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2023年11月

11月15日

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朝起きると妻が朝食を用意していた。
双子のために柔らかいものを用意したようだった。
次男は起きていたので、食べさせようとしたが食欲はないようだ。
薬のシロップはなんとか飲んでくれた。

長男を幼稚園に送って出社し、社員たちに迷惑かけたと言うとお互い様だと気遣ってくれた。
事務の早瀬さんに長男の方が熱が低いのにぐったりして元気がないと相談すると「ある程度になるまでは女の子の方が丈夫だから、体力がついてくるのを待つしかない」と返され、初めて知る情報に驚いた。
その後の「まぁ、うちの旦那は私よりも熱低いのに重病のように振る舞うけどね」のひと言によく聞く話だと笑った。
仕事は定時で終え買い物して帰るつもりだと言うと、帰り際に必要そうな物のリストを渡される。
奥さん用と書かれたメモにはプリンやインスタントのスープなど手軽に食べれるものが書かれていた。
双子の物に気を取られていたので妻の事にまで気が回らなかったのでありがたかった。

スーパーで必要なものを集め妻に他に必要なものがないか電話をし買い物を終えた。
レジはこないだの女性の店員ではなく若い男だった。
俺の前に並んでいたのは70代と思われる女性だったが、カゴをカートに戻すのに手間取っていたので手伝った。

家に帰ると長女が次男の面倒を見ていた。
ご飯は炊けていたので買ってきた肉を焼き、温めるだけの魚を温め長男の皿にあけテーブルに出した。
長男は肉を一切れ口に入れたが、噛むのに疲れたのか自分の手に出し「はい」っと元気に渡してきた。
食事を終え妻に声をかけると、双子には少し早いが起きてるうちにご飯と薬を与えたとのことだった。
食事中の妻に食器や鍋を洗いながら、レジの店員が若い男だったこと、昔は若い男の店員を見たことがなかったなどと話した。
妻は彼のことをカゴ運んだり手伝ったりしてくれない気の利かない店員だと不満に思っているようだった。
彼を庇うつもりはないが、それは仕事内容に含まれていないなら当然だと反論すると大変な人に対しての思いやりがないと言われた。
その後はその思いやりが必要ならばスーパーで働く人の賃金はいくらが適切なのかと話しをした。
生活のために嫌々ながら仕事をしているのならば金では思いやりは発生しないと落ち着いた。
前に外国で金庫の警備員がそこまでの給料は貰っていないからと泥棒に入られた事を思い出した。
彼にとっては現在の給料はレジ打ちだけの分しか貰っていないということなのだろう。

それに比べ妻が家族のために家事や子育てをしても給料は発生しないと思うと、妻に感謝の気持ちが湧き上がる。
病気の子供の面倒を24時間みるのは時給にするとそこそこ高いのではないかと。
元気なときでも大変だろう。

きっとアイツの子供もアイツと妻から無償の思いやりや愛情を受けていたのだろう。
アイツの妻がアイツにも向けていた笑顏が忘れられない。
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