから敢えて、ユーノスにそのことを尋ねたりはしなかった。
その勘違いのせいで、リリアは完全に忘れられてしまうのだが、それは今は置いておこう。
一方ユーノスはというと……彼は非常に、混乱していた。
昨夜遅く、カルディアはユーノスにある仕事を命じた。
今から妹姫で、「ザグリスのベーレン王子の婚約者であるアルメリア」が、ザグリスから浚われて来る。
その「アルメリア」を救出してくるように、と。
しかもカルディアは、秘密通路の存在まで明かし、そのおかげでユーノスはやすやすと王宮へと忍び込むことが出来たのだ。
王宮の隠し扉の存在をどうしてカルディアが知りえたのか、ユーノスは知らない。
だがここベリアモルゼでのカルディアを見ていると、自国にいた時とは違うカルディアの姿がそこにはあった。
確かに表面上は、何も変わっていない。
気ままに出歩いて、恐らくは様々な人と密会を重ねている。
明らかに体の関係があると察せられる人物も多かった。
しかしそれ相手が、一定の法則を持っていることに、ユーノスは気づいていた。
ここベリアモルゼに来た当初は、ドリモア女王の近くにいる女たち。
しかし最近は、ドリモア女王によって失脚させられた貴族や、兵士などが多かった。
そして近頃ベリアモルゼのあちこちで小さな暴動の噂を頻発に耳にするようになってきた。
それが偶然だろうか?
飄々としてその真意が見えないカルディアだが、ユーノスは、最近はっきりと感じていることがある。
カルディア様は、私に故意に、真の姿を隠している、のだと。
「何故」、などと思うのはおこがましいだろうか?
一介の護衛騎士にしか過ぎない自分が、不満に思うなんて、してはいけないことだと思う。
しかし、何故? と考えてしまう。
そして、もう一つ気がかりがあった。
ひょっとして、私が焦がれてやまない「あのカルディア様」も、偽りの姿の一つに過ぎないのではないかという危惧。
しかし、カルディアの命のままにアルメリアの救出に単身向かったユーノスは、その部屋で待つ『アルメリア』の姿を一目見たとたん、解けないパズルの答えを知った。
しかし今更分かったところで、どうしようもない。
アルメリア様は、「ザグリスのベーレン王子の婚約者であるアルメリア」様、なのだから。
わずかな時間で様々な感情がユーノスの心を吹き荒れた。
不思議なものだがユーノスは胸の痛みを感じると同時に笑みを浮かべた。
すると。
「ユーノスゥゥゥ!!!
うわぁぁぁぁ。
よかったぁぁぁぁ。
すっごく、怖かったからぁぁぁぁぁ!!!!!」
自分がいま、本来のアルメリアの姿なことなど、すっかり忘れたアルメリアは、ユーノスが前と同じにやさしい笑みをこぼしたのを目にした瞬間、ユーノスに泣きながら抱きついた。
ユーノスは戸惑いながらもアルメリアの体をきゅっ……と、抱きしめるのだった。
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